なんで?
あれから、スマホである俺はトリさんと何度か話して思ったこと。
早急にスキル解放が必須であると思った。
早く、藤原さんの助けとなれるよう、頑張ろっとw
ふふふ・・・。
冴え渡っているこの俺のスキルw
藤原さんのドジが予測可能となったのである、が、役に立ててわ、いない(悲)
あいにくなのだが、スキルが乏しい。
俺に出来る事は物を運ぶくらいのものだ。
とりわけ、藤原さんの忘れ物だけはどうにか防げてるのだが。
しかし、藤原さんのドジっぷりまでは防げてない状況は変わりはない。
う~む、もっとスキルがあれば・・・。
「まぁまぁ、慌てへんでもいつかは身に付くやろて」
しかしなぁ。
今のままでは役立たずだよ。
「ほうかの?
色々、やってはるみたいやねんけどの?」
出来る範囲でな。
その範囲が心もとないんだよ。
「あんさん、欲張りすぎや~」
人間は皆、欲張りじゃ~!
「さいでっか」
まぁいいけどね。
「よっ、最近、調子いいみたいだね」
「あ、芦田さん、それほどでも・・・」
「いやいや、忘れ物は大分減ってるだろ」
「嫌味ならよしてくださいよ~」
「いやいや、褒めてるんだけど」
「そうですかぁ?」
「まぁ、その調子で頑張ってくれ。
ついでにドジも減ってくれると嬉しいんだがね」
「ほらぁ、やっぱり嫌味じゃないですかぁ」
芦田は笑いながら、去って行った。
藤原さんは今職場だ。
かる~く会話していたけれどね。
芦田ってヤロー、無礼な奴だ。
その様子を見ていた藤原さんは、手先を止めていた仕事を再開した。
「ほんと、そうよね、最近、忘れ物はしなくなってる。
うん、私も努力の結果が実って嬉しいし!
さぁ、頑張ろう」
その頃、奥へ行った芦田は不審に思っていた。
この前、なんか知らんけど、藤原のデスクに物がいきなり現れたのを見たんだよなぁ。
錯覚か気のせいだったんだろうか?
まさか、あれが噂のボルターガイスト?
というか、退院してきてから化けたか?
ん、待てよ?
ボルターガイストか、何か企画に使えるかな?
よし、考えてみよう!
そう思って、すぐさま、デスクに着いた。
もう、藤原の周囲に起きたことはどこ吹く風といったところであった。
そうして、終業のベルがなった。
「うん、帰ろう。今日は残業ないし、よし、買い物して行くか」
藤原さんも帰り支度を始めた。
「お疲れさまでした~」
「おつかれっす」
「はい、おつかれ~」
藤原さんが挨拶して、職場で挨拶が飛び交っていた。
そうして、会社を出て、いくつか乗り物を乗り継いで行く。
その帰り際に、藤原さんのマンション近くのスーパーで買い物をしていた。
店内では雑踏がすごかった。
「安いよ~」
「へ~い、いらっさ~」
うん?
予測が来た。
藤原さんが捕まる?
そんな馬鹿な・・・。
ヤバいな、なんとかしなくては・・・。
ふと見ると、店内でおしゃべりに夢中になっていたおばさんがいた。
通路を塞いでいて通れないぽかったが・・・。
藤原さんはなんとか通ろうとしていると、それは始まった。
なんと、空き缶がこぼれ落ちて、藤原さんのバッグに入ってしまったのだ。
早速だな。
俺はいつものように、空き缶を収納して棚にもどしておいた。
だが、運悪く子供が走り寄って転んだ拍子に棚とぶつかって、いくつかの品物が落ちてしまったのだ。
俺は転移する間もなく、そのまま床に落ちたのだ。
早く、転移をと思ったら、おばさんに拾われてしまった。
もう、その場は騒然である。
あのクソガキめ!
「あ~っ、商品が、すんません、戻しますのでお下がりください」
店員さんが商品を綺麗に並べ直していた。
んで、その間に俺は密かに転移して、藤原さんのバッグの中へと戻れたので良かった。
めでたしかな?
これw
「まぁ色々ありましたがな」
いいんだよ、解決してれば!
藤原さんは買い物を済ませ、レジから店外へ出た時である。
「ちょっとお待ちください」
藤原さんは呼び止められてしまった。
呼び止めた人は警備員であることを、藤原さんに告げてこう言った。
「荷物を検めさせてもらっていいですか?」
「あ、はい」
「では失礼します」
警備員さんは藤原さんのバッグを開き覗いてきた。
「あ・・・」
ん?
「これはなんですか?」
なんと!
あの缶詰が何故か入っていたのだった。
警備員さんはそれを取り出していた。
「知りません!
身に覚えもないです!」
「ですが、あなたのカバンに入っていたことはどう説明しますか?」
「そんなの知りません!」
「まぁ立ち話もなんですから、後は中で聞きましょう」
藤原さんは抗議もむなしく、倉庫の奥へ連行されてしまった。
え~っ?
なんで?
藤原さんは事務室に連れてかれてしまったようだ。
「さて、説明してもらいましょうか?
何故、これが貴女のカバンに入っていたのか?」
「本当に知りません」
「判るよ。
みんな、同じ事を言うんだよ。
知りません、ってね」
「どう言えば信じてくれるんですか?」
「貴方ねぇ、カバンの中に未処理の商品が入ってたんだよ!
信じるも何もこれが証拠でしょ?」
「ですから、何故、私のバッグに入ってたのかも説明のしようがないんです!」
「正直に言ったらどうかね?」
「つっ・・・」
藤原さんは店長や警備員に囲まれて散々言われている。
何故、こうなった?
俺は確かにちゃんと戻しておいたはずだ!
「不慮の事態って奴でんな」
うるせぇ!
「おぉこわ、くわばらくわばら・・・」
俺はちゃんと戻したはずだが・・・、あの後、子供が突っ込んできたよな・・・。
まさか、その時にまたしても?
ありえん、そんな偶然・・・。
確率的に言っても、天文学的な数字が出てきちまう。
それよりも、今はどうやって解決させるかだ・・・。
あの缶詰をどうにかして、元に戻さねばならんが、戻した後、その場にないのを不審に思うだろう。
あぁ~、難問だぞ、これ・・・。
「いっそ、あんさんと変わって見ちゃどうかね?」
はぁ?
何言ってんだこいつ・・・。
待てよ・・・?
俺があの場に?
そうすると、どうなるんだ?
まず、俺が転移で缶詰と代わったとする。
すると、そこの店長たちはどんな反応を???
「あんさん、冗談でっせ?
マジにとらんでも・・・」
いあ、ナイスな考えかも知れんぞ、これw
まず、俺を見たらなんでスマホが?ってそれこそ思うだろう。
そしたら、勘違いで済ませてくれるかも・・・w
「それ、マジでっか?」
だが、問題はあんな目立つとこにあって、どうやって転移させるか・・・だ。
人目に付かずってのが難しい。
他に気を逸らすには・・・。
さいわい、ここは倉庫っぽいからな。
何か崩せば、うまく視線をかわせるかも。
それで行くか。
どこを崩すかだな。
その場を見回してみたら・・・いいのがあったw
早速実行!
俺は掃除用具が立ててあったとこに移動して、モップを逆さにして見せた。
これぞ収納スキル活用よw
そして、案の定、バラバラっとモップらが倒れていった。
「あ、ちゃんと立てて置けと注意したのに」
よし、今だ!
缶詰のとこに転移して缶詰を収納する!
後はそこでじっとしていよう。
モップを片付けた店長は話を戻そうとした。
「さて、正直に言う気になったかい?
あんた、初犯って事でそのまま帰していいんだよ?
なんで、あんたのカバンにスマホが入っていたのかね?」
店長は俺を掴んでそう言った。
ギャハハハハハ・・・・・・・・。
馬鹿め、それは缶詰じゃなくて俺だよーんw
「え?
それ、私のスマホです」
「そう、あんたのスマホだよ。
って図々しいな、誰があんたの物になったと言ってんだよ。
これはうちの商品だよ」
ギャハハハハハ・・・・・・・・。
俺が商品だってさ!
「ん?
ってなんでスマホが・・・?」
「缶詰じゃなかったのか?」
「缶詰どこだ?」
店長と警備員は缶詰を探し出すのだが、辺りには見当たらなかった。
なくて、当然。
俺の収納の中さ!
店長と警備員は互いの顔を見合わせて、ヒソヒソ話を始めた。
「き、君ィ、これはどういう事かね?
缶詰を万引きしたんじゃないのかね?」
「確かに私が見た時には缶詰だったんですが・・・」
「すると、君はスマホを缶詰と勘違いしたと言う事かね}
「そ、そんなことはないですよ!
確かに缶詰だったんですよ!」
「なら、なんで、スマホがそこにあるのかね?」
「掃除用具が倒れた時にどこかに缶詰が転がったのでは?」
「だがしかし、君ィ、現に探し回ったが肝心の缶詰はどこにあるんだね?」
警備員の顔色がみるみるうちに青くなってくのが見えてよく判る。
これは何度見ても笑えるわwww
「か、缶詰がスマホになったんでしょうかね・・・はは・・・」
「君ィ、いくらなんでも冗談で言っていい事と悪い事があるよ?」
「そ、そうですよね・・・は、はは・・・。
は、そうだ!
今の騒ぎの隙にスマホと入れ替えたのでは?」
「ほんとかね?
間違いだったら、ただではすまないよ?
君ィ・・・」
「と、とりあえず、私が確かめてみますので・・・」
店長はしぶしぶしながらも警備員の成り行きを見ている。
「す、すみません・・・が、もう一度だけ、中を改めても・・・?」
藤原さんは嫌な顔をして、一度は拒否したが、仕方なくバッグを手渡した。
警備員は中を開け、確認する。
ある訳ないだろ!
何度も言うが俺のスキル収納の中にあんだよw
警備員の顔がますます青くなった。
「君ィ、あったのかね?」
「い、いえ、それが・・・そのぅ・・・」
「はっきりしなさい!」
「はっ、ありませんでした!」
プププッ、これ笑えるw
俺が人間だったら、まず間違いなく腹筋直撃だっただろう。
店長はいかにもやれやれといった表情であった。
そして、店長は指で警備員を手招きした。
「まぁいいよ、今回は何もなかった事にして、謝罪を済ませて帰すんだよ、いいね!」
「は、はい!」
ヒソヒソ話を済ませたようで、彼らは藤原さんの方へくるりと見た。
彼らのその顔は不気味なほどにニタっとしていた。
ある意味、恐怖だぞ、これ・・・w
「えっと、お客様、申し訳ございません。
うちの者が失礼なことをしでかしまして、謝罪させますので、ここはどうか穏便に済ませて頂けませんでしょうか?」
「あ、え、はい、気になさらないでください。
勘違いであったなら、こちらは別に、はい・・・」
「そう言ってくださって、ありがとうございます。
ほら、君!
さっさと謝罪をすませなさい!」
「すみません、お客様、今回は私が勘違いしたばかりに、お客様の気分を害させてしまいました。
これごらんの通り、謝罪いたしますので、今回は本当にすみませんでした」
「あ、いえ、とんでもないです。
今回はもういいですから・・・」
「これはお詫びのしるしですので、どうぞ、お受け取りください」
店長はそう言って、温泉無料券やスーパーのサービス券などを何枚か藤原さんに渡した。
藤原さんは狐か狸に化かされたような心境なのだろう。
心その場にあらずといった表情である。
「は、はい・・・」
「それでは、お客様、外までこの者に案内させますので。
ホラ、君!
ボケっとしてないでさっさと案内してきて!」
「は、はい、それではお客様、どうぞ、こちらへ」
「失礼します」
こうして、この騒ぎは一件落着~!
トリさん、あんたのおかげだよ!
「えぇ?
まぁそんな事はあるがな」
でもまぁ、犯罪者にならずに済んで良かったよw
こうして、家路につく藤原さん。
安心してよ、いつでも俺が守ってあげるから。
「泥船やがな」
おい!
でも何か大事なことを忘れてる気がする・・・。
「気のせいですやろ」
ま、そうだな、気のせいだな。
家に着くと藤原さんは早速、食事の支度を始めてた。
何かやらしませんように・・・。
買い物袋から、食品をそれぞれ、冷蔵庫や棚にしまいこんで行く藤原さん・・・。
あ、あああぁぁぁぁぁぁっ!
「あんさん、突然どないしたんや?」
しもた、缶詰、持ってきてしまった。
俺は藤原さんの様子を見て、唐突に思い出したのである。
「!」
呆れてるな、トリさんめ!
気のせいだと言ってたの誰だ!
「はて誰でっしゃろな」
むむむっ。
しかし、どうしようかなこれ・・・。
魔力ももう残り少ないし、まぁいいか、そこらへんに置いておこう。
その後・・・。
藤原さんはスマホの側にあった缶詰を見て思った。
あれ・・・?
これってスーパーで疑惑の元になった缶詰よね?
何故、ここに・・・?
不思議に思いながら、缶詰を手に取り、棚にしまうのであった。
いつしか日は巡り・・・。
私は今、オフィスで仕事している。
次の会議で使う企画書を書き上げなければならない。
が、たった今、それが完了した。
ようやく一息ついたところで、物思いに耽ってしまった。
気が付けば・・・。
おかしな事が起きてる。
そう。
忘れ物がだいぶ減ってるのだ。
幼少の頃から、あんだけ親や教師にも言われ続けてたのに。
忘れ物だけはなくならない、私の一番悪い癖だったはずだ。
なんだろう?
準備してたわけでもない。
無論、あらかじめ用意してたわけでもない。
それは本人である私が一番判っている事。
そして、いつもなのだ。
実はこれが一番の気がかり。
そう、いつも気付くとなのだ。
忘れ物したかと思えば、何故か物があったりしている。
不気味なほどである。
これがいかに不自然な事か、最近になって気付いた。
何だろう・・・?
思えば、退院してからだろう。
この不可思議な現象は・・・。
もしや・・・、何かが憑いてる?
寒気がした。
・・・。
やめよう、気にしてても訳が判らない事だらけだ。
後、変わった事と言えば、前もスーパーで万引きの疑いがあった時もそうだった。
あの時の缶詰は今も戸棚にある。
それが、いつもスマホのある位置に置いてあったのだ。
何故?
そう言えば、缶詰がいつの間にかスマホになっていたっけ?
あの時の警備員さん、怪訝そうで訝し気な表情だったのを覚えている。
ふと気付けば、スマホが机の上で電灯の明かりを受け、輝いていた。
私はもうただ、じっとスマホに見入っていた。
そう、ボンヤリと。
「おーい、藤原ぁ!
今朝、頼んだやつ、出来てるかぁ?」
「あ、ハイ、ただいま、持っていきます」
「おぉ、頼んだぞ」
私は芦田チーフの声で我に返り、書類の作成にかかる。
机の上のスマホはただ物言わぬまま、佇んでいただけだった。
何とまぁ、俺がしでかした事。
しかし、元には戻せないし、まぁいいか。
「なぁんもせぇへんのでっか?」
これ以上、何をしろと?