ご対面? (7/11まとめ)
事件はこうして解決を見た、が・・・。
その後はどうなるのか、奴は知る由もなかった。
そう、新たな変化が訪れようとしていた。
愛が目覚めたのは、市内で家に間近い病院であった。
奇しくも前回、事故を起こした時にも収容された所でもあった。
「愛っ!」
「目覚めたのね、良かった・・・」
「すぐに医師を呼ばなくては・・・、行ってくる」
側には愛の家族が心配そうに寄り添っていた。
姉の一美がベッド際に愛の傍らに、母は椅子から立ち上がって愛に近寄る。
そして、父は医師を呼びに通路へいそいそと出ていくとこだった。
目覚めたか・・・、良かったぁ~(泣)
「おめっとさん」
俺は感涙はこぼせないが、泣きそうだよ。
「まぁそうでっしゃろ」
むっ、冷たい反応だな。
「そりゃ、わては当事者あらへんもん」
まぁいっかw
藤原さん、無事な方がいいからな。
「わ、私・・・、そっか、攫われたんだっけ」
「そうよ、誰か知らないけれど助けられたのよ、貴女は」
「え?
助け?
そっか、あの不思議な光で私は・・・」
「光?
何それ?」
「え?
いや、なんでもないわ・・・」
すると、私はあのスマホに・・・って・・・あっ!
「そうだ!
私のスマホは?」
「スマホ?
あぁそれなら、そこに充電中よ」
一美はベッド側の棚に視線を移す。
つられた愛も棚を見ようと体を起こそうとするが、よろける。
「あぁっ!
駄目よ、愛、今はゆっくり休んでいて」
「そうよ、みんな、貴女の事を心配してたんだから、今はともかく休まないと駄目よ」
愛は一美に支えられながら、ベッドに横になり、シーツをかけられる。
「そ、そうね・・・」
スマホは後でも見れるというか・・・。
愛はとにかく、今は休もうと思った。
だが、思うところはあるようだった。
あの光は間違いなく、安藤くんなのか・・・。
今すぐにでも、確認したい。
でも、今は家族の前だから・・・うん。
愛は棚に置かれてるだろうスマホを見ながら、複雑な思いでいる。
一美はそんな愛の視線に気付いたのか、一言、声をかけていた。
「スマホ、持ってこようか?」
「あ、えっ?
そ、そうね・・・、多分に望ちゃん、心配してるだろうから、無事なことを伝えたいし・・・」
あまりの突然の事なので、考え事をしていた愛は一美の一言に驚き、戸惑ってしまっていた。
「オッケー」
一美はスマホをつかみ、そのまま愛へと手渡した。
ようやく、無事な藤原さんとご対面w
「あぁ・・・、丸っきしヘンタイでっせ」
ほっとけっ!
この喜びをなんと伝えればいいのだ。
そして、ぼつりと|周囲に気付かれないように、愛は小さな声で言った。
仮に違ってても一言云いたかったのだろう。
「安藤くん、ありがとね」
え?
今、俺の名を呼んだ?
「ひょっとしないでも呼んでましたな」
どういう事?
「はてね?
どないなっとるんやろね?」
いつ?
どこで?
なんで?
気付かれる要素が見当たら~んっ!
「そうなんやがなぁ?」
そして、愛は、いとおしそうにスマホを胸に抱いた。
うぉ、胸元に!
や、ヤバい~っ。
感触が判らないのが残念だぁ~っ!
「あんさん、気付かれとるかも知れへんのに、どこへやらがな・・・」
そうして、夜は更け、病院も消灯時間を1時間くらい過ぎた頃の事。
愛はゆっくりと上体を起こし、スマホのいる棚の方へと目を向けた。
「ねぇ?
安藤くん、いるのでしょ?」
そして、愛は棚に置かれてるスマホに呼びかけた。
うっ・・・。
またしても・・・、これって確実に俺を呼んでるよね?
「はっきりと呼ばれてまんがなw」
え~っ!
嘘だろ?
しばらく様子を見よう、ウン、そうしよう。
今はじっとしてないとだ。
「それとも、寝てるの?」
それでも、尚、呼びかけ続ける愛。
「も、もし、いるのなら・・・、姿を見せて、お願い・・・。
聞こえてる?」
愛はじっと棚をみつめたままである。
「これはいよいよでんがなぁw」
お、お前っ!
確実に楽しんでやがるなっ!
いやいや、絶対にスルーったらスルーっ!
「この期に及んで、何言うてまんがな」
い~んや、これは夢だ!
そうに決まってるっ!
「お願い・・・。
貴方の姿を見せて?
私、貴方と話がしたいの・・・」
愛は泣きそうに顏を伏せる。
「私ね・・・、もうずっと後悔してるの」
え・・・?。
こ、後悔って・・・。
な、なんで・・・藤原さんが・・・?
いや・・・、俺は知ってる。
むしろ、知ってた・・・。
あの日から、もうずっと、彼女は後悔していて、今も苦しんでる。
その様子を、今までもそばで見てきたから、知ってる・・・。
その度に俺は、言葉があれば、伝えれるのに、と、もどかしかった事を・・・。
もう、愛は涙声になる。
「私・・・。
私のせいでゴメンね。
グス・・・。
安藤くん、そんな姿になっちゃって・・・。
だから・・・、もう姿を見せてくれないの?
ヒック・・・。
でも・・・。
それでも・・・。
今までも私の事、守ってくれてたんだよね・・・?」
よりいっそう、声がこわばる愛。
「ね・・・、安藤くん、お願い・・・よ」
最後はもはや声にならない。
「あんさん・・・、彼女、泣いてまっせ・・・」
藤原さん・・・。
それは違うよ、後悔するなんて・・・、そんな・・・。
なのに、俺は・・・。
度胸もない・・・。
こんなのって・・・、ないよ!
もう嫌われたって・・・、いいじゃないかっ!
たとえ、不気味がられても、しょうがないよ、もう・・・。
もう、泣かないでよ、藤原さん。
これは姿をみせなきゃいけない!
それは違うんだと教えてあげたい・・・。
今までもどかしかったこの想いを伝えるなら、今がチャンスなんだっ!
何をしているんだ、俺は・・・。
情けない・・・。
藤原さん・・・。
見てくれ!
今の俺の姿をっ!
そして、オーラ化したスマホが棚の前に現われる。
「安藤くん・・・」
愛は顔を伏せたまま泣いていて気付いてもいなかった。
俺はそれを見ても、まだ躊躇してる。
オーラ化しても尚・・・、それじゃダメなんだ。
スマホはそっと静かに愛の側へと近寄る。
そして、ようやく意を介して、声をかける。
「藤原さん・・・、泣かないで・・・」
愛はその声に顔を上げ、にっこりとスマホに笑いかける。
やっと、姿を現したスマホにホッとしているようだ。
藤原さん、笑ってくれてる。
嬉しそうだ・・・。
良かった・・・、これでいいんだ。
「安藤くん、私、ゴメンね、そして、ありがとう・・・」
「い、いや、いいんだよ、もう、そんな事は、泣かないでよ、ね?」
「でも、安藤くん、その姿で・・・」
愛は微笑みながらも、その瞳から大きな涙がこぼれる。
慌ててスマホは棚から、、フェイスタオルを取り、涙を拭く。
愛はその様子に驚いてスマホを見る。
「安藤くん、いいの?」
愛はさも、申し訳なさそうに言う。
「いいんだよ、色々とさ、紆余曲折あったけれど、今は藤原さんを助けてあげられて、俺は嬉しいんだ。
それだけはホントだよ。
俺はさ、藤原さんが生きててくれて、ホント嬉しい。
だから、俺はキミを助けたことに後悔はしていない。
キミが後悔する事なんて、ないよ」
「そう?
相変らずだね」
「え?」
スマホはその言葉に驚いた。
「優しいよね、安藤くん。
昔も今までも、そうやって守ってくれてたんだよね。
私、今回の事で全て知ったわ」
「そういえば、何故、俺だと?」
「フフフ、だって、私のスマホがそこにあるから」
愛はスマホの胸を見て笑った。
スマホは『私のスマホ』と言われて、ドキっとした。
そこには特別な意味はないのに、だ。
「え?
あ、あぁ、これね・・・。
これで気付いたのか・・・。
で、でも、不気味じゃない?
俺・・・。
キミは俺を・・・、そのまま受け入れてくれるの?」
スマホは愛の急な態度に、ドギマギとして、戸惑いを隠しきれない。
「ううん、不気味だなんて・・・、とんでもないわ。
それはだって、ホント言えば、貴方がそんな姿になって悲しくもあったよ。
だけどさ、その前に安藤くん、前よりも頼もしくなって、私を守ってくれてたじゃない。
むしろ、今の方が、ずっとステキよ」
愛はやっと、胸のつかえが取れたように、スマホを見て大きく微笑んだ。
スマホはその言葉にふっきれたようにスッキリして続ける。
「ありがとう・・・、藤原さん。
俺・・・、こんな姿だけれど、これからキミの側にいて、いいの?」
「うん!
側にいて。
そして、私の事、また守ってくれるんだよね?
今までのように・・・、ううん、これからもずっと・・・」
愛は神に祈るように両手を組み合わせ、真剣な眼差しをスマホに向けた。
「う、うん、守るよ、絶対に!
何があろうとも、ずっと藤原さんの事だけを・・・」
「あらためて、ヨロシクね、安藤くん」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
俺は思い切り、おじぎをして、藤原さんを見た。
今も笑いかけてくれてる。
うっすらと涙を浮かべてるけれど・・・。
藤原さん、優しいな。
そんなスマホとなった俺を受け入れてくれるなんて。
俺はもう絶対に藤原さんを守っていくぞ!
こうしてスマホは新たな決意をした。
そして、次の日である。
「安藤くん、今回はついて来ないでね」
愛は望の視線に注意しながらも手元のスマホに声をかけた。
俺は滝本さんがいるので、無言のままだ。
あれから、一晩経って、今は滝本さんが見舞いに来てくれている。
藤原さんはこれから、精密検査があるのだ。
無論、俺が付いていくと、病院に設置されてる検査機器に影響を及ぼすだろう。
知ってる事なので、今回は大人しくしていようと思ってたのに・・・w
「あんさん、えらい残念そうでんなw」
違うわっ!
藤原さんがいなくて寂しいだけだわっ!
「ほんまでっか?」
く、くどいっ!
こいつは俺と共同意識体で一緒にスマホの中にいるので、俺たちの会話は外に漏れることはない。
何故、一緒になってるのか、こいつはスマホのトリセツだからだ。
それだけで、ただ、厄介なだけだ。
「ひどいでんなぁ」
うるさいっ!
今はこの幸せ感を味わいたいのだ。
なにしろ、昨夜はやっと意思が通じ合えたのだからなw
「へいへい、わては引っ込んでまっせ」
けれどな、逆にその存在感は安心する。
こいつがいなかったら、多分、俺の精神は崩壊してるだろう。
今ではとってもありがたい相棒なのだ。
「へぇ?」
こ、こら、また、人の考えを読みやがってっ!
「まぁまぁw」
そんなわけで今回は俺の出番はない。
藤原さんが戻るまで大人しく待っていよう。
今はトリさんがいるからな。
多少は退屈せずにすむだろうw
「わては暇つぶしの相手でっか?」
いいじゃねぇか、どうせ、一緒の中にいるんだ。
俺との仲だろうw
「あんさん、おもろないでっせ・・・」
や、やかましいわっ!
そうして、スマホは内部でやり取りしてる間に、愛はスマホを棚に静かに置いて、病室をあとに望と共に出ていった。
「大丈夫?」
「うん!
何もされてなかったから、平気よ。
ありがとね、望ちゃん」
「いいのよ、貴女との仲じゃない、遠慮しなくていいのよ」
彼女は私の親友だ。
今もそうして寄り添ってくれる。
とっても、ありがたい存在よ。
「でも、元気過ぎるよね?
何かいいことでもあった?」
「えっ?
いや、こうして望ちゃんが付き添ってくれてるからだよ」
「そう?
それにしても、以前のようには沈み込んでないような?」
「や、やだ、気のせいよ」
私はあわてて否定した。
危ない・・・、まさか、スマホに安藤くんが乗り移ったなんて、言えるわけないわ、うん。
でも、私は知っている・・・。
途端に表情に陰りが出る。
「ほんとに大丈夫?」
「うん、大丈夫よ。
それよりも望ちゃん・・・、お願いがあるんだ」
「ん?
何よ?」
「うん・・・、検査の後で付き合ってほしい場所があるの・・・」
「えっ!?」
そこで驚きながら、愛の顔を覗き込んだ。
愛は震えてはいたが、決意を固めた表情でいた。
それを見た望は気付くように答えた。
「ま、まさか・・・、あそこへ?」
「うん・・・」
しばらくは無言になる。
望はその決意の固さを知り、優しく愛を再び見て、声をかける。
「判った・・・。
つきあうよ」
「ありがと・・・」
愛は涙もこらえて、力なく応えるだけだった。
望は思った。
この子があそこへ・・・、今まで怖くて行こうともしなかったのに・・・、覚悟を決めたのね。
そう、覚悟を決めたのなら、最後まで見守ろう・・・。
こうして、長い検査時間を終えて、愛はある一つの場所へと向かった。




