アクアデルのために.7
バトルものになってしまっているなー!
イカ貴族であるクラーケインは、いぶかしむ。
イカ貴族なのに。貴族であればあるほど、強いはずなのに。
アカシアン=タコニストなる大きいだけの奴に押されていることに。
ガバラン帝国で名を馳せ、でかいから観劇や音楽鑑賞は、建物の外からがまんするという小さき者への配慮。望遠鏡で覗く虚しさ。
そして、鬱憤を晴らすかのような戦闘訓練と、最前線での活躍。
なのに、今は、レジスタンスなどという下民共に押されているだとと、内心舌打ちをする。
「なにをだ!?」
「!?」
足と足のぶつけ合いの途中、クラーケインは尋ねた。
下民の大ダコは、なにをそこまで、必死になっているのかと。
「それは、簡単ダコ!この海底にはない、制服コスプレのお店を作ってもらうことタコ!」
あまりに自信満々に恥ずかしいことを口走るものだから、クラーケインはポカンとしてしまう。
こいつはなにを叫んでいるのだろうかと。恥ずかしくないのか?
しかし、それがいけなかった。背後から迫ったうつぼくんと、うつぼちゃんに、攻撃される。
「「うつぼうねり!」」
二人の声がハモり、うつぼたちのうねりながらのアタックに撃沈する。
信じられなかった。貴族であるじぶんが負けたのだ。こんな裏切り者どもに!
「ふん。貴族だからって、下民をバカにしやがって!きゃはははは!」
「妹よ。戦士に対して無礼だぞ」
うつぼくんが、嗜めるのを聞きながら、意識は暗闇に落ちていく。
あのうつぼちゃんの笑い声は、本当に下品でうるさいなと思いながら。
「では王子。我々は地下牢へ向かうペン」
「ああ、気をつけてくれ」
「王子こそペン」
ペンギン兵を率いて、地下牢に向かうのを見送りながら、ミカちゃんはもっと、ペンギンを見ていたかったなとこっそり思っていた。動きがかわいいんだもん。
「さ、我々も行こうか」
ルイカスたちを先頭に、王宮の奥へ進んで行くと、アナゴイとオロロンが先行する。
「ごめんね、ミカちゃん」
「?なんで謝るんですか?」
ハーベストはなぜか、ミカちゃんに頭を下げる。ルイカスもだ。
「なんだかんだで、巻き込んでしまった」
「ほんとにね。ごめんで済まないけれど……」
「いやいや、今更ですよー!それに、海が汚れたら、海水浴も楽しめないし」
「ミカちゃん、そこー!?」
ハーベストは、目を丸くした後で、くすくす笑う。
それに、ハコちゃんだって助けたいんだからと。
つむじは、新鮮なお魚料理を食べられなくなったら嫌だなと思う。
イブキは、自分のファンである人魚が悲しむのは嫌だし、バケノジョーは、楽しければそれでいい……なんてことは、黙っていた。
ともしびちゃんは、ヤミノオウを封印する使命が、遂行出来ればそれでいいのである。綺麗事は言わない。
「待てい!」
「ここから先へは……ぐはっ!」
先行していたオロロンの槍と、アナゴイのダガーが、門番を仕留める。
ついに、玉座の間。豪華な扉の向こうから、重圧を感じるが、アナゴイは首をかしげる。
「……どうした、アナゴイ?」
「いや、なんでもない」
二人は、みんなが来るのを待っていると、すぐにやってくる。
「ご苦労様だなー!おいらが褒めてやるぜ!」
「カイワ、相変わらず偉そうバケ」
「オメーだって、無駄に明るいだろうが!恥女でもねーくせに!」
恥女は、関係ないだろうとみんなは思いますが、テンションが低いよりはいいのかなと思います。
「この向こうにゾウパニオンがいるの?」
新たな四天王に、ミカちゃんは武者震いします。
でも、みんながいるから頑張れると、言い聞かせます。
「よし、行くぞ」
ルイカスの合図に、オロロンとアナゴイは、両側から扉を開けた。
重々しい音と共に開く扉。その向こうから飛び出して来たのは、ガバラン帝国の兵士たちを、みんなで蹴散らす。
「やるわね!」
「あなたこそ!」
指揮官らしき女兵士の魔法をともしびちゃんのバリアで防ぐ。
あの女兵士、スタイルいいなと関係ないことを考えてしまう。
「光の巫女。私のスタイルの良さが気になるようね」
「どうしてそれを!?」
「ミカちゃん、そんなこと気にしてたんですか?」
「あ、あはは」
「ふふ。いいわよ?私は、帝国産の補整下着を身につけているから、スタイルが……きゃあ!」
なにを話しているのかと、ハーベストがムチでしばく。
「はいはい。みんな先へ進むわよ」
ハーベストに促されて泳いでいくみんなだった。
つづく