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魔女のロリポップ  作者: 紺野優月
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第1話 「出会い」

キーンコーン

今日も第一西高校の放課後を告げるチャイムが鳴る。

その中の3-B教室でいつもの会話が繰り広げられていた。

「おーい、チカ!一緒に帰ろうぜ。」

声の主は片桐レイカ。金髪のロングの髪型をし、セーラー服を少しだらしなく着ている女子高生。この声に呼ばれた本人である宮本チカが答える。

「レイカ!いいよー。」

チカは綺麗な黒髪をツインテールのように耳辺りに結んだ髪型で、レイカとは違って制服を正しく着こなしている。

「今日の授業は殆ど寝ていたよ。昨日遅くまでゲームをしちゃっててさぁ。」レイカが言う。

真面目な性格のチカが頬を膨らませるのを見てもうしないよ、と急いで付け加えた。

「もう、レイカ、自分をもっと大切にしてよ。夜更かしなんて乙女の天敵よ。」とチカ。

「へいへーい…。」

「でもそんな生活してるのに凄く綺麗な肌。羨ましいわ。」

チカが少し褒めると、レイカは嬉しくなったようで。

「へっへー!これには秘密が…ってうわぁ!」

ドンッと音と共にレイカがバランスを崩す。どうやら誰かがぶつかってきたらしい。

その正体はクラス随一のいじめっ子、諸橋瑞健だった。ぶつかった事は気にしてない様子で、彼の最近のお気に入りであるいつもいじられている絹谷ラレ君を引っ張って教室の外に行ってしまった。

「ったく、あいつまだやってたのか。いつになったら大人になるんだか。」

「おいチカ、どうしたんだ?今更気にしたってしょうがないぜ。」チカが不安そうに2人が出て行った扉を見ている様子に気付いたレイカが訊く。

「ううん、なんでもない。」

「そうか、じゃあ帰ろうぜ!」

チカはあの2人のことがどうも頭から離れなかった。

場所は変わって学校の中庭。真ん中に小さな噴水があり、その周りを囲うように花壇やベンチが置いてある、いたって小規模な中庭だ。そこに先程の瑞健とラレの姿がある。

花壇のところへ突き飛ばされたラレは怯えた顔で瑞健を見つめる。

「やぁ、ラレ君。今月の友達料がまだだぜ?」

「…ず、瑞健君。ごめん、いま手持ちがないんだ。」

またか、とため息をつきながら瑞健はラレの方へ迫っていく。

「じゃあまた体で払って貰うしかねぇなぁ!?」ラレの胸ぐらを掴み、拳を構え脅す。

「ひぃ…!」ラレは声を上げたが、どうやら瑞健へ向けたものではない様子。それを感じ取った瑞健は自分たちが、いや中庭全体が黒い影に覆われているのに気付いた。雲ではない、明らかに巨大な何かが後ろにいる、彼は直ぐに振り向いた。

そこには大きなカエルのような生き物がいた。

体長50m程の巨体で、色は灰色、瞳孔の見開いた不気味な瞳が2人を見つめていた。

「な、なんだ…!?」

カエルのような生き物は獲物を狙い澄ます構えを取っていた。

直後間髪入れずカエルの口から2人を目掛けて舌が飛び出す。

「に、逃げろ!」

瑞健は横に避けようと走るがラレは腰を抜かして動けずにいた。

「お、おい!」

大きな衝撃音と共に煙が舞う。カエルの舌はラレが居たところを直撃していた。そのまま舌を戻し獲れた獲物を呑み込むカエル。

しかしカエルは首を傾げる。何も飲み込めなかったのだ。

煙が晴れ、そこにはラレを抱えながら避けたらしい瑞健の姿があった。

避けられたことに激昂したカエルはもう一度構えのポーズを取る。

「おい、ラレ!大丈夫か!?」

ラレは気を失っていた。瑞健は目の前に佇む巨大なカエルを見上げる。

「くそ、もう避けれそうにないな…。」

もう既に舌は発射されていた。避ける事は出来ないと悟った瑞健は、ラレを後方に庇いながら目を瞑った。

ドンッという鈍い音、続いて小銃を連射しているような小刻みな音が響く。

相当な痛みを覚悟していた瑞健は自分が何事もない事に気付き、目を開ける。

そこには1人の女の子の姿があった。

オレンジ色で両方の横の髪を少し伸ばしているボブ風の髪型で、オレンジ色のレンズでハーフリムタイプの白いフレームのサングラスを身につけている。服装の上半身は体のラインがはっきり出るメトロイドのパワードスーツのようなものがタンクトップ状で、下はベルトを境にミニスカートになっている。ベルトには拳銃をこさえている。手に持っているのは女の子の身長くらいはある大きな棒付きキャンディー。

女の子は瑞健に達しそうだったカエルの舌を蹴り飛ばし、拳銃で追撃していたらしい。

怯むカエルの前で、女の子はこちらを振り返る。

「間に合ってよかった。2人とも怪我はない?」

「き、君は?というか、この気持ち悪い生き物はなんなんだ?」

「私は通りすがりの魔女よ。名前は言えないけどね。それと、あのカエルは魔の者。私達の魂を狙いにわざわざ魔界から来るのよ。」

今度はカエルの方を見る。瑞健は話について行けてなさそうだった。

「あんなに大きいのは初めてだわ。普段ならもっと小さくて私達の視界に入らないように生活しているはずなのに。」

「でも丁度小さな魔の者ばかりで退屈してたところよ。さあ、かかってらっしゃい!」

魔の者のカエルは雄叫びをあげ、魔女に襲い掛かる。

「2人は早く遠くに逃げて!」魔女は攻撃を受け流しながら瑞健とラレに叫ぶ。

「お、おう!」まだ気を失ってるラレを抱え、走り出す瑞健。

中庭に1人残された魔女は、カエルの注意を引くべく牽制する。

「ハァ!」

一回のジャンプでカエルの上空まで上がった魔女は、棒付きキャンディー型の杖を構える。

そして…殴る。

ボゴォという音を立て、カエルの頭部を半分ほどえぐった。そして拳銃で傷口に追撃を叩き込む。カエルは苦しそうに暴れ出す。

舌の攻撃…!魔女は避けて舌の上へ着地、根本まで舌の上を走り舌を切り落とした。カエルは呻き声を上げる。

「ふふ、だいぶ弱ってきたんじゃない?」

とどめいくよー、と意気揚々に宣言し、手にしていた杖の先のキャンディ部分を変形させる。

「そーれ!槍型!」


蜜柑超突オレンジファランクス


槍型に変化した武器で乱れ突きを放つ。カエルの体にはあちこち穴が空き、黒い霧が溢れ出す。それが10秒ほど続いた後、カエルはそのまま消滅した。

「ふぅ、一丁上がりね。」

魔女は服についた砂を払いながら胸元にある飴玉の形のバッヂを押す。直後魔女は光に包まれ髪の色はオレンジから艶のある黒に、服装はこの学校の女子の制服に変わった。魔女の正体はチカであった。

「急いでレイカのところに戻らないと。」

中庭の途中の道に置いてきた通学カバンを拾いながら、足早にレイカのところへ向かう。

途中、逃げて隠れていたらしい瑞健とラレに出会った。

「あれ、2人とも、どうしたのこんなところで。」チカが聞く。

「お前は確か同じクラスの宮本か。お前も逃げた方がいい、外には見たこともない巨大なカエルがいるぞ。」

「それなら大丈夫だよ。わた…オレンジ色の女の子がもう斃したみたい。」

一瞬私と言い掛けたチカはなんとか誤魔化した。斃したという話を聞いた瑞健はとても安心しているようだった。

「そうか、それは良かった…。俺はラレを保健室へ連れて行くよ。じゃあなチカ。気をつけて帰れよ。」

よいしょとまだ気を失っているラレを抱え、保健室へ向かう瑞健。チカはクスっと笑って言った。

「いつもあんな事してるのに随分大事そうだね。」

「うるせぇ、今月は未払いだけど一応友達だからな。」

瑞健はバツが悪そうに早歩きで去っていった。

レイカは玄関で待っててくれていた。チカに気付くと、大きな声で彼女を呼ぶ。

「おーい!チカ!遅かったな、忘れ物は見つかったか?」

「え?…あぁ、見つかったよ!」

チカはレイカに忘れ物をした!と嘘を吐いてラレたちを助けにいったことを思い出した。

少し時間を遡ってみよう。瑞健とラレがカエルと遭遇した時、チカとレイカは玄関に向かって校舎内を歩いていた。

「そういえばまだ私のお肌の秘密について話してなかったな!」とレイカ。

「ぜひ!」チカは興味津々に訊こうとしたが、背筋に違和感を感じた。魔の者の気配だ。しかもとても大きい。

魔の者が邪な感情に敏感なことを知っていたチカは、直ぐに瑞健とラレが襲われていると気付いた。

「ごめん!ちょっと忘れ物!直ぐ戻るよー!」そう言いながら走ろうとするチカ。

「マジか、付いていくぜ?」とレイカはチカを追いかけようとする。

「ううん、大丈夫!先に玄関まで行ってて!」

なんとかレイカと別れたチカは、人通りの少ない場所に行き、誰にも見られていないことを確認しながらポケットからオレンジ色のロリポップを取り出した。

「今日もよろしくね。」

チカが呟きながらロリポップを舐めると、忽ち全身が光に包まれ件の魔女の姿になった。

そのまま跳び出して瑞健とラレを助け出す。

そして今に至る。

チカとレイカは靴を履き替え、校門を出ていた。

「よし、やっとこのお肌の秘密を言えるな!」レイカは待ち望んだかのように意気揚々と喋り出す。

しかしそれも拒まれてしまう。

いきなり2人の前に1人の女の子が落ちてきた、いや、降りてきた。身長は2人よりも低めで、玲華よりも色が薄くサラサラした金髪で前髪はぱっつん、両方の耳の後ろに一つずつ西洋風のお団子をしている。服装は白いバニースーツのようなものに、茶色いコートを前を開いて着ている。腰にはウィンチェスターショットガンと似た形状の銃が二丁あり、とてもこの国、時代の人間とは思えなかった。

彼女はチカの方を睨みつけて言った。

「初めまして。私は貴女と同じ魔女のルナ。第一西高校の魔女チカ、貴女とバディを組むことになりました。」

よろしく、と手を差し出すルナ。

チカは唐突に何が起こったのかと理解しかねて、当惑していた。

私の他にも魔女?

なぜバディを?

と様々な疑問が頭を流れたがどれを訊こうかなんて考えられる程余裕はなかった。

それよりも驚いているのは、隣にいるレイカである。魔女が存在し、友人がその魔女だった、といきなり告げられてどういう顔をしていれば良いのか分からなくなっている。

「隣にいる御学友は先に帰ってください。チカと話すことがあります。」とルナは言う。

パニックで判断力が落ちていたレイカはすんなりその言葉を受け入れ、先に帰っていった。

「さてと、ここでは何ですし貴女の家を案内してください。お話はそこで。」

騒ついている周りの人達を見渡しながらチカに提案する。

「分かった。」

魔女、という存在について何も知らなかったことに気付いたチカは自分について知るため、家を案内することにした。

名前は自分の好きなように読んでください。挿絵も今後追加する予定です。

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