表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
395/459

391話 アルモートへ

 フィリアを発つ日がやってきた。


 修学旅行で訪れたのだけど、でも、予想外の事件が多発して……

 別の意味で思い出深い時間を過ごすことになった。


 良い思い出とは言えないが……

 ただ、なかったことにしたいとは思わない。

 この経験は、きっと、どこかで活きてくるだろう。


「今回はありがとうございました」


 王城の中庭に出ると、わざわざアリーゼが見送りに来てくれた。


 聖騎士隊長であり、フィリアの王にそんなことをしてもらうなんて、と思わないでもないのだけど……

 彼女なりの誠意なのだろう。


 それを否定することは失礼なので、素直に受けておいた。


「アルモートへ戻り、再び学業を?」

「そうですね」

「公の場ではないので、その口調はやめてください。最初、会った時と同じで構いませんよ。ああ、私のは癖のようなものなので、気にせず」

「ですが……」

「その方が気楽なのです。それとも、命令しましょうか?」

「……わかったよ」


 どうやら、普段のアリーゼは、こんな風にちょっとした茶目っ気があるらしい。

 苦笑しつつ、頷いた。


「アルトなら、もう学ぶことはないと思いますが」

「そんなことはないさ。まだまだ未熟だから、もっと色々なものを取り込んでいかないと」

「真面目なのですね。そういうところがとても好ましく思います」

「えっと……」

「どうですか? 卒業後はフィリアにやってきませんか? 聖騎士に推薦しますよ」

「えっ」

「本気ですよ?」


 冗談だろう、と言いかけたところで、先を制するようにそう言われてしまった。


 確かに、アリーゼは真面目な顔をしていた。

 ウソや冗談を言っている様子はない。


「えっと……」

「返事は今すぐでなくて構いません。期待だけさせていただきます」


 つまり……すぐに断らないで、じっくりと考えてほしい、ということか。

 可能性を残す辺り、やはりアリーゼは本気で言っているのだろう。


 そこまで評価してくれることは素直にうれしい。

 でも、俺は……


 いや、その先を考えるのはやめておこう。

 アリーゼがいうように、じっくり考えた方がいいだろう。


「アルトー! まだー!?」

「そろそろ時間でありますよ」


 少し離れたところにいるユスティーナが、少し不機嫌そうに言う。

 その隣にいるククルも、どことなくムスッとした様子だ。


 帰りはユスティーナに運んでもらうことになっている。

 本人曰く、「ボクならひとっ飛びだよ!」とのことだ。


 そして、ククルも一緒にアルモートへ向かうことに。

 今までと同じく、なにかあればククルの力を頼りにしていいらしい。

 アリーゼとしては、そうすることでアルモートとの友好の証としたいのだろう。


「もっと色々な話をしたいところですが、彼女たちは限界のようですね」

「だな」


 アリーゼが優しい笑顔を作り、そっと手を差し出してきた。


「改めて、ありがとうございました」

「こちらこそ」


 その手を握り返す。


「フィリアとアルモートの間に、永遠の友好が結ばれることを祈ります。そして、私達の間にも」

「そうあれば、とても素晴らしいことだな」


 そのために、俺にできることがあれば努力しなければ。


 平和を脅かす者がいれば戦う。

 人と竜の友好を乱す者がいれば、武器を取る。


 そんな決意を改めて胸に抱いた。


「では、また」

「ああ、また」


 さようならは言わない。

 そして、別れは笑顔で。


 こうして……


 長い長い修学旅行は終わりを告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[気になる点] そういえば、気になってたのですが アルモートには、人間の王族で"王女様"はいたりするのでしょうか。まだ、見たことがないのでどうかなと?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ