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62話 いざ旅行へ

 マグナさんの店で一週間ほどアルバイトをして……

 そうしているうちに夏季休暇に突入した。


 それからさらに三日ほどアルバイトをした。

 暑くなってきたけれど働くことは心地よく、最後まで元気に過ごすことができた。


 そうして旅行資金を無事に貯めることができて……

 準備をした後、俺たちは旅行に出た。




――――――――――




 王都の入り口に馬車の乗り場が設置されている。

 十数台の馬車が停められるほどに広い場所で、小さな子供は迷子になってしまうようなところだ。


「いよいよ旅行かあ……楽しみだね、アルト!」

「アルトさま、忘れ物はありませんか?」

「あうあう!」


 ユスティーナとアレクシアとノルンがぐいぐいと迫ってくる。

 それを見て、ジニーが苦笑する。


「あはは、アルト君。今日もモテモテだね」

「どう反応したらいいものか……」

「けっ、爆発しやがれ」

「ふむ。なぜ爆発なのだい?」

「幸せなヤツに対する祝福の言葉だよ」

「そうなのか、知らなかった。では、僕からもその言葉を贈ろうではないか。アルトよ、爆発するといいよ」


 テオドール……お前、騙されているぞ。

 友達として付き合うようになって知ったことだけど、テオドールはあまりものを知らない。

 貴族故に庶民のことは疎く……

 こうして、時折グランに騙されてしまうことがある。


 まあ、それもテオドールらしいというべきか。


「あっ、馬車が来たよ。ボクたち、アレに乗るんだよね?」


 停留所で待っていると、コルシア行きの馬車がやってきた。

 竜だから馬車に乗るのは初めてらしく、ユスティーナのテンションは高い。


 さっそくコルシア行きの馬車の乗車券を買う。

 少しの時間をおいて、コルシアに出発する。


「アレクシア、俺が持つ」

「ありがとうございます」


 アレクシアが重そうに荷物を持っていたため、代わりに荷台へ乗せた。

 それから俺が最初に乗り、アレクシアの手を引く。


「ふふっ、アルトさまは紳士なのですね」

「そうか?」


 アレクシアは武闘派ではなくて、魔法を得意とする頭脳派だ。

 そこまでの体力はないので、男がサポートするのは当たり前のようなことがした。


「アルトっ、ボクの手も引いて!」

「ああ」


 ユスティーナは竜だけど、その前に一人の女の子だ。

 女の子は大事に扱わないといけない。

 故郷の両親から常々、そう教えられてきた。


 ユスティーナの手をそっと引いて、馬車に乗せた。


「アルト君ってば、そうしているとおとぎ話の王子さまみたい。みんなが好きになっちゃうのもわかるなー」

「ジニーもほら」

「え? わ、私まで?」


 ジニーに手を差し出すと、なぜか慌てられてしまう。

 迷うような様子を見せていたので、少々強引に手を引いた。


「ひゃっ」

「ほら、大丈夫か?」

「う、うん……」


 ジニーが赤くなりながら、荷台の中に設置されている木の椅子に座る。


「もう……私にまで優しくするなんて、そんなことをされたら意識しちゃうじゃない……」

「じゃあ、次はノルンだ」

「んぅ!」

「みんなに優しくしているだけなのかもしれないけど……でも、そういうところがアルト君らしくて、とてもいいところ、なのかもね」


 後ろの方でジニーがなにか言っているような気がしたが……

 ノルンが手を引くついでに抱きついてきて、それを見たユスティーナが吠えたので、よく聞こえなかった。


 最後にグランとテオドールだ。

 二人が俺が手を引くまでもなく、軽く跳躍して馬車の荷台に乗る。

 さすがに運動神経は抜群だ。


 やがて出発の時刻となり、御者が馬車を走らせる。

 景色が横に流れていき……

 俺たちの夏の旅行が始まった。




――――――――――




「おー」

「おー」

「うわぁあああ」

「うわぁあああ」

「ひゃあ」

「ひゃあ」


 ユスティーナとノルンが身を乗り出すようにして、馬車の窓から外を覗いている。

 二人共馬車は初経験なので、ものすごく珍しそうに……そして楽しそうにしていた。


 時折、ユスティーナはノルンに嫉妬したりすることもあるが……

 なんだかんだで竜同士仲がいいらしく、息がぴったりと合っていた。


 他のみんなものんびりとした様子で馬車の旅を楽しんでいた。

 俺が王都に来た時は、馬車酔いなんてものに悩まされたが、今回はそんなことはない。

 気持ち悪くなる様子は一向になく、リラックスすることができた。


「アルトさま、お隣、いいですか?」

「ああ、どうぞ」


 アレクシアが俺の隣に移動した。

 揺れる馬車の中、器用に動く。

 意外とバランス感覚がいいのかもしれない。


「旅行、とても楽しみですね」

「そうだな。友達と旅行なんて初めてだから、俺もすごく楽しみにしているよ」

「初めてなのですか?」

「田舎に友達はいるが、旅行に行けるだけの金はなかったからな。だから、今回が初めての旅行だ」

「そういうことでしたら、たくさん楽しまないといけませんね」

「そうだな。ただ、実はちょっと不安なところもあったんだが」

「不安なところですか? アルトさまに?」


 アレクシアが意外そうな顔をしてそう言った。

 そんな反応を見て、ついつい苦笑してしまう。


「アレクシアは俺に対して、どんな印象を持っているんだ? 俺も不安に思うことくらい、ちょくちょくあるぞ」

「すみません。アルトさまは私にとってのヒーローで、どのような困難にも立ち向かう勇気を持っている方、という認識なので」

「過大評価だな」

「わたしの感想なので、いくらアルトさまでもそれを曲げることはできませんよ」


 いたずらっぽく笑うアレクシアは楽しそうだった。


「ところで、不安なことというのは?」

「ああ……馬車酔いをするんじゃないか、って思っていたんだ。王都に来る時、馬車酔いをしたことがあってな。今回もそうなるんじゃないかと思っていたが……そんなことはなさそうだ」

「この馬車はしっかりとした作りみたいですから。普通の馬車はあちらこちらが揺れるため、そうでない人も酔いやすいのですよ」

「そうなのか」

「でもわたしとしては……酔っているアルトさまも、ちょっと見たいような気がしました。残念です」

「そんなところを見てなにが楽しいんだ?」

「わたしに甘えてくれるかもしれないじゃないですか」

「……そういうことか」


 やれやれとため息をこぼした。

 日に日にアレクシアが色々な意味でたくましくなっているような気がする。

 このことをあの父親に知られたら、大変なことになりそうだ。


「そういえば、アレクシアは今回の旅行、よく認めてもらえたな」

「わたしの父のことだから反対されるのではないかと?」

「ああ。失礼かもしれないが、やや過保護気味に見えたからな。三週間近い旅行なんて認められないのではないかと、今になって考えたが……」

「最初は反対されましたわ。しかし、母はわたしの味方なので」

「なるほど」


 アレクシアの家……というよりは、イシュゼルド家だろうか。

 そこでは女性の方が強いらしい。


「わたしも友達との旅行は初めてなので楽しみですわ」

「たくさん楽しもうな」

「はい!」

「……そうもいかないかもしれないぜ」


 難しい顔をしたグランが話に割り込んできた。


「どういう意味だ?」

「トラブルらしい」


 グランの言葉を証明するように、ほどなくして馬車が止まる。

 何事かと顔を出すと、街道の先に別の馬車が見えた。


 その周囲に魔物の群れが。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[良い点] 女の子たちの手を、引いては(馬車に)乗せ引いては乗せ…確かにそりゃあモテるよなぁ(笑) [気になる点] ノルンはアルトが好き過ぎるなぁ…事ある毎にアルトの体温を求め続けてる感じ(笑)ただ……
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