434話 手がかりはゼロ
老竜が住む洞窟を後にして……
それなりの時間が経っていたことに気がついて、みんなと合流することにした。
寮の部屋に集まり、それぞれが集めてきた情報を交換する。
しかし、有力な手がかりはなくて……
小さな手がかりもなくて……
これから、どうすればいいのか?
どうするべきなのか?
行動の指針すら立てることができず、その日は解散になった。
「……ボク、ちょっと疲れちゃったから寝るね」
ユスティーナはそう言って、寝室に消えた。
老竜を頼り……
色々な話を聞いて……
みんなにも手伝ってもらって……
しかし、手がかりはゼロ。
いつ呪いにかかるかわからない恐怖は残ったまま。
さすがのユスティーナも、精神的に参っているのだろう。
「あうー……」
「ママ、大丈夫かな……?」
ノルンとメルクリアは心配そうだ。
「大丈夫だ」
二人を抱きしめる。
「あうー?」
「パパ?」
「ユスティーナは絶対に助けてみせる。メルクリアのがんばりを無駄になんてしない。だから、二人は安心しててくれ」
「……うん! ありがとう、パパ」
「よし。じゃあ、今日はもう遅いから寝た方がいい」
「あう!」
「はーい。ママは一人になりたいかもだから、私達はここで寝るね」
メルクリアは元気に言うと、ノルンと一緒にソファーに横になった。
そんなところで……と思うのだけど、二人共、体が小さいから問題ない。
枕と毛布をもってきてやると、二人はすぐに寝息を立て始めた。
「さて」
俺は俺でやることをやろう。
心を整えてから寝室へ。
「……」
ユスティーナはベッドの上で、膝を抱えるようにして座っていた。
その隣に座る。
「……アルト……」
「大丈夫か?」
「うん……大丈夫」
なんて言うけれど、ぜんぜん元気がない。
やっぱり、それなりに堪えているみたいだ。
「大丈夫じゃないだろう?」
「うっ、それは……」
「こんな時くらい、無理はしないでくれ。俺を頼ってほしい」
「でも、アルトに迷惑を……」
「好きな女の子に頼りにされるんだ。迷惑なんてことはない」
「うぅ……アルト!」
ユスティーナが抱きついてきた。
わりと本気の突撃なので、体を鍛えていなかったら危なかったかもしれない。
「ボク、どうなるのかな? どうなっちゃうのかな? し……死んじゃう、のかな……?」
ユスティーナはガタガタと震えていた。
ただ、それは死に対する恐怖じゃない。
それよりも……
「アルトと離れ離れになっちゃうのかな……? メルクリアっていう、かわいい女の子ができるのに……あんなに良い子を残していっちゃうのかな……? やだ、やだやだやだ……怖いよ、アルト」
こんな時でも、他の人のことを第一に考える。
ユスティーナらしい。
「ボク……ボクは……!!!」
「大丈夫だ」
ユスティーナを抱きしめる。
強く、強く。
ぎゅっと、抱きしめた。