ないわぁ(前半)
マジでスマホになってしまっていた!
俺、これから先、どうなってしまうの?
ん~?
どれくらい眠ったんだろ。
気付けば、家からかなり移動して、今は病院の中っぽい。
まぁ視界は相変わらずブラックアウト状態で何も聞こえず、見えてないんだな、これが・・・(笑)
ただ、音声だけは時折、電源が入ったりを繰り返してるから、少しづつではあるが、入ってくるので、まぁ苦にはならんのが幸いってとこだろう。
「あのすみません、娘のお見舞いにいらしたのだけれど・・・」
「はい、ではこちらに氏名と住所をご記入下さい」
「ハイ、すみません」
藤原さんのお見舞いか。
やはり、先日の事故で入院してるのか。
なんか心配だ。
「ハイ、記入済みましたけど」
「では、大変恐縮でございますが、身分を証明出来る物をお持ちでしょうか?」
「ハイ、こちらが私の免許証です」
「では、しばらくお預かりいたしますが宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
「では失礼いたします」
足を痛めてたらしいから骨折でもしたのだろうか?
それとも、どこかぶつけた箇所でもあったのだろうか?
心配ではある。
何しろ、これから俺の主人ともなるお方なので気が気じゃない。
「手続きが済みましたので、病室までの道はお判りになれますか?」
「大丈夫です、ありがとう」
これから病室へ向かうようだ。
あれこれ考えてみても仕方ないし、今は祈ろう。
「愛」
「お母さん!」
「具合はどうなの?」
「うん、精密検査が終わって今は大人しく読書してたの」
「そう、じゃあ後で先生のとこに伺わないとね」
「うん」
やっと着いたようだw
実はやっとお目通りするって事でテンションは上がりまくってる。
心臓があったら、鼓動音が周囲に漏れないか心配なくらいだ。
が、今の俺はスマホになっているので、その心配は無用で助かる(笑)
「そうそう、スマホ壊したでしょう。
新しいスマホよ」
いよいよだ。
藤原さんの母はバッグから俺を取り出して行く。
その過程で電源が入り、突然、視界が開かれる。
まず目に入ったのは藤原の母の巨大な(失礼)手だ。
そして、バッグから軽やかに運ばれ、藤原さんの手へ運ばれていく。
流れるような景色を追いながら見ていたが、予想通り病室であった。
そして、藤原さんの顔が映し出される。
か、可愛い、癒されるわぁ(笑)
「そうかなぁ?」
・・・。
そういあいたわ・・・、トリさん。
「あんさん、ソレひどくないでっか?」
もう、無視無視。
今は藤原さんに集中w
「ありがとう、お母さん。
やったぁ!
この色、気にいってたのよ」
うわっと!
顔がドアップになる。
スマホを頬ずりとまでは行かないまでも顔に近づけてる。
大きい、しかし可愛いw
「在庫に一つしかなかったんですって」
「そうなの?」
「うん、限定色だったからねぇ。
その赤」
「良かったぁ。
今度は壊さないようにしなくちゃ、ね」
ほぅほぅ、赤か。
何しろ、視界は固定されていて、どんな色なのかも判らなかったからなぁ。
「メモリーは大丈夫?」
「うん、確認するわ」
それはアドレス検索してたから多分大丈夫かと思うが、藤原さんが俺を操作してくれている。
優しく触れてくれてるのでかえって気持ちよく感じる。
「大丈夫よ。
バックアップは必ずしてたから、問題はなさそうね」
「そう、良かったわ。
じゃあ花瓶の花、変えて来るわね」
「ハーイ」
早速色々と操作し始めた。
ピロン。
「各種アプリのバックアップのダウンロードを開始しました」
ぬぉ、とんでもない容量のデータが流れ込んできた。
頑張れ俺!
あれから、スキルも色々得たし、ますます便利になったな俺w
それよりも気になったのがスキルポイント。
一体何に使うのだろう?
スキルポイントとは?
「一定の動作でスキルポイントが得られますよってに。
そのスキルポイントがですな、一定の基準を満たすことで、なんと!
拡張スキルが獲得されますわなw」
拡張スキル?
「まぁ通常、スキルは一般、拡張とがあるんやわ。
てやから、一般スキルと呼ぶんや。
とまぁスキルポイントで獲得されるスキルの方が拡張スキルなんやな」
おぉ、いろいろ進化され、便利なスマホになろう!
頑張って藤原さん。
それって、操作する事でしか上がらないようだし。
それにしても、だ。
藤原さん、元気なさそうだ。
どことなく悲しそうだし、何があったんだろう。
スマホ操作を一通り終えた後はぼんやりと遠くを見てるかのようだ。
そんな折、藤原さんの母が花瓶の中を変えて戻ってきたようだ。
「あら、元気ないわね」
「ん?
あ、あぁそうね。
でも大丈夫だから」
「そう?
そうそう、精密検査の結果が出たわよ」
「それで?」
「異常はなさそうだから、明日には退院できそうよ」
「ほんと?」
「まぁ頭を軽くぶつけただけだけれど、念には念を入れて入院してただけだし、足は捻っただけで骨折はなし。
幸いだったよね。
助けて頂いた方にはほんと感謝しなくちゃ、ね」
すると、藤原さんの表情が暗くなる。
それに退院出来るのだし、喜ばない訳がないし、様子が変だ。
ひょっとして俺が死んだ事を気にしてるのかな?
俺はこの通り、スマホとして転生出来て、側にいるから安心してよ、って無理か・・・(困)
逆に怖いだけかも・・・。
「ほんと、感謝しなくちゃ・・・ね」
「そうそう、一日も早く元気にならなくては、ね」
「うん・・・」
そうだよ、一日も早く笑顔見せてくれないと困るよ。
「わたし、少し疲れたから眠るね?」
「うん、お休み」
そう言うと布団に潜り込んで寝てしまった。
気のせいか、体が震えてるようだ。
母はそんな藤原さんの体をいとおしむようにさすっていた。
絵になるなぁ。
体もなんともなくてほんとに良かったよ、藤原さん、俺なんて死んでしまったし(泣)
一日も早く進化して、藤原さんの役に立てなくては、だ。
そっか、事故の後、俺は残念ながら死んでしまったけれど、藤原さんは軽い衝撃を受けたけれど、異常はなし。
ほんとに助けた甲斐があるよ。
母は藤原さんが寝たのを見るといつの間にか立ち去っていたようだ。
呼び出し音♪
っと誰かからのLIMEが入ったようだ。
すると、藤原さんが俺を持ち、操作しはじめる。
内容は・・・。
{はーい、メグ。元気?}
どうやら藤原さんの同級生らしい。
すると、藤原さんの顔が明るくなる。
{うん、私は元気よ!
ありがとう}
{じゃあさ、お見舞いに行きたいけど、いつがいいかな?}
{それが明日退院なの}
{良かったぁ、おめでとう!
じゃあ、明日迎えに行ってもいい?}
{嬉しい!
ありがとう、ぜひ迎えに来てね}
{OK、絶対に行くよ、待っててね}
{うん、待ってる、マタネ}
「あんさんあんさん」
何だ?
「一定の条件を満たしたよってに、探検の心得の称号を取得しよったんですわw
ほんでもって、探知、鑑定、予測のスキルが解放されたんですわ」
その調子だ、どんどん進化していって下さい。
今の俺は無力だあぁっ(泣)
って・・・探検の心得?
称号?
何だそれ?
「正にソレなw
一般及び拡張スキルが一定の熟練度と共に経験値を得る事で称号は取得されよるんですわ。
探検の心得は多くの知識と情報を得る事が出来るスキルでっせ」
へぇ、つまり、
ふと、疑問がわいてきたのだが・・・。
何故、その進化は俺の意思とは別に上がっていくのだろう・・・?
俺自身も操作する事でレベルを上げることは不可能なのだろうか?
「そりゃ、本体を扱う者が対象ですからなぁ。
まぁ、その副産物である称号はあんさんの意思でのみ扱えるスキルやから、その限りではないんやがなぁ・・・?」
ふむふむ。
考えてみればそうかも知れんが・・・。
そもそも、スマホに意思はない、それが普通だ。
では、何故、俺はスマホになった?
「おや、今頃それ聞きよるんかいな?」
そりゃ気になるだろw
「むっかしい説明は苦手なんやが敵わんなぁ。
まぁいいですわ。
現次元よりより高度な次元での話なんやが、本体とリンクされとるんやな。あんさんはな。
んでもって本体は物体レベルで存在してる物ですやろ。
あんさんの意思なんやが、アストラルレベルでの存在なんやな。
それぞれはまぁ別々に動き、独立しとるんや。
しかしやがな、本体と意思が連携して、ようやくあんさんの存在が出来よるんやな」
んんん~?
アストラルとか精霊の事だよな?
それで魔法が使えるようになるのかな?
「まぁ魔法は使えますよってにw」
そうか、魔法が使えるのか。
って・・・え?
ま・ほ・う・が・つ・か・え・ま・す・?
そう言ったのか?
「まぁいわゆる称号ってやつが魔法と呼べるんかな?」
うおぉぉぉっっっ!
魔法来たあぁぁぁっ!
マジか、これ。
どんなスキルがあるんだ?
「まぁざっと並べればこんなもんですやろw」
すると、スキルの一覧が並んだ。
色々あるなぁ、一つ一つ確認するだけでも大変そう・・・。
だが、転移とかもあるし、これ、仮に持ち主がスマホを落としたとしても元に戻れるとか使えそうだ!
中には回復とかもあったりするし、これ激ヤバレベルだわ。
すごい!
チートなスマホだ、俺!
これでテンション上がらない訳がない。
だが・・・。
どうしたら称号を獲得出来るのだろう?
「それなんやが、称号獲得するんわ簡単でないんだわ、これがw
簡単に言えば、一般と拡張スキルの熟練度と経験値とがな、一定の基準を満たせば、初めて獲得可能となるんやが、大変でっせ?」
さすがに魔法は獲得条件が厳しい。残念。
初めから自由に出来る物ではないと言うのは、テンション下がる。
ふ~む、難しい事はよく判らないな。、
しかしまぁ、称号を覚えたいな。
まぁ順次、覚えていくらしいし、これからが楽しみではある。
しかし、うまく出来てるなとは思う。
そういえば、今回得たスキルは探知、鑑定、予測の三つだったな。
探知スキルってよく判らんのだが?
「うん、探知はっと・・・、周囲を感知し、周辺を把握するものですわ。
要約するならば閉じられた空間にいたとしても、どこにいるか把握出来るんやな」
閉じられた空間・・・?
つまり、バッグとか引き出しの中からでも、周囲の把握が出来るって事か。
よく出来てるな。
鑑定ってどう使うんだろう?
「それは直接見た人物や物なんかをな、鑑定出来ますよってに。
ついでながら、鑑定の延長機能として、そのステータス画面を表示出来るんがすごいとこやがなw」
ステータス画面?
「ほいっ」
するとステータスが表示された。
これが今の俺の状態か、ラノベどころかRPGじみてきたなぁ・・・(汗)
HP、MPとか基本的なのがゲージ表示されてるし。
ってMP?
いわゆる魔力だよな。
ちなみに魔力がなくなるとどうなる?
「魔力なんやがあんさんからしてみれば、電力そのもんなんや。
するってぇと、魔力が空っぽになったら、強制的にシャットダウンでっせ。マジで気を付けなアカンですわ」
シャットダウンされるのか。
「そればかりかシャットダウンされるとやが、本体とのリンクが電源回復までは遮断されるんよ。
つまり、意識が飛ぶってことでっせw」
つまり・・・?
「無力となるんだわw」
うは、これは気をつけねば・・・(汗)
最後にはなったが予測って?
「あらゆるパターンでの予後を想定出来る代物でっせ」
それで探検の心得か、基本だなぁ。
藤原さんとの生活かぁ。
楽しみでもあるし、不安・・・。