419話 これでよし!
「「……」」
誘拐しようとした女の子は、実は竜だった。
その事実がよほど堪えたらしく、男たちは魂が抜けたような顔になっていた。
抵抗らしい抵抗もしないので、簡単に捕縛することができた。
あとは憲兵に連絡をすればいいのだけど……
「あうー」
くいくいと、ノルンが俺の服を引っ張る。
「どうしたんだ?」
「あう、あうううう、あうあう?」
「えっと……」
なにか訴えたいことがあるみたいだけど、詳細がわからない。
助けを求めてユスティーナを見る。
「あまりひどいことはしないであげて、だって」
どうして誘拐犯をかばおうとするのだろうか?
ユスティーナと同じく、俺も不思議そうな顔をしていただろう。
「あうー、あうあう」
「あー……うん、なるほど。そういうことか」
「今度はなんて?」
「この人間たちのおかげで仲直りできたから、だって」
「なるほど」
ついつい苦笑してしまう。
確かに、この誘拐犯たちのおかげでノルンと仲直りできたのだけど……
だからといって、自分を害そうとした相手を許してしまうなんて。
ノルンだからこそ、かな。
彼女はとても優しい子だ。
二度と寂しい思いをさせないように、注意しないと。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん!」
「あうー!」
――――――――――
その後……
誘拐犯を憲兵に引き渡して、いくらかの事情聴取を受けた。
問題になることはなく、むしろ犯罪を防いでくれたことに感謝された。
ノルンとも仲直り完了。
事件は無事に解決したのだけど……
「あうあうー♪」
「えっと……」
夜。
そろそろ寝る時間なのだけど、ノルンがぴたりとくっついて離れてくれない。
ケンカして離れていた分、今度はくっついていたいらしい。
「うー……」
ユスティーナの視線が痛い。
自分たちのせいで、と認識しているため、邪魔をすることはない。
ただ、それでも色々と悩ましいところはあるらしく、完全に割り切ることができない様子だ。
その気持ちはわかる。
よくわかるのだけど……申しわけないが、今は我慢してほしい。
「あっ」
ふと、なにか思いついた様子でユスティーナが声をあげた。
そして、
「えいっ」
反対側に抱きついてくる。
「ノルンがそっち、ボクがこっち。これで解決だね♪」
「解決……なのか?」
「あうあう♪」
ノルンも賛成らしく、にっこり笑顔だった。
「じゃあ、みんなで一緒に寝ようか!」
「あうー!」
傍から見ると、わりととんでもない状況なのだけど……
うれしそうな二人を見ていると、これはこれでいいか、と思い小さく笑うのだった。




