大丈夫よ
今回の主役は私、藤原愛ことメグです。
回想シーンとかもあるので読みごたえはあると思います。
どうか、みなさん楽しんで下さいね。
退院して会社に久々に行った帰りの事。
今夜は望ちゃんと食事に行く約束だ。
そこで、バニーズレストランで食事を取る事にした。
「メグちゃんは何にする?」
私たちはメニューを見て、何にするか話し合っていた。
「そうね・・・、私はハンバーグセットにしようかな?」
「あ、いいかも、あたしもそれにする~♪」
そんなたわいもない会話、いつもの日常だ。
ただ、あの時を思えば、時たま鬱になる。
「どったの?」
「え?
ううん、なんでもないわ」
「嘘、あの事故以来、元気ないって事くらい気付いてるよ」
流石、望ちゃん、お見通しね・・・。
「もしかして、あの人の事?」
「え、う・・・うん」
「しょうがなくね?」
「判ってるの、それは、どうしようもなく・・・」
「あんたの初恋の人だってのは知ってるけどさ」
そうだ。あの方は私の初恋の相手。
あの時、私は急いで会社に向かっていたのだ。
「あ~、いっけない、遅刻しちゃう。
私って、どうしていつもそうなのかな?」
私は慌てて、着替えを済ませ髪を結っていた。
「う~ん、食事してる暇もないな。
仕方ない、売店で何か取ろう」
他に忘れ物ないかチェックを済ませ、玄関に向かう。
そして、出る前に周囲をチェックする。
以前にそれを怠っていたら、ボヤを出してしまった事があるので、要チェックしなくちゃね。
「よし」
そして、外に出て鍵チェックを何度も繰り返す。
後はバスがあるかな?
腕時計を見ながら歩道に出た時だった。
交差点に向かう反対側から歩いてくるあの人は・・・。
ま、まさか、安藤くん?
子供の時から少しも容姿が変わらないからすぐに判った。
体が周りよりも一回りも大きくて、一番特徴的な怖い顔も本当に変わらない。
初めて会った時、怖さで泣いてた私に一輪のたんぽぽを渡してくれたね。
そして、泣き虫だった私をかばってくれてたね。
あれで私はあなたに惹かれたのよ。
そう、初恋の人なのよ。
あっと、時間。
我に返り、腕時計を見て思う。
どうしよう・・・、懐かしさで話しかけたい♪
でも、仕事が・・・。
もう一回だけ、安藤くんを見たい。
ちらっと、見たら、偶然にも目が合ってしまった。
気恥ずかしさでつい背けちゃった。
気付いてたら、もう交差点に向かって、走り出してた。
ご、ゴメンね、安藤くん、気恥ずかしさで混乱してる私。
そこで、タイヤが鳴り、クラクションも大きく聞こえてきた。
振り向くとものすごい速さで車が向かってきていた。
あまりにも一瞬だったので、身動きも出来なかった。
え?
信号は・・・青だよね。
私死ぬの?
と思った瞬間だった。
私はたくましい腕に抱えられ、それから、衝撃が足を走った。
い、痛い!
痛さに足をさする。
って私、はねられたんだよね?
なんで、体はなんともないの?
私生きてるの?
顔を上げて、横断歩道を見たら、安藤くんがすごい血だらけになって倒れていた。
「え、あ、安藤くん?」
え、えぇ?
な、何があったの?
もしかして、私・・・助けてくれたの?
嘘でしょ・・・?
それよりも安藤くん、生きてるの?
は、早く、安藤くんに・・・(悲)
痛さを堪え、立ち上がろうとするけど歩みにならない。
周囲の人たちも支えてくれたけれど、どうしよう立てない。
でも、安藤くんが心配で・・・。
「お願い、安藤くんの、あの方の側に行かせて」
「あ、あぁ、けど大丈夫か?」
私は支えてくれてた人をはねのけ、痛みにも耐え必死に歩いていく。
「あ、あなた、だ、大丈夫?」
安藤くん、怪我がひどくて声にならない、けれど安藤くんは私に心配かけまいとしてる。
必死で笑いかけて来てくれてる。
相変わらずよね、安藤くん、あなたはいつも優しかった。
子供の頃、一緒によく過ごしたよね。
今でも目を閉じれば、思い出せるのよ。
だ、だめよ、安藤くん今はじっとしてて。お願い(必死)
「私を助けてくれたのね。
お願い、死なないで・・・」
私は安藤くんの手を握って必死に伝えようとした。
本当に死なないで!
あ、安藤くん、顔を上げようとしてる。
だ、ダメ、今は動いちゃダメよ、安藤くん。
あ、救急車が来るのか心配なのね。
「お・・・、お」
「しゃべらないで!
無理しないで救急車を今呼んだから大丈夫よ。
だから今はお願い、安静にしてて!」
「出血がひどいな、血止めをしないと、お嬢ちゃん、どいてて」
その時、救護に来てくれた人が安藤くんに処方しようとしてくれてる。
あ・・・、そうだった。私、安藤くんに声かける事しか考えてなかった。
ダメね、私。
今は救護をこの人たちに任せよう、私は安藤くんを見ていなくては・・・。
だ、だって、私を助けてくれたせいで、こうなっちゃってるもの、安藤くん。
私は安藤くんを抑えようと顔を見る。
痛そうにしてる。
痛いよね、あんなに血が流れちゃって・・・思わず目に涙が溢れそうになる。
ごめんね、安藤くん、いや、ううん、助けてくれて本当にありがとね。
あ、あぁ・・・安藤くんの手が冷たくなっていく・・・。
あ、い、嫌だ、お願い、死なないで!
「安藤くん!
安藤く~ん!」
泣き叫ぶと、ちょうど、救急車が来たようだ。
「君は足をやられたんだね、歩ける?」
「ダメ、立ってるのがやっとなので」
「足の他に気になるとこはない?」
「あ、そういえば腰を捻ったようで・・・」
「頭は打っていないよね?」
「はい、そこは大丈夫です、あの方に助けて頂いたので」
「判りました。
一応、君も病院へ運ばないとなので今は救急車に乗って」
私は言われるまま、救急車の中に入ると、席に促されて席に着いた。
その後に安藤くんがタンカで運ばれてきたのが見えた。
さっきのよりも顔色が悪い・・・。
大丈夫なの?
これ・・・。
私も一応、ケガ人なので一緒に運ばれることになった。
「ヤバいな、意識混濁が始まってるぞ、これ」
「市内で受け入れ可能な病院があれば・・・」
今は横たわってる安藤くんを見つめる事しか出来ない。
けど、救急隊員が色々とやってくれてる。
私は拝むように手を握った。
お願い、神様!
安藤くんを死なせないで!
私は今まで以上に必死で祈っていた。
必死で神様に訴えていた、安藤くんを死なせないように・・・。
「ねぇ、メグ、メグちゃんてば!」
気付けば、望ちゃんが必死に声かけてくれてた。
あ、そうか、今はバニーズ・・・。
「大丈夫?」
「あ、ごめん、あの時の事・・・思い出しちゃって」
「ううん、いいのよ」
「だって、せっかく会えたのよ・・・」
「うん、うん・・・」
「なのに、あんな事になっちゃって・・・私」
「判るよ、でも・・・」
「初恋の人なのに、こんな事って・・・」
「もういいよ、メグちゃんが悪いんじゃない・・・」
「いいえ、私が悪いの!」
私はつい声を上げてしまった。
店内が静かになってしまった。
「あの、お客様・・・?」
「あ、ごめんなさい」
私は席を立って、周囲に向けて頭を下げた。
望ちゃんも一緒になって頭を下げてくれている。
「喧嘩でしたら、店内のお客様のご迷惑になるので」
「ううん、ゴメンなさい。
喧嘩じゃないの、私がつい興奮しちゃってただけなので」
「そう、それでしたら、いいのです。では、ごゆっくり」
ウェイトレスさんはそう言うと、軽く周囲にお辞儀して奥へ進んで行った。
席に着くと心配そうに望ちゃんが私を見る。
「心配かけてゴメンね」
「いいのよ、アタシ、あんたが辛そうにしてるの、黙って見てられなかったから。
アタシこそ、ゴメンね」
互いに顔を見つめ合うとつい笑顔がほころぶ。
「ふふふ、望ちゃん、ありがとね」
「いいのよ、水くさい。
アタシで良かったら、いつだって側にいるからさ」
「うん、あの方はもう祈るしかないよね」
「そうだね、もう祈ろう、アタシもさ。
あんたのために毎日祈るわ」
「ぶっ、フフフ・・・」
それを聞くと、目に涙が浮かびそうになった。
そうしてると、食事が運ばれてきた。
「元気出すためにも今は食べよう!」
「そうそう、辛い時は必ず言ってね」
「うん!」
私たちはそれから、食事を食べて、ゆっくりと時間が過ぎゆくままに笑い合った。
安藤くん、大丈夫よ、私は元気だから・・・。
みなさん、どうでしたか?
楽しんで頂けたなら感想とかもぜひお願いしますね。
「エエ娘やな・・・w」
え?
今の声は誰・・・?