399話 いざダブルデート
ダブルデート当日。
俺とユスティーナは一緒に寮を出た。
デートは待ち合わせが基本!
なんてことを言われるかと思っていたのだけど、そんなことはなかった。
待ち合わせはしたかったらしいが、しかし、今日はダブルデート。
ならば、一緒に行くことこそが礼儀……らしい。
その辺りはよくわからないので、全部おまかせだ。
「ねえねえ、アルト。今日のボク、どうかな? どうかな?」
キラキラと瞳を輝かせて、そんなことを尋ねてきた。
そんなユスティーナは見たことのない服を着ていた。
白を基本として、わりとシンプルに整えられたコーディネート。
ただ、魅せるところはしっかりと魅せているなど、かわいらしさを忘れていない。
「かわいいよ」
「本当? ボク、かわいい?」
「ああ。なんていうか……うまくいえないが、天使みたいだ」
こういう時、褒め言葉のバリエーションが少ないことがもどかしい。
テオドールのように、うまく褒めたいのだけど……
でも、ユスティーナは気にしていないらしく、笑顔でふにゃりと顔をとろけさせる。
「えへ、えへへへ。アルトに褒められちゃった」
照れるユスティーナもかわいい。
なんてことを言えば、さらに照れるのだろうか?
気になるものの、そんなことをしていたら先に進まないのでやめておいた。
ユスティーナと肩を並べて歩いて、竜の彫刻が飾られている広場へ。
待ち合わせ場所としてよく利用されている場所だ。
「えっと、テオドールは……」
「あ、いたよ! おーい!」
少し離れたところに、テオドールとクラリッサ先輩の姿が見えた。
時間ぴったりだ。
「やあ」
「おはよう、二人共」
テオドールだけではなくて、クラリッサ先輩の笑顔もとてもさわやかだ。
どことなく品があり、平民とは思えない。
貴族と言われても納得してしまいそうだ。
「僕達の頼みを聞いてくれて、ありがとう」
「礼を言うことじゃないさ。俺達も楽しみにしていたからな」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「はいはい、そういう挨拶はいいから、早くデートにいこう? ボク、もう待ちきれないよ」
「ふふ、そうね。遊びに行きましょうか」
女性陣が先導する形で、ダブルデートが開始された。
最初の目的地は劇場だ。
そこで、恋愛をテーマにした劇を見ることになっている。
チケットは予約済みでぬかりはない。
俺達は劇を鑑賞して……
「くっ……まさか、あんな展開になるなんて」
「あれは反則だろう……僕としたことが、ここまで心を揺さぶられてしまうなんて」
俺とテオドールは劇に心を奪われて、涙すら浮かべていた。
一方の女性陣は……
「ねえねえ、クラリッサはどうだった? おもしろかった?」
「んー……そうね。おもしろかったわ。ただ、ちょっと理想的すぎるかな、とは思ったわね」
「あ、それボクも思った。とっても綺麗な恋愛だったんだけど、ちょっと綺麗すぎたよねー」
「劇だから仕方ないといえば仕方ないのだけど、もう少しリアリティがほしいわね。そうすれば、もっと感情移入できたかも」
「その辺りは難しいよねー」
なんていう感想をこぼしていた。
あの感動の物語を見て、物足りないと言えるとは。
なんていうか、女性はたくましい。
対して、簡単に感動してしまう俺とテオドールは、いったい……?
劇を鑑賞して楽しむはずが、妙な価値観で思い悩むことになってしまうのだった。