将軍
お化け村の近くに珍妙な人物が立っていた、そのライオンのような獣人は、肩が異様に盛り上がっており、見た人は、関わらない方がいいと思うかもしれない。
その名は、肩パット将軍。ヤミノオウの配下にして、四天王の一人。
肩パットをいくつも重ねてるおかしな獣人でもある。
「…なんだあいつは?」
あの村に、妙に明るいお化けがいるのを感じて来てみた、なんだあの明るいお化けは?
ヘラヘラ笑いながら、配下の者を投げておる。戸惑うばかりの肩パット将軍は、がくりとくる。
この肩パット将軍の肩パットが、思わず一つ落ちそうになったぞ。
ライオンの獣人である我の力を、見せてくれようぞ。
強い奴なら、歓迎なのだ。武人とは、得てしてそういうものかもしれない。
しかし油断は出来ない。ヤミノモノには、明るい光は、マジでヤバい。こちらを弱らせるのだ。
あのお方の邪魔物は、排除せねばなるまい。
肩パット将軍が、無造作に近づくと、もう一人の粗野なお化けが、立ち塞がった。
自信満々な所を見ると、あの明るいお化けの影響を受けて、暗さがない。
「このアバレお化けが、相手だ!」
「アバレお化けだと?ふざけておるのか」
生物の負の感情こそが、我々、ヤミノモノにとっての栄養なのに。
こいつらは、明るくてやりづらいかもしれない。
「お前、つよそーだな!俺様のアバレパンチを食らえ!」
素早い拳の乱れ打ちが、肩パット将軍を狙うのを、しかし、我の肩パットで受け流す!
「何だ、その肩パットは!?」
驚いてるアバレお化けを見てほくそ笑む。元カノ達が、肩パット将軍にくれた肩パットを、使いこなせていることに満足している。
「肩パットクラッチ!」
両肩のパットで、ガッチリつかむと、叩きつける!
「うおお!?」
「たわいのないやつめ……む?あの明るいお化けがいない!?」
肩パット将軍は、気づくのが遅かった。
「あひゃひゃ!?」
巧みに視角を突いたバケノジョーが、肩パット将軍の脇腹をくすぐっってきたのだ!
そこは弱い。マジでヤバい!やめちくれや!
身悶えながら我慢する。肩パット将軍は、ふざけてるのかと睨みつける。この天下無双の肩パット将軍をくすぐるなどと!
「今だ、アバレお化け!」
「おうよ、バケノ!あばれ山!」
アバレお化けが、我をつかんで、空中で投げて、地面に叩きつける。
「!ぐはぁ!」
くすぐられて、力が抜けたとこを、狙ってきたので堪らない。
甘く見ていたか。起き上がろうにも、追撃が来るのを、肩パットで受け流す!
「いぇ~い!」
「ふ、ふん、貴様は、この俺様がこらしめるのだからな」
「………」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「どらくしょーバケ」
「我の上で、はしゃぐなー!」
「わはは!」
「何だこいつは、もう起きたのか!」
驚くアバレお化けたちを、気合いで吹き飛ばす。
「ふざけおって!我の肩パットを、外す時が、来たようだな!」
いくつもの肩パットが、地面に落ちて身軽になり、肩パットが一つに繋がり武器になる。そして、一気に踏み込み間合いをつめる。
「いてて!」
「うわはは、止めてくれー!」
お化けたちに、でこぴんをかまして、こっそり成り行きを見守っていたお化けたちを、苦しめる。
そのでこぴんの風圧だけで、ダメージを与えている凄さだが、でこぴんはないだろうと、お化けたちは思う。
「こいつがなんだか知らないが、バケノジョーだけにやらせるな!」
「わしたちもやるぞ!フガフガ」
「長老、入れ歯が外れてますよ!」
お化けたちも、バケノジョーたちを手助けしようと、あの手この手で止めようとする。
「ふはは!我は、このデコピンでこの地位まで成り上がったのだ!」
この一呼吸の内に、十発当てるデコピンに、みんな怯んで逃げたくなる。
この恐怖こそが、あの方の糧になるのだと。
そう思いつつ、次のターゲットを探す。
「このまま、村人全てに、デコピンをして、額を赤くしてくれるわ! 」
「きゃあ!」
「バケミ!」
「バケノジョーの妹か?そいつに、鬼のように痛いデコピンを当てて、吹き飛ばす!」
「バケミに、何をするんだ!」
「なにっ!?」
バケノジョーの体が、ピカピカ輝いて光を放つ!
「あいつは……まさか!」
ただの明るいお化けではなかったのか!?あの光は、あの忌まわしい女の……。
光に包まれて、肩パット将軍は吹き飛ばされた……。
……………気づけば、村からかなり離れた草原に寝そべっていた。
この肩パット将軍の肩パットをぼろぼろにするとは………いや、それよりも、あの光の力はまさか、あの光の女神の…報告せねばなるまい。
後、肩パットを壊して、元カノ達に謝らなくては…はは。
そう思いつつ、久々の敗北を愉快とかんじているのである。
強き者が、久方ぶりに現れたからである。
つづく