450話 解呪、完了
ちょっと出かけてくるね?
とユスティーナが言って、姿を消して、一時間後……
ドゴーン!
竜が暮らす山の方から、盛大な爆発音が響いてきた。
それと同時に、聞き覚えのある男女の悲鳴も聞こえてきたような気がしたが……
それは聞かなかったことにして。
そして、さらに一時間後。
「ただいまー」
妙にスッキリした様子のユスティーナが戻ってきた。
「おかえり。えっと……どうだった?」
「うん、全部解決してきたよ♪」
にっこりと笑うユスティーナ。
もう一つの魔法の犯人……グレイシアさんとフレイシアさんがどんな目に遭ったのか?
その笑顔から、なんとなく察することができた。
どうか安らかに。
「えっと……よくわからないけど、問題は解決したの?」
「うん。これで大丈夫だと思うけど、どうかな?」
「ふむふむ……お、そうだね。さっきまであった魔法が消えている。これなら、問題なく解呪できるよ」
「なら、すぐにお願いします」
呪いが発動するのは未来だということは知っているが……
それでも、彼女の体が蝕まれているという事実は許容できない。
すぐに正常な状態に戻してほしい。
「ちょっとまってね。えっと、ここをこうして……」
始祖竜はユスティーナの前に立ち、じっと彼女を見つめる。
そのままの状態で、なにやらぶつぶつとつぶやいた。
竜が使う言語なのか、人に聞き取ることはできない。
意味もわからない。
ただ、解呪のためのものだろう、ということは予想できた。
「……エンテ」
最後に一言、小さくつぶやいた。
瞬間、パチンという音が響く。
風船が割れたような音だ。
「ふわっ」
ユスティーナがビクンと震えた。
音に驚いたというよりは、もっと別のなにかに反応した様子だ。
「ユスティーナ? 大丈夫か?」
「う、うん。なんともないけど……なんだろ? 少し体が軽くなったような……?」
「あっ!」
不思議そうにするユスティーナを見て、メルクリアが大きな声をあげる。
「ママ、元気になっているよ!」
「え、本当?」
「うん! すごく元気! 嫌な感じが消えているよ」
と、いうことは……
「解呪、完了だよ」
始祖竜は、どことなく誇らしげに言う。
いや。
元はと言えば、あんたが原因だからな?
とはいえ、素直に呪いを解いてくれたことはうれしい。
ここでごねられたり逆ギレされたりしたら、どうすることもできないからな。
「ユスティーナ……よかった」
「あわっ!?」
気持ちがあふれ、ついついユスティーナを抱きしめてしまう。
彼女は驚いたように体を震わせて……
でも、抱きしめられるままで……
そっと、抱き返してきた。
「……ボク、もう大丈夫なのかな?」
「ああ、大丈夫だ」
「ずっとずっと、アルトと一緒にいられるのかな?」
「いられるよ。ずっと一緒だ」
「メルクリアも産んであげられるのかな?」
「もちろん」
「そっか……えへへ、そっか」
ずっと気持ちが張り詰めていたのだろう。
ユスティーナは、そっと俺の胸に顔を埋めて……
少しの間、泣いた。