448話 あれ?
「はぁ……もう私の負けだよ。ホント、降参するしかないよ……」
ひどく疲れた様子で、始祖竜はそう言った。
なんだかんだで、子供からあれこれ言われるのが一番堪えたらしい。
げっそりとした様子で、ため息をこぼしている。
「通じ合い、絆がなければ、そもそもこの子はいない……そっか、そうなんだよね。そんなことも気づかないなんて、私は……はぁあああああ」
なにやら、ものすごく落ち込んでいた。
最初、出会った時の圧はどこへやら。
なにやらすっかり老け込んでしまったような感じで、すごくおとなしい。
ただ、しっかりと確認はしておかないと。
「えっと……その発言はつまり、俺とユスティーナのことを認めてくれる、っていうことでいいですか?」
「ものすごく癪だけど……いいさ、認めるよ」
「アルト!」
「ユスティーナ!」
俺達は互いに顔を見合わせて、
「「やったーーーっ!!!」」
抱き合い、喜ぶ。
感情が爆発して、ついついこんなことをしてしまったが……
今くらいはこうしてもいいだろう。
それくらいにうれしいことだ。
「あうー!」
ノルンも飛び込んできて、
「ボクもー!」
メルクリアも飛び込んできた。
始祖竜を説得できたことを、四人で一緒に喜ぶ。
「……そうしているところを見ると、私、すっごい悪者みたい」
始祖竜は、どこか拗ねた顔をして、そんなことを言うのだった。
――――――――――
「じゃあ、呪いを解除するね」
やっぱりやーめた、なんていう展開はなくて……
始祖竜はわりと素直に、俺達が望むまま、呪いを解除してくれるという。
納得はできないものの、ユスティーナに呪いをかけたことは、彼女なりの信念があってのこと。
それを撤回するということは、なかなかできることじゃない。
やはり始まりの竜ともなると、色々と違うのだろう。
「それで、ボクはどうすればいいの?」
ユスティーナがキョトンとしつつ、尋ねる。
「部屋の真ん中で立ってて。あ、他はこっちに」
言われるまま、始祖竜のところへ移動する。
なんでも、一緒にいると呪いにターゲットするのが難しくなるらしい。
「どうやって解除するの? えっと……もしかして、痛い? 注射みたいに、チクリってする?」
「私の呪いをなんだと思っているの……?」
始祖竜は呆れた様子で言う。
「特に痛くないし、あなたはそこでじっとしているだけでいいよ。数分で終わるから」
「へー、そんなに簡単なんだ」
「かける時も簡単だったからね。そこまで複雑な手順は必要としていないの。まあ、私がかけた呪いだから、他に解除できるヤツなんていないけどね」
どことなく誇らしげに言う。
でも、呪いのことで誇られてもなあ……
「さてと……それじゃあ、サックリと解除しますか」
始祖竜は凛とした表情に切り替えた。
そして、まっすぐにユスティーナを見つめて、手の平を向ける。
小さく、「ん」とつぶやいて……
「……あれ?」
それから、おかしい、というような感じで小首を傾げた。