光の巫女
迷いの森。それは、人生に迷っている人々を惑わす森で、エルフやダークエルフが住んでいます。
他には、オカサーファーと言う森の精霊達が、夏に川で、遊び始めると、川開きになるそうだ。
「はぁ。何でこんなことになっちゃったのかなぁ」
鬱蒼と繁る森の中を、一人の女の子が、木々をかき分け歩く。
ショートカットの髪の毛に、日ノ本の国特有の黒色の髪。上等な布で作られたパーカー。そして、旅人の杖。
ハシマ=ミカは、ため息一つ。
辺りは、薄暗い森の中で、フクロウが、ホウホウ鳴いているの。
「か弱い女の子に、こんなとこいかせるなんて」
プンプンと文句を言う女の子は、とても、光り巫女とは思われないだろう。
一週間前の朝のこと、朝寝坊して、学校に行く準備していたら、父、ガイウスがやって来て、しばらく学校に行かなくていいと言うので、ミカちゃんは驚いてしまう。
ガイウスは、ダンベルで筋トレしながら寂しそうに語る。
ムキムキなので、司祭と言うよりは、神官騎士の方がまだ、納得が行く風貌の彼は、悲しそうだ。
「君は、光の巫女だ!封印が解けそうなヤミノモノの王、ヤミノオウを封じて来たまえ」
いきなりだろう、おい!と、内心ツッコミを入れたくなる。昔読んだ、童話の始まり方みたい。
国王のたった一言で、人生が変わるなんて、凄い物語だと思ったものだり
「ええ!?知らないよ私、そんなのパパが行けばいいのよ!」
娘より明らかに強そうな父より、花のJkにもうすぐなる私が行くなんてと、呆れる。無茶だと、頬を膨らませる。
「パピーと、呼んでくれと言ってるだろう。それにパピーは、ママとイチャイチャ……おほん。
パピーは、神殿のお仕事で忙しいのだよ」
「今、イチャイチャって言ったろ?」
「言ってない、言ってない」
そう言いながらパパは、光輝く玉を渡してくる。目を反らしながら。
「これって、光の神器?じゃない」
「それを、スーパーボールみたいに跳ねさせない!」
「こんなおもちゃで、何をしろと?」
明らかに、期限が悪い。
「何よ、この女なめてんのか!」
「わわっ!?玉ころが、しゃへった!」
「玉ころじゃないわ!光の神器のともしびちゃんよ!」
ともしびちゃんは、ヤミノオウが復活しそうになると、目を覚ますそうだ。かわいいオメメと口がついてる。悪口ばかりしゃべりそうな口が。睨み合う二人。
「あんたが、トンチキパパの娘?あんたのパパには、苦労させられたわ~」
どうでもいいけど、この子口わるいなぁ。このご時世に、大丈夫かしら?
そう思うものの、それを口に出せば、けんかになりそうなので、黙っている。
「やあ、ともしびちゃん。パピーのこと覚えてくれてたかな?」
「…相変わらず、ノーテンキーな奴ね!」
「はは、よく言われるよ」
「ほめてないんだけど…」
「まあ、光の神殿の神官は、明るくなきゃな、ははは!
ま、ともかく今回は、うちの娘をよろしく!」
「………」
しょうがないと言った感じで、ため息を吐く。
なんで、意思があるのだろうと言う疑問は黙ってる。
「ま、まずはこの国の人々から、光を分けてもらってからね」
ともしびちゃんは、人々の明るさを、ちょっぴり食べて元気になるのだ。
今日は、学校に行かずに、旅の準備だ。トボトボと畦道を歩きながら、花のJkライフがぁと、内心嘆く。
村の雑貨屋で、道具を揃えてると、ふと気づいた!
「バナナって、おやつかしら?」
「遠足気分じゃ、ねーぞ、こら!私の分のバナナもくれよ、こら!」
口が悪いなぁ。誰に、似たのかしら?パパかな?
帰り際、何時も、みんなと遊ぶ公園に、つむじがいた。
猫族の少年で、よく食べる。灰色の猫だ。
ユウくんも、ベンチで、読書していた。幼馴染みで、ミカちゃんの片思いの相手。
声をかけようとしたけど、何て言えばいいのか。
ミカちゃん自身、まだ、実感湧かないし。しばらく、遠くからユウくんのこと見てた……。
私が旅に出てる間に彼女が出来たらどうしようと。
帰る途中、ちょっと遠回り。村の景色を、焼きつけておきたいから。
「相変わらず、退屈な村ねー」
「この村のこと、よく知ってるの?」
「まあね」
退屈そうに、あくびをすると、雲一つない空を見上げる。
ヤミノオウが、復活しようとする度に、ともしびちゃんは、光の巫女と旅をして、ヤミノオウを封印したと言う。
「…ミカちゃん!」
「ハコちゃん!」
小走りで駆けて来たハコちゃんは、雨女なので、一緒に雨雲も追いかけている。
ハコちゃんの傘に、一緒に入りながら、送ってもらう。
「…聞いたよ」
「流石、村ね。噂の広まり、はやっ!」
わざと、明るく振る舞って、寂しさを隠す。
「……光の巫女だもんね」
「そうみたい」
「気をつけてね?」
「うん!帰って来る頃には、ハコちゃんに彼氏が出来てるかもね?」
「もう、やだ!」
軽く、肩を叩かれる。ハコちゃんの好きな人って、誰なんだろ?
憧れのシチュエーションとかするけど、特定の人のことは、恥ずかしがって、教えてくれないんたよな。
「じゃあね」
「うん、またね。また会おうね、ミカちゃん」
家の前に着いたので、お互いハグをして笑顔で、別れる。
ハコちゃんと共に、雨雲も去って行く。寂しいな。しばらく会えないのかー。
「別れはすんだか?」
バイバイと手を振るミカちゃんに、静かに言うともしびちゃん。
「何で、会話に入って来なかったの?」
「…野暮なことはしないの。しばらく、会えないんだから、ガールズトークを楽しめばいいのよ」
以外と、いいとこあるじゃん。照れくさそうにしてるともしびちゃんを見て、微笑んだ。
「来たぞ!」
「奴等が来たぞ!」
「燃えてきたー!」
「?」
次の日朝のこと。このありきたりな展開は、嫌な感じだ。寝癖を気にしてる場合ではないらしい。
「あー、ヤミノモノがもう、嗅ぎ付けてきたか」
「どういうこと?」
だるそうにしてないで話しを急かしたら、ともしびちゃんの光を感じて、ともしびちゃんを、捕まえに来たのだそうです。
「ミカ!早く旅に出ろ!」
「パパ、部屋に入るときは、ノックして!」
「パピーと呼んでくれと言って…」
「あなた!こんな時に、ふざけてないでよ!」
「はい!」
ママの葵が真剣なので、パパも真剣な顔…三秒ほどしか持ちませんが、すぐに、のんびりした顔になる。
「ミカ、色々思うことがあるだろうけど、気をつけてな」
「お父さん」
「ミカ、大丈夫。あなたならやれる。私の子だもの」
「お母さん」
二人に抱きしめられて、暖かい温もりを感じる。
懐かしいな。小さい頃、よく感じた暖かさ。
「ともしびちゃん、ミカを頼んだわよ!」
「あいよ、ママさん。頼まれたわ」
ミカちゃんがためらっていると、パパが背中を押す。
「早く行くんだ。奴等に捕まると、一週間は人前で、ダジャレを言わされるぞ」
それは、地味に嫌です。冗談で和ませようとしてくれてる。
ああ、私のスクールライフが………と?神殿の入口には猫族のつむじが、ししゃもパンをもぐもぐしながら待っていた。
「おはようなのです」
「うん、おはよう。どうしてここに?」
昨日、学校は休むって伝えてたのに。
「パピーさんに、護衛を頼まれたのです」
「え、パパが?」
あんにゃろ、勝手なことを!つむじは、確かに家が道場で、猫流の武術の使い手なんだけどね。
「ミカ」
あ、ユウくんにハコちゃん。
「二人共、大丈夫だった?」
「ああ、旅立つって聞いたから見送りに来た」
流石、ユウくん。こんな時でも爽やか。
「これ食べて!」
ハコちゃんが、お菓子の包みを渡してくれる。
あ、つむじの目が輝いている。食いしん坊さんになってる。
「脇役ども、別れはすんだか?来るわ!」
ともしびちゃんの警戒の声に、ユウくんが前に出る。自分にも出来ると。
「ヤミミミミミ!」
黒い丸いヤミノモノたちが、やって来る。あれが、ヤミノモノ。
「さあ、ここは任せて!モブの俺でも友達を守る!」
こんな時でも、爽やかに言われると、ときめいちゃうけど、心に留めておく。
「こらこら、一般市民は避難しなさい」
えらく真剣なお父さんとお母さんが、ミカたちをかばうと、早く行くよう促す。
「でも…』
「でもも、ヘチマもねぇ!」
でも、ミカちゃんはみんなとまったり過ごしたいのと、言おうとして、何だかともしびちゃんの光の力で、遠くまで飛ばされる!
展開、早いな。ミカちゃんは、飛ばされた反動で、意識を失うのでした。空気を切り裂き、風の精霊に見守れながら空を飛ぶ。
「ここは、どこ?」
気づいて見回すと、深い鬱蒼とした深い森だった。
………………………………………………。
気づいたときには、深い森の中にいたのでした。
ーつづくー




