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世界は数千億の命上に立っている

作者: ぽてたん

いつからだろう……


なんとなく意識がある……


自分のやるべき事、やらなければならない事が頭の中で、空のグラスにビールが注がれるように流れ込んできた。


「そうだ! 俺はあの1人しか到達出来ない玉座を目指すんだ!」


そう叫びながら意識を覚醒させる。


周りの奴らの意識もはっきりしてきたようだ。


まずは、頭に流れ込んできた情報を整理しよう。


一番大切な競争まで74日間もあるようだが、その間に準備を進める事が大切だ。


今、ここにいる者たちが一斉に競争をするメンバーのようだ。どこくらいいるのか想像も付かないほどいる。競争のコースはまずは断崖絶壁を登ることから始まり、そこでふるい落とされる者もいる。


その後の競争では水中を泳いでいかないと行くことが出来ない場所もあり、一番の難関はすごい勢いで押し流される濁流を意識を保ちながら次の勝負に勝つ為の準備をする。


その後も険しい真っ暗で起伏のあるコースを攻略して、最後に玉座に到達することがやるべき事だ。


困難に打ち勝つ気持ちと、最後までたどり着くための、屈強な肉体がないと途中で脱落してしまう。脱落すると体は自然と消滅してしまい、消滅してしまえば無に戻る。そんなのは絶対に嫌だ!


それらが今の時点で分かっていることだ。

それ以外の情報が欲しいが、周りの奴も知らないようだ。意識を覚醒したら、それらの情報が同じように流れて来たのだろう。


誰も抜け駆け出来ずに、周りの皆が、同じスタートラインにいることだけは救いだな。


何らか情報がくると全員に同じように伝わるらしい。使命感は高いが、その使命が何かは詳しくわからないのがもどかしい。玉座に触れれば使命感がわかるのだろうか?


とにかく1人しか勝つことの出来ない勝負だ。やることをやって駄目なら仕方のないことだが、何もせずに負けることは許されない。


今は1番になるためのに何をすれば良いかを考え行動しよう。

その為には体力作りと体作りが大切だ。


毎日、体をいじめ抜いて鍛える事で、屈強な体を作りだそう。


泳ぐ練習をする場所は無いようなので、泳ぎのシミュレーションを頭で描く。何故か泳ぎ方は自然と頭の中に叩き込まれていた。

70日間余りの長い間をに、ありとあらゆる努力をした今では、トップでゴールする未来しか見えてこない。


こうしている間にも、定期的に他のグループの競争が始まっているようだ。地面がグラグラと揺れる度にスタートしているようだ。時々体がひっくり返る程の衝撃や遠くの方で何か叫んでいるような音が聞こえる。



一日に数度揺れる日もある。玉座は1つだけだと認識しているが、何度も競争があるということは、もしかすると誰もまだ到達する事が出来ないとんでもなく難しいコースなんだろうか?



いや、それでもやるしかないんだ!


どこからか声が聞こえた

「もうすぐ俺たちの出番だ!」


気が緩んだつもりは無いが、その声を合図に気を引き締めなおした。



さぁ! いよいよスタートの時だ



「行くぞ!」

誰かが叫んだ


「おぉぉぉ!!」

皆一斉に声を上げながらスタートした。


まずは垂直な壁を登っていかなければいけない、ここはまだ振るい落としの段階だ。急がなくていい、確実に登っていこう。しかし、この壁を登って目的地に移動するのには14日間のタイムリミットがあるので、その事は頭に入れ、しっかり気を引き締めていこう。


登りきった場所からが本当の勝負なので、スタミナをきちんと残すペース配分は大事だ。何度も何度もシミュレーションした通りに行動しよう。


着実に壁を登る。周りでは力尽きて途中で消えていく奴がいる。絶対にあのようにはなるまいと、気持ちを振るい立たせる。一歩一歩を着実に登る。ここは決して1番で行く必要はないと思いつつも、次のスタート場所が狭い場所であれば、早く登ったが良いのかとも考える。だが、そこからの勝負が厳しい戦いになりそうなので、俺は体力をできるだけ温存する方法を取った。

着いてすぐに勝負が始まれば体力がなければ脱落してしまう。


ようやく崖のてっぺんが見えてきた。ここで気を緩めて落ちたら元も子もないない。落ち着け落ち着けと思いながら登る。


「ふぅ着いた」


よし、第一関門の目的地だ。ここまででどのくらいの者が脱落したのだろうか?周りが多すぎて想像が付かない。ただ、ここに立っているものは全員がゴールを目指している者ばかりだ。

こから最後の戦いが始まる。周りにいるものは仲間ではない。全てがライバルだ。絶対に負けられない。



スタートの合図がいつあるのかは決まっていない。夜のこともあるし、昼のこともあるので、緊張感を持続させなくてはいけない。勝負は突然始まる。


グラグラと地面がゆれる。これはスタートの合図なのか?スタートに失敗したらそれで終わりだというのは分かっている。どうするか?

揺れは更に激しくなる。


「よし、行こう!」


おれはとにかく目の前の水の中へ飛び込みひたすら泳ぐ。透明ではない濁った水の為、前に進んでいるのか心配になってしまう。


水の中も激しく揺れる上下左右がわからなくなってきた。


ある程度進むとなぜか前に進むことが出来ない。


なぜだ?


コースを間違ったのか?


せっかくここまで来たのに、これで終わりなのか?


水が激しく揺れるそして水がだんだん熱くなってきた。

どうしたんだ?


水の揺れはどんどん激しくなり、完全に自分の位置を見失ってしまっていた。


もみくちゃにされながらどうなるかの不安を抱え、なんとか意識を保っていた。


突然、横から猛烈な水流が流れて来た。前にあった壁が無くなっている。もう泳ぐというより流されていると言ったほうが早いかもしれない。もっと鍛えていれば良かったのか?いやこの激流は鍛えたところでどうにもならない。


周りもみな同じ状況のようだ。ルートではこの激流で押し出された先からが本当の勝負だな。真っ暗で起伏の激しいコースが待っている。全く何も見えないので、香りをたよりにゴールへ向かうと言うことだった。そこからが本当の勝負だ!




とんでもない激流と振動にもみくちゃにされながら出口に向かって押し流された。





急に広がる明るい視界


「えっ!」


眩しい


何故だ?


押し流された後は真っ暗なトンネルを通るのでは無かったのか?





だんだん意識が遠くなる……


最後に見た光景で判ったことは……













こいつはチェリーボーイだったんだ……



無念……















良く数億の中の1つが勝って出来たのが君だよと言われるが、もしかしたら実際には数千億の中の一つかもしれない。

せっかく勝ち抜いた命だ大切にしよう。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでて、なんだ…これ…ってなって 読み終わった後にふふって笑いが出ました!笑 主人公?の立場で想像すると悲しい物語となるのも…笑 [一言] 儚き人生だった…〜fin〜
[良い点] シャケが産卵のために帰るには数年単位だし、人間の受精には長すぎるしと、いろいろと推測しながら読み進めました。 最後のオチに、なんともいえない笑いがこみ上げてきました。がんばったのにね。がん…
2020/03/28 12:50 退会済み
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