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98話 懐かしい景色

 シールロック滞在二日目。


 この日は、気持ちのいい目覚めだった。

 朝起きると、見慣れていないようで見慣れた実家の天井が見えた。


 数ヶ月、この家を離れていたけど……

 懐かしい気持ちを感じていると、やっぱり、ここが生まれ育った家なんだな、と思う。


「ん……」


 ベッドの上で上半身をぐぐっと伸ばした。

 それから、吐息をこぼす。


 頭はとてもスッキリしていた。

 久しぶりの実家ということもあり、緊張するのではないかと思っていたが……

 そんなことはなくて、ぐっすりと眠ることができた。


「さて……今日もがんばるとするか」


 数ヶ月前の自分からは想像もできないような前向きな言葉が出て、俺はベッドから降りた。




――――――――――




 がんばると口にしたものの、がんばるようなことはなにもない。

 家の手伝いを……と思ったけれど、父さんも母さんも遠慮してしまい、俺にゆっくりしていろと言う。


 そもそもな話、客が少ないために、手伝う要素がないという問題もあるが。


 数カ月ぶりの帰郷。

 久しぶりの故郷。

 父さんと母さんは、村でのんびりするといいと言う。


 確かにその通りだ。

 ゆっくりとするための帰郷なので、働いていたらあまり意味がない。

 お言葉に甘えることにして、のんびりさせてもらおう。


「……のんびりするつもりだったんだがな」

「うりゃあああああっ!!!」

「あうううううっ!!!」


 村の外にある平原で、ユスティーナとノルンが激突していた。

 二人共、人の姿をとってはいるものの……

 その拳などから放たれる攻撃はとてつもない威力を秘めていて、轟音が鳴り止むことはない。

 地面にクレーターができたり、岩が砕け散るなど、なかなかにひどい有様だ。

 天災が訪れたら、こんな風になるのかもしれない。


 戦う二人だけど、ケンカをしているわけじゃない。

 食後の腹ごなしということで、軽く体を動かしているらしい。


「……これで軽くというところが、恐ろしいところだな」


 少しずつ、ヒートアップしているような気がした。

 ノルンはわからないが……

 ユスティーナは、特訓も兼ねているつもりなのかもしれない。


 以前、ククルとの勝負に負けたことを気にしているみたいだ。

 隠しているみたいだけど、時折、ため息をこぼしているからな。


 今以上に強くなるため。

 竜としてのポテンシャルを最大限に引き出すため。

 がんばろう、と決めたみたいだ。

 その意思を応援したい。


「とはいえ、俺にできることはあまりないけどな」


 俺自身、まだまだ修行の途中だ。

 それなのに、誰かにものを教えることなんてできない。


「ユスティーナ、ノルン。そろそろ休憩にしないか?」


 頃合いを見計らい、二人にそう声をかけた。

 二人共疲れが溜まっていたらしく、最後に一度、拳を交わした後、こちらに戻ってくる。


「ふぅううう……けっこう疲れたよ。でもでも、ノルンが相手だと、良い特訓になるね!」

「あうっ!」


 拳を交わした友情が深まったのか、二人は今までよりも仲良くなっていたような気がした。


「ほら」

「ありがと、アルト!」

「あうあうっ」


 あらかじめ冷やしておいたタオルを二人に渡した。

 二人は冷たいタオルを顔や首に当てて、気持ちよさそうな顔をする。


「それから、これ、飲むか?」


 母さんが作ってくれた、果汁を絞った甘いドリンクを取り出すと、ユスティーナとノルンは顔をキラキラと輝かせる。


「飲む!」

「あう!」

「腹は減っていないか? 軽くつまめるように、サンドイッチも作ってもらって……」

「食べる!」

「あう!」


 即答だった。

 二人共、子供のようにはしゃぎつつ、ドリンクとサンドイッチをくれと手を差し出してくる。


 もしも俺に子供がいたとしたら、こうなるのだろうか?

 二人の父親になったような気分だ。


 苦笑しつつ、俺は地面の上にシートを敷いた。




――――――――――




 特訓の後は、俺が案内をする形で、村を回ることにした。

 故郷なので、やはり、二人にも好きになってほしい。

 綺麗な景色が見える場所や、村の数少ない特産のはちみつが採れるところなど、俺なりに考えて案内する。


 ちなみに、他のみんなは別行動だ。

 というのも、昨日、飲みすぎたらしく……

 グランとテオドールがまだ寝ていて、ジニーとアレクシアは昼くらいまで宿でのんびりするつもりらしい。

 やれやれと思わないでもないが、休み中なのだから、そういう風にダラダラと過ごすのもたまにはいいだろう。


「ねえねえ、アルト。次はどこを案内してくれるの?」

「あう!」


 ユスティーナとノルンが、笑顔で次を次をとせがんでくる。

 竜にとってはこんな田舎でも珍しいのか、すごく楽しんでいるみたいだ。

 二人が喜んでくれると、俺もうれしくなる。


 次の場所に案内しようとして……

 ふと、村が騒がしいことに気がついた。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 軽いトレーニングとは言え… ユスティーナvs.ノルン …王都辺りだと戒厳令敷かれるカモ(笑) [一言] アルト…色々あったんだなぁ(涙) そして、村にて何かが起こる…(苦笑)
[一言] ユスティーナ、妻の前に娘になっちゃいましたね(笑)
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