ありゃま
藤原さん見てるとマジで危なっかしい。
フォロー入れたいのだが、出来る事が限られてるからなぁ。
さてと、藤原さんの様子を見に行くか。
目覚まし時計がけたたましく鳴り出す。
もう朝だ。
だが、藤原さんは企画書を徹夜でまとめていたようで、まだ起きないようだ。
あぁ、俺に起こせる手があったなら、やさしく揺り起こすのに・・・(笑)
ほんとにもどかしいです、ハイ(汗)
藤原さ~ん、朝ですよ~。
起きましょうよ~、遅刻してしまいますよ~。
だが、一向に起きる気配がない。
目覚ましがやかましいのだが、何か、無力な点では分かり合えそうではあるな。
って何言ってるんだろ?
俺(汗)
と、そこで力尽きたように目覚ましが止まる。
おい、もっと鳴らせよ(怒)
こうなったら俺がタイマー鳴らして見せるしか・・・、あっ。
そうであった、まだ、スマホ自体、自分では操作が出来ないのであった。
俺の存在って一体何なのだろう?
まだ起きない藤原さんを見て思う。
俺は役に立てる時が来るのだろうか?
だがしかし、俺がスマホである以上、スマホで出来る事でしか限られるのだろうが・・・。
でなければ、何のためにスマホに転生したのか、俺自身判らなくなってしまう。
本当に何のためだろう?
一人暮らしの女性を眺めて、ニヤニヤするためでは決してないはずだ!
とは言え、そこは悲しいが男の性があるのは俺にもある。
だって、健康な男子なら一度は夢見るはずだ。
でも、それだけでは何か虚しさがあるんだよねぇ。
やはり、スマホとはいえ、藤原さんと一緒にいる以上は役立ててみたいのだ。
今はむしろ、その思いが大きくなっているのだ。
今日までの短い期間ではあるが、藤原さんを見てると本当に危なっかしい・・・(汗)
昨日などは、企画書に夢中になり過ぎて、流しの水が溢れ出て、大惨事になるし。
他には何もないところで転んで、頭を打ち付けて気を失うわ。
先日、それで入院してたのに、なんともヤバいではないか!
他にもきりがない。
ようするに藤原さんはドジっ子なのである。
とはいえ、今は遅刻しそうになってるのではあるが・・・。
長い事、藤原さんが心配であれこれ、どうにも出来ないが考えてみた。
すると、俺が鳴り出した。
どうやら、会社かららしい。
すると、藤原さんは目覚めたようで、俺を探し出す。
「ハイ、藤原・・・」
「おい、今日から出社日だろう?
まだ具合が悪いのか?」
「あっ!
すいません、今すぐ行きます!」
「なんだ?
寝坊か?
仕方ないなぁ、まぁゆっくりでいいよ。
無理はするなよ」
「はい!」
スマホを切り、藤原さんは飛び起きて着替え始める。
やれやれ・・・(汗)
取りも急ぎ、俺を掴み、バッグに入れたかと思うと玄関に向かっていた。
はて・・・?
何か忘れてるような・・・?
まぁいいか、とりあえず遅刻ではあるが藤原さんは起きた。
それでよし!
どうにかこうにかで会社に着いた。
「おはようございます」
「おう、来たか、藤原。
また、具合悪くしたのか心配したが、大丈夫だな?」
「はい、大丈夫です。
ご迷惑おかけして、申し訳ございません」
「あぁまぁ、それはいいよ。
藤原が元気ならそれでいい。
んで企画書はあるか?」
「はい、このバッグのな・・・か・・・に」
藤原さんはバッグを見て蒼ざめた。
もしや・・・、ド忘れした・・・?
「あ、あれ?」
「忘れたとか?」
藤原さんは動きを止めて芦田チーフを見た。
「・・・みたいです。すみません」
「う~ん、急ぎの仕事ではないからいいけど、しっかりしてよ?」
「はい・・・」
「まぁいいや、次、やっておいて、これ、その書類な。
企画書は昼にでも取りに行って来てね」
「判りました」
藤原さんはヘコんで自分の席に就いた。
またしてもか・・・。
俺に少しでも力があればと尚更思う。
心底、今は思う。
魔法があるのにと強く思う。
だが、今はそれよりも意思の疎通が出来たらと、まず一番思うんだよねぇ(泣)
それがあれば、アドバイスとか色々出来るのになぁ・・・。
ほんとに無力だ。
俺って何なんだと思う、が、スマホだから、むしろそれが普通なんだろうがね。
では何故、俺はスマホになったのだ?
存在意義が見当たらないのが、尚且、腹ただしい。
忘れてはいたのだが、俺には探検の心得という称号があり、中でも予測なるスキルが存在する。
あらためて思うと、予測スキルは藤原さんのためにあるようなスキルに思える。
では、それを役立てる手段は・・・と言うと今はないのだ(泣)
だからこそ、腹ただしい。
すると、俺に着信がかかる。
LIMEのようだ。
すると、奴の声が飛び込んできた。
「速報ですわ、あんさんw
一定の条件を満たしたんで、空間を操りし者の称号を取得しましたで。
そのおまけで転移、収納のスキルが解放されよったわ。
後、探知、鑑定スキルの熟練度が上がりましたで」
お?
なんだ、タイミング的に、この都合のいい称号。
どう考えても、俺が取りに行けばいい展開だろう、これ(笑)
転移とか収納とか説明を訊かんでも俺でも判るぞ。
「転移とは空間を移動出来るスキルですわ。
収納とは物体等を特殊空間へ格納、取出し出来るスキルでんがな」
言わんでもいいのに(汗)
「わての勝手ですてw」
おい!
まぁいいか、早速、忘れ物をっと、その前に周囲を見ておこう。
いきなり俺が消えたら不審に思うだろう。
探知っと・・・。
側には藤原さん、そして、数人は離れてはいるが、同様にデスクワーク。
さらに数人が忙しなく移動してるくらいか。
俺はバッグの中から引き出しへ移動されてるから、問題はないだろう。
では、転移するぞ。
「ちょちょちょい、待ちぃな、あんさん。
転移は距離が離れれば離れるほどに魔力を消耗度が大きなるんやで。
しかしまぁ、熟練度をを上げれば魔力の消耗は小さくなるんやがな。
つまりや、初回時とか初めての地に転移する時は特にヤバいでっせ」
え・・・?
つまり・・・、俺をロストする危険があると・・・?
「そうなるがな」
なんだか、ドヤ顔されてる気がしてきたぞ(怒)
「気のせいやて」
こいつ、だんだんとおちゃめになってきてないか?
まぁいいけどねぇ。
転移で移動する時の消耗量はどれくらいかは知らんが、軽はずみには使えないって事か。
さて、どうするか?
あらかじめ位置は判ってるのだが、大丈夫なのだろうか?
予測してみるか。
すると、予測結果がパネルに出た。
転移には魔力量をある程度消耗しますが、問題なしと思われます、が、不慮の事態を引き起こす可能性があります。
不慮の事態?
なんだそれは?
「それ以上はあきまへんで、熟練度が足りてへんのやで。
つまりかて、回答不能やがな」
むむむっ。
回答不能とかなんじゃこれはぁぁぁっ!
「そら、予測スキルの熟練度があかんからなぁ・・・」
これ以上は熟練度を上げろと、そういう事ですか。
不慮の事態かぁ、まずいなぁ・・・。
やらないよりはやった方がいいのかな?
でも、熟練度上げたいしなぁ。
これからの事を考えれば経験はしておきたいところだが・・・。
まぁなるようになれっと、行きますか。
転移するぞ。
お、お、おおぉぉぉっ・・・。
何かに吸い込まれるぅぅぅっ・・・。
キ~ンコ~ン。
その後、会社内でチャイムがなった。
「あ、もう昼だわ、書類を取りに行かなければ・・・」
藤原は引き出しをおもむろに引くと動きが止まった。
「あら?
スマホがないわ、バッグの中かしら?
変ね?
着信音が聞こえてきたはずなんだけれど・・・」
「お~い、藤原君
書類を取り忘れないように」
「あ、はい、今から行きます」
「気を付けてね」
「行ってきます」
引き出しを見てると芦田チーフから声をかけられ、帰宅の準備をして会社を出た。
かなり急いでいたようなので、彼の存在を忘れていたようである。
かくして、転移は無事済んだようである。
むぅん、目が回る。
スマホで目が回るという言い回しは、おかしいかも知れんが、ひどく視界が歪んでる感覚がする。
これが転移というものか、慣れないとアレだなぁ(笑)
さて、書類はっと。
あった、机の上のファイルがそれだろう。
収納っと。
では、急いで会社に戻ろう、転移っと。
また・・・(笑)
吸い込まれる感覚だ。
慣れるんかなぁ、俺(汗)
元に戻ってみると、一人二人は弁当食っていて、他はいないようだった。
今は昼休みか。
まぁ今のうちに書類を机の上に置いておこう。
っと、その時に会社に入ってきた二人の会話が耳に入ってきた。
「あれ、藤原さんは?」
「あぁ、なんか書類を取りに家へ戻ってるみたいよ」
「あらら、お昼一緒に取ろうと思ってたんだけど、仕方ないね」
なぬ?
藤原さんがいない?
先ほどの不慮の事態って、これの事か!
ヤバいな・・・。
藤原さんはどこを移動中なのか探知で把握は・・・。
「これまた熟練度が足らんよって」
ですよね(困)
さて、どうしたもんだろう。
俺を忘れていくなんて、よっぽど急いでいたのだろう。
藤原さん(泣)
ごめんよおぉぉぉっ。
俺が軽はずみ過ぎた上にあさはかだった。
それよりもこれをどう解決すべきか。
魔力も残り少ない。
次の転移で俺もどうなるか。
電力量はすでに1/5ほどしか残っていない。
転移も2度ほど繰り返したが、消耗度は大分下がってるはずだが・・・。
「もってギリギリやと思うで」
時間的にやってみるしかないな。
だが、自宅に戻って藤原さんがいるのかは判らない。
移動時間からしてもう着いてるのだろうが、すれ違う危険も大きい。
それならば、方法は一つ、だ。
即、実行だ。
しかし、やらなければ良かったと数時間後に俺は後悔する事になる。
というのも、俺が気付いたのは、藤原さんの自宅で充電されてたからだ。
藤原さんは今芦田チーフと共に企画書の意見を交換し合ってる頃だ。
でもまぁ、結果的にまるく収まってるようだからいいけれどね。
いきさつはこうだ。
まず、俺は通勤ルートを区間ごとに区切って探知を入れていくことにした。
通勤ルートなら、今朝の移動で把握してるし、探知スキルアップも兼ねられるだろうと予測し、やってみる事にした。
移動してる藤原さんを探知するのが不可能なら、区切って捜索すればいいのだ。
さて入り口側から辿って見よう。
もういないだろうけど・・・。
数キロメートルの範囲だが少しづつ情報が入ってくる。
それと同時に探知スキルの熟練度が上がってきてるのかも。
いいぞ、俺!
この作戦は当たってる。
順次、探しに行くと見つけた。
自宅まで10分の距離くらいのところを徒歩中だった。
次は芦田チーフの机の上に企画書を目立つように置いた。
そして、藤原さんのバッグへめがけて転移だ。
だが、転移実行後にそれが聞こえてきた時に俺は意識が遠のくのを感じた。
「あ~ぁ、やっちまったで、あんさん。
無理やりな転移で魔力すっからかんやで。
よって、強制シャットダウンされよったわ」
ありゃま・・・。
やれやれだよ、ようやく進歩(?)したかなw
だが転移スキルって慣れないとだし、案外怖いもんだなぁ・・・。
「ほんまにやれやれですわ」
あらためて、言われると何か腹立ってきたぞw