438話 いつの間に?
昨日、老竜と話をして……
その時点では、まだユスティーナに呪いはかかっていなかったはず。
もしもかかっているのなら、フレイシアさんと同じように、なにかしら異変に気づいていただろう。
その後は……
みんなと合流して情報を共有。
成果がないことに落胆しつつ、家に帰り、メルクリアとノルンと一緒に過ごす。
そして夜は……
まあ、そこは省こう。
で、翌朝。
ほぼほぼいつも通りの朝を迎えて、フレイシアさんに出会うのだけど……
そこまでの間に呪いをかけられたのだろう。
でも、いつ?
そして、なぜ?
犯人の目的はわからないが、竜に呪いなんてものをかける以上、なにかしらの理由があるはずだ。
単なる愉快犯とは思えない。
なにかがトリガーとなって、犯人はユスティーナに呪いをかけたのだろうけど……
そのトリガーがわからない。
昨日は、いつもと変わらない日常を過ごしていただけなのに。
「……と、いうわけです」
改めてアルマさんとグレイシアさんを訪ねて、現状を説明した。
「……」
「えっと……?」
なぜか、グレイシアさんは一言も発することなく、黙ったままだ。
ちなみに、ユスティーナとアルマさんは別室だ。
今回のことで、さすがのユスティーナも怯えている。
アルマさんには、ユスティーナの心のケアをお願いしておいた。
「どうしたんですか?」
「ゆ……」
「ゆ?」
「許せんっ!!!」
突然、グレイシアさんがものすごい勢いで叫んだ。
その圧に吹き飛ばされてしまうかと思ったほどだ。
「ユスティーナちゃんに本当に呪いをかけるとは、断じて許せん!!! その愚か者を、今すぐブレスで焼き払ってくれよう!!!」
「よくいったわ、父さん! 私も協力する! 一緒に薙ぎ払いましょう!!!」
激怒するグレイシアさんに、ここぞとばかりに賛同するフレイシアさん。
いや、あの……
「そう言うってことは、犯人はわかっているんですか?」
「「うっ」」
「やっぱり、ただ怒りに叫んでいただけなんですね……」
グレイシアさんに相談をして大丈夫だろうか?
なんて、失礼な感想が浮かんでしまう。
「正直、俺達の方では心当たりがまったくなくて……なにかないでしょうか? どんな些細な情報でも構いません」
「そう言われてもな……」
「うーん……」
グレイシアさんとフレイシアさんは、悩ましい顔に。
ユスティーナの一大事になんとかしたいという思いはあるみたいだけど、犯人に心当たりはないようだ。
「あうー……」
「パパ……」
ノルンとメルクリアが不安そうな顔に。
事態が進行してしまい、ユスティーナのことをとても心配しているのだろう。
そんな二人の頭を撫でてやる。
「大丈夫。絶対に俺がなんとかしてみせるから」
そうだ。
このまま終わらせるなんてこと、ありえない。
メルクリアが時間を超えてまで危機を知らせに来てくれたんだ。
その行為を無駄になんてしない。
「ふむ」
落ち着いて、もう一度考えてみよう。
昨日から今朝の間にかけて、ユスティーナは何者かに呪いをかけられた。
犯人の目星はまったくついていない。
しかしながら、老竜の話によると、神竜を超える力を持っているだろう、とのこと。
そんな存在は限られている。
他の神竜か……
あるいは、老竜が言っていた始祖竜か。
でも、そんなことは……
「……いや、待てよ?」