表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
454/459

450話 解呪、完了

 ちょっと出かけてくるね?

 とユスティーナが言って、姿を消して、一時間後……


 ドゴーン!


 竜が暮らす山の方から、盛大な爆発音が響いてきた。

 それと同時に、聞き覚えのある男女の悲鳴も聞こえてきたような気がしたが……

 それは聞かなかったことにして。


 そして、さらに一時間後。


「ただいまー」


 妙にスッキリした様子のユスティーナが戻ってきた。


「おかえり。えっと……どうだった?」

「うん、全部解決してきたよ♪」


 にっこりと笑うユスティーナ。


 もう一つの魔法の犯人……グレイシアさんとフレイシアさんがどんな目に遭ったのか?

 その笑顔から、なんとなく察することができた。


 どうか安らかに。


「えっと……よくわからないけど、問題は解決したの?」

「うん。これで大丈夫だと思うけど、どうかな?」

「ふむふむ……お、そうだね。さっきまであった魔法が消えている。これなら、問題なく解呪できるよ」

「なら、すぐにお願いします」


 呪いが発動するのは未来だということは知っているが……

 それでも、彼女の体が蝕まれているという事実は許容できない。

 すぐに正常な状態に戻してほしい。


「ちょっとまってね。えっと、ここをこうして……」


 始祖竜はユスティーナの前に立ち、じっと彼女を見つめる。


 そのままの状態で、なにやらぶつぶつとつぶやいた。

 竜が使う言語なのか、人に聞き取ることはできない。

 意味もわからない。


 ただ、解呪のためのものだろう、ということは予想できた。


「……エンテ」


 最後に一言、小さくつぶやいた。


 瞬間、パチンという音が響く。

 風船が割れたような音だ。


「ふわっ」


 ユスティーナがビクンと震えた。

 音に驚いたというよりは、もっと別のなにかに反応した様子だ。


「ユスティーナ? 大丈夫か?」

「う、うん。なんともないけど……なんだろ? 少し体が軽くなったような……?」

「あっ!」


 不思議そうにするユスティーナを見て、メルクリアが大きな声をあげる。


「ママ、元気になっているよ!」

「え、本当?」

「うん! すごく元気! 嫌な感じが消えているよ」


 と、いうことは……


「解呪、完了だよ」


 始祖竜は、どことなく誇らしげに言う。


 いや。

 元はと言えば、あんたが原因だからな?


 とはいえ、素直に呪いを解いてくれたことはうれしい。

 ここでごねられたり逆ギレされたりしたら、どうすることもできないからな。


「ユスティーナ……よかった」

「あわっ!?」


 気持ちがあふれ、ついついユスティーナを抱きしめてしまう。


 彼女は驚いたように体を震わせて……

 でも、抱きしめられるままで……


 そっと、抱き返してきた。


「……ボク、もう大丈夫なのかな?」

「ああ、大丈夫だ」

「ずっとずっと、アルトと一緒にいられるのかな?」

「いられるよ。ずっと一緒だ」

「メルクリアも産んであげられるのかな?」

「もちろん」

「そっか……えへへ、そっか」


 ずっと気持ちが張り詰めていたのだろう。

 ユスティーナは、そっと俺の胸に顔を埋めて……


 少しの間、泣いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] 解呪おめでとう。魔法は親心だろうから許そうね。
[良い点] その辺のやりとり、ナレーションベースで済ませちゃったのが、余計にあの2人、いやあの二匹は不憫である・・。
[一言] かくして、ストーカー紛いの行為を犯したバカ父娘は、娘によって天へと旅立ったのだった。 めでたしめでたし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ