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50話 隣に立つと願うからこそ

 その体は白に輝いていた。

 ユスティーナが漆黒の竜とするならば、コイツは白銀の竜だ。


 宝石のように輝く体。

 淡い赤の膜を持つ翼は大きく、空を覆ってしまうのではないかと思う。


 牙は一本一本が槍のように鋭い。

 爪は剣のように触れる者全てを傷つける。


 瞳は真紅。

 燃えているかのような煌めきを放っている。


 その竜の名は……


「……エンシェントドラゴン……」


 最古の竜と言われている存在だ。

 また、生きる伝説とも言われている。

 最低でも1000年も生きているらしい。


 その数は少ない。

 絶滅寸前と言われているが……

 永遠に近い寿命を持つため、本当に絶滅寸前なのか? と竜を研究する学者の間では日々討論が行われている。


 その力は絶大。

 竜の頂点に立つ者……神竜バハムートの次に力を持つ竜と言われている。


「どうしてエンシェントドラゴンがこんなところに……?」


 アルモートは竜と共存関係にあるが、竜はあまり気軽に人前に姿を見せない。

 ましてや強大なエンシェントドラゴンともなれば、その姿を一生見ることはないと言われている。

 それほどまでに珍しい存在なのだ。


 その周囲に生徒たちが倒れている。

 他に誰もいない。

 エンシェントドラゴンだけだ。


「これはあなたが……」


 関係しているのですか?

 そう問いかけようとしたところで、ふらりとテオドールが前に出た。


「迂闊に動かない方がいい。状況があまりにも不透明だ」

「……」


 テオドールはこちらの言葉に耳を貸していない様子で、さらにエンシェントドラゴンに近づいた。

 その瞳は……さきほど見た時と同じように、光がない。

 どこか虚ろで、意思というものが感じられない。


「テオドール……?」

「……」


 呼びかけるものの、テオドールは応えない。

 テオドールはエンシェントドラゴンに歩み寄り……そのまま騎乗してしまう。


 そして……エンシェントドラゴンが吠えた。


「グルァアアアアアッ!!!」

「アルトっ!!!」


 よほどのことがない限り動かないと言っていたユスティーナが動いた。


 俺の前に立つ。

 その直後、エンシェントドラゴンが動く。

 巨大な足で地面をえぐり、爆発するような勢いで突進してきた。


「こっ……のぉおおおおおぉぉぉ!!!!!」


 ユスティーナらしからぬ大きな声を出して、エンシェントドラゴンの突撃を受け止めた。

 しかし完全に制圧することはできず、大きく後退してしまう。


「アルトっ、逃げて!」

「どういうことだ!?」

「わけがわからないけど……この竜は正気じゃないよ! 見た目からして、1000年以上を生きているエンシェントドラゴン……ボクが相手でも、さすがに厳しいかも!」


 ユスティーナは竜の頂点に立つバハムートだ。

 しかし、まだ15歳だ。

 発展途上であり、その力はエンシェントドラゴンに劣るのだろう。


「そんなことを聞いて逃げられるわけないだろう! テオドールの様子もおかしいし……」

「でもっ……!」

「サポートくらいは……!」


 正面から竜と……しかもエンシェントドラゴンをぶつかるなんて無謀な真似をするつもりはない。

 そんなことをしたらユスティーナの足を引っ張るだけで終わる。


 ただ、サポートくらいは問題ないだろう。

 細心の注意を払わないといけないが……

 遠距離攻撃や搦め手を使うなど、それくらいならば可能と判断した。


 それと、エンシェントドラゴンなんて天災のような相手を、ユスティーナ一人に任せるわけにはいかないという男の矜持もあるが。


「アルトっ、無茶するな!?」

「そうよ、エンシェントドラゴンに立ち向かうなんて……!」

「アルトさま、いくらなんでも無謀ですわ。エンシェントドラゴンを相手にするなんて……死んでしまいます!」


 グランたちは交戦するべきではないと強く訴えた。

 自分たちが敵う相手ではないと、そう訴えてきた。


 それはよくわかる。

 当たり前の判断であり、むしろ俺の方が普通ではない。


「無茶はしない方がいい。ここは引くべきだ」


 テオドールの仲間である竜騎士たちも、俺が戦うことは無謀だというように、こちらを守るような配置につく。


 そうだとしても。

 無謀だとしても。


「奥で倒れている生徒たちを助けないと。このまま放置したら、どうなるか……」

「それは……」


 グランが迷うような顔になった。

 俺の言うことはわかってくれているみたいだ。


 倒れている生徒を連れて逃げることくらいはできるかもしれないが……

 その場合、ユスティーナが一人で足止めをすることになる。


 仮にうまくいったとしても、ユスティーナでさえ厳しい相手だ。

 そして今は校外試験中。

 戦域が拡大して、他の生徒が巻き込まれる可能性もある。

 避難するにしても時間が足りないし、混乱も起きるだろう。


 やはり、ここで無力化するのが一番なのだ。

 しかしグランは素直に頷くことはできないらしい。

 現実と理想の間で揺れるように、迷いが見える。


「グランたちは引いてくれ」

「エルトセルクさんと同じようなことを……くそっ、アルトの今の気持ちって、こういうことかよ!」

「でも、だからってエンシェントドラゴンに立ち向かうなんて……やっぱり無茶よ!」

「アルトさま、私たちは救助に専念して、エルトセルクさんや正規の竜騎士に任せるべきでは……?」


 みんなの言うことはよくわかる。

 わかるのだけど……


 しかし、ダメなのだ。

 引く勇気を持つことは大事だと思う。

 ただ、時に絶対に引くことができない場面があると思う。


 俺にとって、今がその時なのだ。


「……やはり俺は引けない」

「アルト!」

「俺はユスティーナの隣に立つと決めた」

「あ……」


 ユスティーナが小さな声をあげた。

 驚いているような喜んでいるような……そんな不思議な声だった。


「どのような関係になるか、それはわからないが……隣に立ち、対等の存在でありたいと願った。だからこそ、ここで逃げるわけにはいかない。ユスティーナ一人に任せるわけにはいけないんだ」

「……アルトさま……」

「だから……俺はユスティーナと一緒に戦う」


 それが俺の決意であり、意思だ。


 そんな俺の答えを聞いて、アレクシアが最初に苦笑して……

 次いで、グランとジニーも苦笑した。


「ったく……アルトらしい理由だな」

「……でも、そんなアルト君は嫌いじゃないかな」

「はい、ますます好きになってしまいました」


 グランたちがそれぞれ武器を構えた。

 俺を止めるつもりは消えたらしく……

 さらに共に戦う意思を抱いたようだ。


「グランたちまで付き合う必要は……」

「ばかやろう。俺らだって、アルトを見捨てるなんてことできないんだよ」

「足手まといになるかもしれないけど、それでも一緒にいたいの」

「私の力、全てをアルトさまに捧げますわ」

「……ありがとう」


 頼もしく、とてもいい友達を得た。


 テオドールに従う竜騎士も、当然のように武器を構える。

 学生に任せて正規の竜騎士が逃げ出したら話にならない。


 ただ……あの時、テオドールに接近してなにかしらささやいていた竜騎士だけは、いつの間にか姿を消していた。

 なにをしたのか?

 この事態に関係しているのか?

 探し出して問い詰めたいところだが、残念ながらそんな余裕はない。


「もう……アルトもみんなも……すぐに逃げて、って言っているのに……」


 エンシェントドラゴンを食い止めつつ、ユスティーナがなんともいえない顔をした。

 困っているような、しかし、喜んでいるような……


「いくよっ、アルト!」

「ああ!」

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