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52話 空中戦

「なっ……!?」


 空に飛び上がるエンシェントドラゴンを見て、ユスティーナが驚きの声をあげた。


「そんな……!? 確かに逆鱗は壊したのに……!」

「ユスティーナ! 逆鱗は竜の弱点なんだよな!?」

「う、うん……身体機能の制御を司る一部だから、逆鱗を破壊されたら、死ぬことはないけどしばらくは行動不能に陥るよ。それはボク……バハムートも例外じゃないよ。それなのに、どうしてあの竜は……」


 竜の常識ではありえないことが起きているらしく、ユスティーナは呆然としていた。

 そんな彼女に喝を入れるように、大きな声で呼びかける。


「今は考えるのは後だっ!」

「あっ……」

「ユスティーナ、追うぞ!」

「うんっ!」


 俺はユスティーナの背に乗った。

 それから振り返り、みんなを見る。


「みんなは倒れていた生徒を連れて先生のところへ! このことを伝えてくれ!」

「わかった、任せておけ!」

「ついていけないのは悔しいけど……後は任せるからね」


 グランとジニーは頷いて、


「私もいきます!」


 しかし、アレクシアは予想外のことを言い出した。


「テオドールさまのパーティーの竜を貸していただきます。さきほど起きたらしく、大した怪我もないようなので……」

「いいのか?」


 竜騎士たちの方を見ると、問題ないというように頷かれた。


「しかし……いや。そういうことなら頼む」


 最初はアレクシアの身の安全を考えて断ろうとしたが……

 相手がエンシェントドラゴンということを考えると、少しでも人手が欲しい。


 それにエンシェントドラゴンは目的はなく、見境なく暴れまわっているように見える。

 避難した先が襲われるとも限らないし……

 それならば竜と一緒にいた方がまだ安全だろう。


「君、アレクシアのことを頼んだよ」

「はっ、姫さまの仰せの通りに……」


 アレクシアを背中に乗せた竜は、平服するように頭を下げた。


「アルト、準備はいい?」

「いつでもいける」

「なら……いくよー!」


 ユスティーナが大地を蹴り、大空に舞い上がる。

 本来の竜騎士のように、俺たちは共に空を駆けて……

 エンシェントドラゴンの後を追いかけ始めた。




――――――――――




 空をユスティーナと一緒に翔けて……

 ほどなくしてエンシェントドラゴンに追いついた。


 巨大な翼をゆっくりと羽ばたかせながら、蛇行しながら飛行していた。

 逆鱗を破壊されたダメージが残っているらしく、その速度は遅い。

 左右に揺れているのも、感覚器官に影響があるせいなのか?

 ユスティーナの話によると、逆鱗は身体機能の維持に必要なものというし……


 まあいい。

 考えるのは後だ。

 今度こそ、エンシェントドラゴンを行動不能にさせないと。


 あんなものが街に行けば、どんな被害が出るか……

 結界があるものの、エンシェントドラゴンを相手にする想定はされていないはずだ。

 どれだけ保つかわからない。


「ユスティーナ、アレクシア。いくぞ!」

「うんっ」

「はいっ」


 まずは俺とユスティーナが先陣を切った。


 右から回り込むように旋回して、斜め後ろから体当たりを食らわせる。


「グルァッ!?」


 エンシェントドラゴンはぐらりと体勢を崩すが、落下するまでには至らない。

 ユスティーナの巨体を力任せに押し返して、豪腕で薙ぎ払う。


「イマイマシイ!」

「当たらないよ!」


 ユスティーナはくるりとその場で回転。

 一瞬で30メートルほど上昇して、エンシェントドラゴンの攻撃を避けた。

 咄嗟の瞬発力とスピードは、ユスティーナの方が上らしい。


「ユスティーナ、このまま、直上からぶつけるぞ!」

「うんっ」


 太陽を背負うようにして、エンシェントドラゴンの直上から襲撃する。

 上から下に。

 ほぼほぼ90度の角度で降下して、地面に追い落とすように重い一撃を叩きつけた。


 それと同時に、俺も剣を振る。

 グランとジニーから借りたものだ。


 剣は訓練用のものなので刃は落とされている。

 ただ、強度だけは抜群だ。

 それをユスティーナの加速に合わせて叩きつける。


 ギィンッ!


 相当に頑丈なはずの剣が半ばから折れて砕け散る。

 その衝撃が手に伝わり、思わず痺れてしまう。


 しかし……


「グァッ……!?」


 エンシェントドラゴンにも衝撃は伝わったらしく、戸惑うような咆哮を響かせていた。

 いくら固い鱗に包まれていたとしても、衝撃を封じることはできないからな。


「アレクシア!」

「はいっ」


 隙ができたタイミングで、アレクシアは竜を突撃させた。

 普通の竜ではあるが、その攻撃力、破壊力は俺たち人間と比べ物にならない。


 エンシェントドラゴンがぐらりと宙でよろめいて……


 そこを下から叩き上げるように、アレクシアの竜が激突した。

 そのままエンシェントドラゴンを押し上げて……

 20メートルほど上昇したところで停止。

 アレクシアの竜はエンシェントドラゴンの腕に噛みついて、振り回す。


「紅の三連っ!!!」


 アレクシアの竜がエンシェントドラゴンを地面に向けて突き落として……

 そこに追撃の魔法が炸裂した。


 1メートルほどの巨大な火球が三つ。

 全てエンシェントドラゴンの頭部で爆発した。


「ガァアアアッ!!!」


 エンシェントドラゴンが怒りに吠えた。


 いくら頭部を捉えたとはいえ、人の魔法で竜にダメージを与えることはなかなかに難しい。

 極大魔法を使えばなんとかならないこともないが、学院生が使えるレベルの魔法では、竜の防御力を突破することはできない。

 ただ怒りを買うだけだ。


 しかし、アレクシアは元よりダメージを与えようなんて思っていない。

 ただただ、俺たちのサポートをすることを考えていた。


「ナイスっ!」


 エンシェントドラゴンの注意が逸れている間に、ユスティーナは漆黒の翼を羽ばたかせて、今度は下に回り込んだ。

 地面スレスレの超低空飛行を繰り出して……

 エンシェントドラゴンの真下に来たところで、一気に急上昇。

 下から上に突き上げるようにして、死角からの一撃を叩き込む。


「グルァ!?」


 しかし、エンシェントドラゴンも負けていない。

 すぐに体勢を立て直して、超高速で飛ぶ。


 こちらもその速度以上に飛んで……

 宙で何度も交差。

 激突を繰り返す。


「ぐっ……!?」


 一瞬でも気を抜けば振り落とされそうだ。

 しかし、それではユスティーナと一緒にいる意味がない。


 俺は気合を入れて耐えながら、交差する瞬間に合わせて武器を振る。

 その度に武器は砕け、ストックが減るものの……

 少しずつではダメージを与えているらしく、次第にエンシェントドラゴンの動きが鈍ってきた。

 俺、ユスティーナ、アレクシア……みんなの攻撃が届いたのだろう。


「グゥウウウ……!」


 エンシェントドラゴンは数の不利を悟り、ユスティーナを振り切ろうとした。

 しかし、ユスティーナはそれを許さない。

 ぴたりと張り付くように飛んで、時折、タイミングを見て攻撃をしかける。


 エンシェントドラゴンが急旋回したら、ユスティーナは急上昇して回転……独自の旋回を行い追撃する。

 速度を上げて振り切ろうとしたら、さらにその上を行く速度で。

 でらためな軌道を描いたら、逆に精密な飛行で捉えて離さない。


「逃がすもんか!」


 猟犬のごとく、ユスティーナはエンシェントドラゴンを追いつめていく。


 と、その時……


「グルァッ!?」


 エンシェントドラゴンの巨体を包み込むように、大きな爆炎が立ち上がった。

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