418話 ごめん
「それと、ごめん」
謝罪も忘れない。
しっかりと頭を下げた。
「あう……?」
「ノルンは怒っているんだよな? 俺たちが、その……二人のことしか考えてなくて、ノルンをほったらかしにしていたから」
「あうー……」
「ひどい話だ。反省したよ……俺たちはノルンの保護者なのに、そんなことをするなんて。いや。保護者じゃなくても、ひどいことだったと思う」
恋人ができたからといって、友達付き合いをやめてしまったら?
それは自分たちのことしか考えてなくて、周りが見えていないバカな行為だ。
そのバカな行為を俺とユスティーナはしていたわけで……
「ごめん」
「ボクもごめんね……」
ユスティーナと一緒に再び頭を下げた。
「あうー」
ややあって、ノルンはにっこりと笑った。
そして、俺とユスティーナの間に入り、それぞれ手を繋ぐ。
それから繋いだ手をブンブンと振り、楽しそうにジャンプをする。
よかった、許してもらえたみたいだ。
「ユスティーナ」
「うん?」
「二人の時間も大事だけど、ノルンと一緒にいる時間も大事だよな」
「うん!」
ノルンの笑顔を見ていると、よかった、と心の底から思う。
信頼を裏切らないように、笑顔を曇らせないように。
周りをしっかりと見て、がんばっていかないといけないな。
「それじゃあ、帰ろうか」
「いや、ちょっと待った」
ユスティーナは踵を返そうとするが、それにストップをかけた。
話によると、ノルンは怪しい男たちについていった、とのことだったけど……
その男たちはどうしたのだろう?
不思議に思っていると、
「あっ、いたぞ!」
「逃げようとするなんて、いい度胸だな!?」
どこからともなく二人組の男が現れた。
その外見は……うん。
怪しいの一言に尽きる。
悪党というのはこんな姿をしているのだろうな、というのを体現しているかのようだ。
俺とユスティーナは同時に動いて、ノルンを背中にかばう。
それから男たちを睨みつけた。
「なんだ、お前たちは?」
「はっ? それ、俺らのセリフなんだけど」
「おい、そのガキを渡せ。それと、さっさと消えろ。でないと痛い目を見るぞ」
「……」
典型的な悪党のセリフに、ついつい呆れてしまう。
どうやら、こいつらはノルンを誘拐しようとしたらしい。
見た感じ、本当に小悪党なのだろうけど……
だからといって、見逃すわけにはいかない。
次の事件を引き起こさないため、しっかりと捕まえておかないと。
驚異や圧は感じない。
武器は持っていないが、素手で問題ないだろう。
すぐに制圧をして……いや、待てよ?
ふと思い直して、ノルンを見る。
「ノルン」
「あう?」
「ちょっとだけでいいから、元の姿に戻ってくれないか?」
「あう!」
ノルンはびしっと敬礼してみせた。
どこで覚えたんだ……?
「おっ、ガキが自分から戻ってきたぜ」
「へへ、安全のために売り渡すか。悪くない選択だな」
男たちはなにか勘違いしているらしく、共に笑うのだけど……
「んー……あう!」
「「……は???」」
ノルンが本来の姿に戻ったことで、男たちの目が丸くなる。
ピタリと、時間が静止したかのように動きが止まる。
そして、
「「ぎゃあああああっ!!!?」」
男たちの悲鳴が街に響くのだった。