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84話 混乱の戦場

 子供たちと戦うわけにはいかず、俺とユスティーナは強引に包囲網を突破して、施設内を一気に駆け抜けた。

 ゼノを見失ってしまったものの、この場合はどうしようもない。


 絶対に捕まえるという意思は変わらないが……

 それよりもまずは、自分たちの身の安全を確保しなければいけない。


「アルトー!? ものすごい勢いで、ものすごいたくさんの子供たちが追いかけてくるよー!?」

「絶対に追いつかれるな! 捕まれば、かなり厳しい状況になるぞっ」

「うんっ!」


 明かりのない中、全力で通路を走り抜ける。

 視界は最悪ではあるが、足音の反響具合から、大体の空間のあたりをつけて走っていた。


 ただ、ほどなくしたところで、足音の反響が乱れる。

 これは……行き止まり!?


「アルト、まずいよ!」

「ああ、わかっているが……」


 ユスティーナも、この先が行き止まりということに気づいたらしく、焦りを含んだ声を出した。

 その間に、俺は必死に打開策を考える。


「……仕方ない。ユスティーナ、破れるか?」

「うんっ、任せて!」


 ここで俺達が倒れるわけにはいかない。


 街に道を繋げてしまうかもしれないが……

 逆に、援軍を呼ぶチャンスでもある。


 もはや強行突破しかない、と判断した。

 それはユスティーナも同じらしく、すぐに返事が返ってきた。


 ユスティーナは走りつつ、拳を構えて力を溜める。

 拳圧による衝撃波で扉を吹き飛ばしてしまおう、という算段なのだろう。

 竜であるユスティーナにしかできないような芸当だ。


「アルト、いくよ!」

「ああ、任せ……いやっ、ちょっと待て!」


 ギィイイイ、と鉄と鉄が擦れるような耳障りな音が響いた。

 その直後……轟音と共に扉が吹き飛ぶ。


 まだユスティーナは動いていないのに、なぜ……?

 疑問を覚えながらも、足を止めるわけにはいかず、走り続ける。


 これで、もしも壁の向こうから増援が姿を見せたら?

 あるいは、ゼノの仲間がいたら?


 悪い想像をしてしまうが、それは外れることになる。


「アルト!?」

「グラン!?」


 最初に姿を見せたのはグランだ。

 グランだけじゃない。

 ジニー、アレクシア、テオドール……そして、ククルの姿があった。


「アルトさま! よかった、無事だったのですね」

「魔道具の反応を頼りに、あたしら、ここに来たんだけど……って、アルト君? エルトセルクさん?」


 俺達が足を止めることなく走り続けるのを見て、ジニーが怪訝そうな顔をした。

 ただ、今は説明している時間がない。


「みんなっ、逃げろ! ここにいるとまずい!」

「逃げろ、って……えっ、ちょ!? な、なによあれ!?」


 ジニーが俺達の後ろを見て、顔を引きつらせた。

 おそらく、ゾンビのように群がる子供たちに気づいたのだろう。


「子供……ですわね」

「しかし、様子がおかしいね。なんだろうか?」

「操られている!」


 子供相手に戦えるわけがない。

 しかも、数は圧倒的に上。


 状況を理解したらしく、みんなは顔色を青くした。


「俺達が引きつけるから、みんなは応援を頼む!」

「応援って言われても、どうすりゃいいんだよ!?」

「人海戦術で行く! ありったけの人をかきあつめてくれ! それで、子供たちを無傷で無力化しないと……!」

「いえ、その必要はないのであります」


 俺達と入れ替わるように、ククルが前に出た。

 剣を抜いたりはしないが、その瞳には強い意思が宿り、迫りくる子供たちを睨みつけている。


「どうするつもりだ!?」


 さすがに放置しておくわけにはいかず、足を止めて問いかけた。

 ククルは子供たちの方を向いたまま、振り返らずに答える。


「こうするのであります!」


 ククルの右手が淡い光を帯びる。

 その光はやがて全身に広がり、魔力を帯びた魔法陣が展開される。


「白銀の聖域!」


 ククルが聞いたことのない呪を口にした。


 ククルの足元から光の波が湧き上がり、前方に広がっていく。

 それらが子供たちの足に触れると、光が一気に弾けた。


 あふれる光が形を作り、鎖となる。

 それらは生き物のように複雑にうねってみせると、子供たちの体に絡みついた。


 さらに、光の鎖は地面に固定されて……

 子供たち全員の動きを封じることに成功する。


「うわ……すご」


 ジニーが唖然とした様子でつぶやいていた。


「ククル、今の……魔法なのか?」

「はい、そうであります。ただ、一般に知られていない、フィリアだけに伝わる……というか、聖騎士のみが使うことができる、特殊な魔法であります。対象の体、心、魂……全てを拘束するというものであります。この魔法から逃れる術はないのであります」

「すごいな」


 竜に匹敵する身体能力を持つだけではなくて、優れた魔法も使うことができるなんて。

 改めて聖騎士の力を知る。


「……むぅ」


 ククルの力を見て、ユスティーナが複雑そうな顔をしていた。


 確たることは言えないのだけど……もしかしたら、ククルに対して嫉妬のような感情を覚えているのかもしれない。

 以前、ユスティーナは模擬戦でククルに負けた。

 つまり、身体能力や戦闘技術はククルの方が上ということ。


 その上で、魔法という特殊能力でも負けていたら?

 色々と思うところが出てくるのかもしれない。


 ただ、今は考え事をしている場合じゃない。

 やらないといけないことがある。


「エステニア殿、この子供たちは?」

「誘拐された子供たちだ。詳しく説明している時間はないが、簡単に言うと、操られているような状態だ。早く黒幕を捕まえて、元に戻さないといけない」

「その黒幕というのは、どのような?」

「元の姿は、俺より少し上という感じの男だ」

「元の姿?」

「こちらも説明を省くが……今、黒幕はノルンの体を乗っ取っている」

「ど、どういう状況なのでありますか!?」


 さすがに驚いたらしく、ククルは大きな声をあげた。

 ただ、もうしわけないが、説明している時間はない。


 早くノルンの体を乗っ取ったゼノを探し出して……

 なにかやらかす前に捕まえないといけない。


「あー……まあ、今まで以上にややこしい事態になってんのは理解したぜ」

「どちらにしても、あたしらはアルト君に協力するだけね」

「アルトさま、指示をお願いいたします」

「ふっ、任せるよ」


 みんなからの信頼を感じた。

 これに応えてみせないと、男じゃないな。


「アルト、どうするの?」

「……あいつの反応は追えるか?」

「うーん……ちょっと難しいかも。中身……魂が別人だから、妙な気配になっていて、追跡しづらいんだよね」

「なら、俺の方でなんとかしてみせるか」

「なにかあるの?」

「ああ。一応、仕込んでおいた。うまく機能するか、ちょっと不安だけど……今はそれを頼りにしよう」




――――――――――




 ノルンの体を乗っ取ったゼノは、愉悦に満ちた笑みを浮かべながら、街に向かってゆっくりと歩いていた。


 ここは、ユールモア一の観光地だ。

 たくさんの人がいる。


 この体を使い、暴れればどうなるか?

 想像できないような被害が生まれるだろう。


 それこそがゼノの目的だ。


 言葉ではなくて、力で己の主張を通す。

 相手の言うことに耳を傾けない。

 自分こそが正しいと信じて、凶行に走る。


 彼は……テロリストだ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[良い点] ユスティーナ…この期に及んで尚も嫉妬してしまうとは…骨の髄まで恋する乙女なんだなぁ…(微笑) [気になる点] テロリスト…の中でも、実行犯にあたる… 全く疑わずに信じて行動しているって事…
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