はじまり.1
ヤミノモノ。それは、ヤミノオウの配下たちで、人々のストレスから生まれた存在。
それを代々封じて来たのは、光の巫女。光の女神の祝福を受けた存在だ。
その光の巫女のいるシャインの村。今日も平和な一日が始まることを、信じて疑わない光の巫女と、その仲間たちの物語。
「ミカー!起きなさい!」
もう何度目かのお母さんの声で、目を覚まし、大きく伸びをする。
頭ボサボサ、眠ーい。私、ハシマ=ミカは、朝はそんなに強くない。二度寝したくなるけど、それをしたら、お母さんが鬼になるので、いつの間にか、起きれるようになってた。
窓を開けて、吹き込む風は穏やかで、ご機嫌だね。
「今日も、いい天気!」
飛び起きて、部屋を出るとお母さんの鼻歌が聴こえる。
「おはよー、お母さん。お父さんは?」
「おはよう、ミカ。お父さんなら、神殿でお祈りしてるわ」
私のお父さんもお母さんも、光の神殿のトップ。そこで、働いてる。
私もいつか、後を継ぐのかと考えると、憂鬱になる。
「顔を、洗ってらっしゃい」
「はーい」
裏口から外へ出ると、井戸の水を汲み顔を洗う。タオルで拭いてさっぱり。のどかな朝だ。
朝食のパンをもぐもぐしてると、お父さんが戻ってきた。
「おう、ミカ。おはよう」
「お父さん、おはようー」
「ミカ、パパのことは、パピーと呼んでくれと言ってるだろう?」
椅子に座りながら、シュンとしている。ほんとに、元冒険者なのだろうか?
そんなお父さんをほっといて、私は学舎に行く準備をする。
「行ってきまーす!」
「気をつけてね!」
お母さんの声を、背中に聞きながら、カバンを肩にかけて出かける。
「おはよう、ミカ」
「ユウくん、おはよー」
近くの家から出て来たのは、ユウくん。私の幼馴染みで、好きな人。
いつもの爽やかな笑顔で、挨拶をかわす。
「昨日の課題やったか?」
「いやー、光の巫女の修行で、忙しくて~」
「ほんとか?好きな本読んでたら、寝ちまったんじゃないか?」
「まあ、そうとも言うね」
「はあ…ミカらしいと言うか…」
「まあね」
「……」
う。ジト目で見られてる。これじゃあ、嫌われちゃうかな。
しかし、ユウくんは優しい。きっと、助けてくれるはず!
「流石に見せてはやれないが、手伝ってやるよ」
「わー、ありがとう!」
にこにこ笑いながら歩いていると、向こうの方から、雨雲を連れてやって来たのは、ハコちゃん。手を振ってるのが分かる。
「おーい!」
「おっはよ、ミカちゃん、ユウくん」
傘を差しながら歩く私たち。ハコちゃんは、希に見る雨女だから、傘は手放せないのだ。
「おはよう。ハコ。一人でここまで、不安じゃなかったか?」
ユウくんが心配するのは、最近、黒い影みたいなのが、夕方に目撃されているのだ。怖いな。
この時はまだ、他人事のように考えていた。
私の平和な日常が、壊れてしまうなんて、思わなかったんだ。
つづく
第0話 後、三、四話あります!