プロローグ
「だからってさー。そんなに怒ることなくない?」
「いや、そりゃ怒られるでしょ?」
「えーなんでー?」
「だってただのオムライスかと思って食べたら、激辛のタバスコライスだったってことでしょ?私でもブチギレ案件だと思いますけど……」
「サプライズのつもりだったのにー」
「タチの悪いサプライズだな‼︎」
私の友達である、朝比奈樹里との会話が弾む。樹里と何気ないことを話して過ごすのが、私の日常になっている。
そんないつも通りの時間を過ごしていると、玄関の方からガチャっと鍵が開く音がした
「あ、旦那さん帰ってきたんじゃないですか?」
「うむ。確かに鍵の音がしましたなぁ……」
私は玄関の前まで行き、夫を出迎えた
「おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・も……掃除?」
「あのー李華さん?あの有名なセリフは、掃除じゃなくて私?って言ってるんですよ?」
「そうなの?何でそんなおかしいこと言ってるんだろう?と思ってたけど、そういうことね」
「普通考えれば分かるでしょうよ……」
私と樹里の漫才的会話を聞かされて尚、私の夫は無反応だった
「それでは改めて……ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・も……わ・た・し?」
ドラマで見たように、夫はしどろもどろになりながら返答してくれるのかと思いきや、私のことをスルーしてリビングへと入っていった
「……無視された」
「もう諦めましょうって。聞こえるわけないんですから」
夫は夫婦仲の亀裂によって私の言葉を無視したわけじゃない。本当に聞こえていないし、見えてもいない
夫の聴力と視力に問題はない。ただ単に……
私と樹里が幽霊なせいだ