森の主(加筆してます)
つむじを探して、道をさ迷うことしばし、森は薄暗くて、こんなとこにも、エルフが住んでるって、冒険者さんに聞いたことがある。それよりも、森に潜むヤミノモノが多い。
葉っぱで、草笛を作って吹きながら、うろうろするヤミノモノや、ワオワオ!叫んでるワオンキツネザルの口を塞いで、静かにさせるサイレントヤミがいる。
特に厄介なのは、ヒトリキャンプヤミだ。
静かに過ごす彼等の前で、うるさい音をたてると、執拗に一人キャンプの魅力を語られ、屈したものは、毎日のように一人キャンプをさせられると言う。
森に住む者たちにとっての脅威となるのだ。
他にも、川遊びしているカワアソビヤミ何てのもいる。
ほっとけばいいと思うかもしれないけど、私たちを見つけると、襲いかかって来るのだ。
これは、逃げるのは諦めて、こらしめて、光の魔力を、光のローブに貯めるのだ。見た目パーカーだから、光の巫女と思われるのだろうか。
「ずいぶん深くまで来たわね」
「うん。でも、つむじはどこかなー?」
薄暗いのは嫌だけど、ともしびちゃんのおかげで、足元は明るい。ランプ代わりになってる。
その明るさはなんなのだろうか?
疑問に思ったので、聞こうとしたその時。
「誰じゃ!?またセールスか!」
いきなりの森に響き渡るこの大きな声は何か!?
「うるせ」
ともしびちゃんが、煩そうに呟く。
学び舎の遠吠え先生が、よく遠吠えでうるさかったのを、思い出して、ミカちゃんは顔をしかめる。
「ヤミノモノか!?また、ヤミノモノが荒らしに来とるのか?」
「うわぁ!でっかい木!絵本で見た世界樹見たい!」
「無駄に、でかいだけよ」
でっかい目が、ギロリと私を睨む。ともしびちゃんの言葉に怒ったのだろうか?
「何だ、小娘がこんなとこで、何をしておる?ファンか?わしのファンなのか!?」
「ええ~?なに、この木?」
「何よ!相変わらずの怒りんぼさんねー!」
「この丸っこいのぉ!?お主、どもしびちゃんか?」
「ともしびちゃんよ!フン!覚えていたのね!
いつまでも、迷いの森でいることに、迷うことに迷っている、迷いの森の主さん!」
早く、つむじを探したいんだけど、ギャンギャンもめ出したので、ミカちゃんは肩を竦めるしかない。
森の動物たちも、怯えて見ている。
「フン、するってぇーとなにかい?そこの女の子が、光の巫女かい?」
「なに、その口調?日ノ本の國の言葉?」
「え?私のこと知ってるの?もしかして……ファン?」
「ファンファン、鳴いている弱い犬か!
違うわ、代々、光りの巫女は、この森を抜けて、ヤミノオウを封印しに旅立ったのじゃ」
「そうだったんだ。じゃあ、私のママのことも知ってるのね」
「ああ、あの明るい女か。知っとるよ、もちろん」
「…じゃあ、あのう、私の友達知りませんか?」
ミカちゃんは、つむじのことを説明すると、森の主は、少し渋い表情をする。
「そいつな。わしの森の木の実や、野菜をどれだけ食べるのじゃ」
森の西方で、ムシャムシャしてるらしい。食いしん坊とくれは、つむじかな。
礼を言って、先へ進もうとすると、止められた。
「待て、行く前に、わしの悩みを聞いてくれんかのぅ?」
「え?」
「わしは、迷いの森。このまま人々を迷わすことに、迷っていいのかの?」
「何それ?分かんなーいよ!私の言えることはあるかな?」
自分より年下に相談するの?と、内心では思いつつも、ミカちゃんは、うんうん唸って考えた後で言った。
「大したこと言えないけど、大事なことなら、迷うことに、迷えばいいんじゃないかな」
「そうよ、迷うことにいつまでも迷っていたら、時間がもったいないわ
よ」
ミカちゃんは、ともしびちゃんの意見に頷くと、手を振ってつむじの元へ。
「…フム、そうかもしれんの。あ、そっちにはダークエルフが…ていないか」
森の主が何か言っていたけれど、もごもごしてたから、二人には言葉が、届かなかった。
森の西方には、沢山の木の実やフルーツがなっていて、確かにつむじなら喜びそうだ。
「にゃにゃにゃ!」
「つむじの声だわ!早く助けないと!」
草木をかき分けて行くと、つむじが、ヤミノモノと日焼けサロン男たちに囲まれていた。あ、ダークエルフか。訂正する。
「…一緒に、食べますか?」
「食べないわ!」
のほほんとしたつむじに、日焼けサロン男たちのペースが狂ってる。
なんにしても無事で良かったと思うミカちゃんたちだった。
―つづく―




