お化け村にて
お化け界は、お化けたちのたちの暮らす世界。
みんな、暗くじめじめしてましたが、その中でも、すこぶる明るいお化けが一人いました。
ヒトダマのぼよよ~んと言う声に、バケノジョーは、目を覚ます。
窓の外を見れば、黄昏時の良い空だ。ウキウキして来そうだ。
バケノジョーは、お化けにしては明るくて、愉快なお化け。
「お兄ちゃん、起きたの~?」
「バケミ、うらめしや~」
「うらめしや~」
妹のバケミも、うきうきしながら挨拶してきたので、バケノジョーも、うきうき気分だ。
大好物な、フレンチトーストを、かじりつつ、コーヒ―の匂いを嗅ぐ。
「んん、良い香りバケ。腕を上げたなバケミ」
「そりゃ、どうも。でも、お兄ちゃん。
家の前で、リンボーダンスするのを止めてよね。近所から、苦情が来たわよ」
「まあ、それほどでも」
「褒めてないって!」
いつもの平和なやり取り。明日も、同じこと言ってると思っていた。きっとね。
食事の後、愉快に弾けて、踊っていると、夜のとばりが落ちてきたので、出かける仕度をする。
お化けの仕事は、これからなのだ。
「行ってくるバケ」
「は~い、気をつけてね。お兄ちゃんすぐ、見付かっちゃうから。
「まか、それほどでも」
ふわふわ浮いて、夜空を漂うバケノジョーの仕事は、夜更かしする子供を脅かして、夜更かしさせないこと。
「やあ、うらめしや~」
村のお化けに挨拶するもシカトされる。ドンマイおいら。
バケノジョーの明るさが、眩しくて苦手らしいのだ。
自分たちはじめじめしてるお化けが多いから、羨望の目で見てたりします。
しばらく行くと、見えてくるお化け空間。
ただ、不気味な扉があるだけ。ここを通って、人間界に行くのだ。
「ヨォ、バケノ。相変わらず無駄に明るいねぇ」
あ、あばれお化けだ。バケノジョーと同じく、つまはじきものさ、いぇ~ いとハイタッチ。
アバレお化けは、一際大きいこいつは、村で大暴れするから、煙たがられてるのだ。
「よぉ、おいらと暴れないかい?」
「ウケるバケ。おいらは、これから街にいくバケ」
「ははは、まだそんなこと言ってんのか?
ガキを、びっくりさせて寝かしつけて何になる?
強い奴と、バトルして、己を磨こうぜ!」
バケケ。わ―い、めんどくさい奴。
そんな訳で、ドロンしまーす。
バケノジョーは、仕事に向かいます。
バケノジョーの担当村は、シャインという街で、商人やら、旅芸人やら、ひっきりなしに立ち寄る、おいらみたいに、わちゃわちゃしてる場所バケ。
レンガ造りの家々を巡り、鼻息の荒いブータくんや、フラフープばかり回しているとわちゃんを、びっくりさせて、寝かしつけて来た後、屋根の上で休憩。
バケケ、新月が綺麗だけど、月明かりより、おいらの方が明るいなんてね、てへ、ぺろー。
バケノジョーは、どんな時も前向きなのだ。
「おい、そこのお化け!」
はいはい、みんなのバケノジョ~だよ。
目の前のマンションの二回の窓から、顔を覗かせているのは、カラカラくんのお父さん。
いつもは、心が乾いているとか言って、酒場に入り浸っているサボテンの亜人さんなのに、おいらにプンスカしているよ。
「へい、おまち!」
「あんたのせいで、うちの子が、寝つかないんだよ!」
うん、よく言われる。おいら、明るいから、子供も楽しくなっちゃって、寝つかないバケ。
「ドンマイ、おじさん」
「おう…じゃなくて!あんたに苦情が沢山かるんだよ!」
「そりゃ、まいった、まいった!」
あんたが来ると、街はパーティーみたいに明るくなるって。
おいら、この仕事むいてないのかな。
おじさんに、ペコペコ謝って、ドロンしまーす。カリカリしてないで、カルシウム取るバケ。みんなで、牛乳飲むバケ!
そんなこと言えば、怒鳴り付けられるので、心の声です。
それにしても、夜更かししてる子供が、増えたと思うバケノジョー。
そうなると、大人のストレスがたまって、奴等が増えると思うのだ。
ーつづくー