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「おっ、ジムじゃないか」


 玲たちと別れたジムは、次の行動を起こすまで時間を持て余していたため、少しは人混みがましになった大通りに戻って来ていた。そこで、偶然にもグレイたちと合流するはめになったのだった。


「おいおい、私が珍しく真面目にやってるってのに、随分楽しそうだなあ? カロン」

「ジ、ジムさん、誤解ですって……」


 両手いっぱいに土産袋を抱えるリオードは、ジムに声をかけられて大量の汗と共にそんな返事をするしかできなかった。勿論、リオードが抱えているのはグレイの荷物である。


「調子はどうだ?」

「少なくとも遊び歩いてた目の前のおっさんよりはましだろうな」

「ははっ、手厳しい」


 続いてジムはグレイにも矛先を向けたが、普段通り効果はないようである。


「せっかく小遣いをやったんだから、ジムも少しは遊んだらどうだ?」

「押し付けられたの間違いだろ?」

「とはいいつつちゃんと持ち歩いてるんだから、可愛い所もあるよなあ」


 グレイがにやにやしながらそう言って来たので、腹が立ったジムはグレイの足元をゲシゲシと蹴りつけた。


「観光の途中で偶然、自分がいつも止めてるスリに会ったんですよ。彼、失敗したらその日一日はもうやらないってルールがあるもんだから、今日は珍しくやっていないなーと思って話を聞いてみたんです。そうしたら、まさかその相手がジムさんだったなんて」


 アーシャは二人の様子を見て、何故かにこにこと火に油を注いだ。当然、ジムの蹴りはますます力強くなった。完全に傍観者となってしまったリオードは、もはや苦笑いするしかなかった。


「いでで。じゃあ、今日はもう終わりか?」

「いや、これから放火の現場に行く」

「お、もう目処がたってるのか。なら今夜終わりそうなくらいじゃないか?」

「さあな」


 ジムは眉をひそめてグレイにそう返した。その表情を見てグレイは、なんだか面倒な予感がするんだろうなあ、と察した。それと同時に、自分にそれがまわってこないことを願うのだった。


「なあ、鮨屋の鈴城って家はどこだ?」

「ああ、それなら、この大通りをこっちに進んで、最初の十字路を右に曲がってください。それで、二つ先の角を左に。六、七軒くらい先に進むと、右側に見えてきます」

「了解。カロン、行くぞ」


 ジムはいつもの癖でリオードに呼び掛けた。しかし、あいにくリオードは今日休暇扱いであった。


「あー、ジム。今日はリオードは休みだ。代わりに宿まで荷物持ちをやってくれるってんなら、すぐにでも行かせられるんだが」


 グレイの説明を聞いて、ジムは面倒ごとを二つ天秤にかけた。無論、答えは明白だった。


「そうか。ならいい」


 こうして、リオードはジムにも見捨てられたのだった。闇の中へ飛び込んでいく背中を見送って肩を落とすリオードに、アーシャは同情するように肩に手を置いた。


「ジムさん、ちゃんとたどり着けてるといいんですが」


 アーシャがリオードに同情した時間は瞬きの間だった。独り言のようにつぶやかれたその言葉に反応したのは、グレイだった。


「ああ、それなら心配しなくていい。ジムの記憶力は俺たちの次元を超えてるからな」

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