表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
393/459

389話 どういうこと?

「どうしたの、アルト? いきなり大きな声を出して」

「いや、だって……勲章?」

「うん、勲章」


 聞き間違いかと思ったが、そうではないみたいだ。

 ユスティーナは、再び勲章と繰り返した。


「どうして、勲章なんて……?」

「えっと……アルト、それ、本気で言っている?」


 なぜか、呆れたような目を向けられてしまう。


「はぁあああ……アルトは謙虚なところが美徳だと思うけど、でも、ちょっと行き過ぎだよねー。もうちょっと欲張りというか、ドヤ顔してもいいと思うよ?」

「なんの話だ?」

「でもでも、やっぱりそこがアルトらしいな。ボク、そういうところが大好き♪」


 一人で自己完結されてしまった。


 それはそうとして。


「具体的な話を教えてくれないか?」

「具体的もなにも、そのままだよ。前代未聞の事件を解決に導いたアルトに、勲章が贈られることになったの」

「……冗談だろう?」

「ホントだよ」

「マジか……」


 妙な疲れを覚えてしまい、ベッドに寝た。


「わわっ。アルト、大丈夫?」

「……体は大丈夫だけど、心はそうでもないかも」

「もう。そんなに驚かなくてもいいじゃない。あれだけの事件を解決してみせたんだから、勲章の一つや二つ、もらえるのが当たり前だと思うよ」

「俺一人で解決したわけじゃないのに……」

「それでも、だよ。アルトが事件の突破口を開いたのは確かだもん。あれ、ボクが暴れてなかったとしても、聖堂が破壊されて国が崩壊、なんて可能性もあったからね。いわば、アルトはフィリアの救世主なんだよ」

「すごい大きな話になっているな……」

「それだけのことをやってみせたんだよ。もっと、胸を張っていいと思うな」


 ユスティーナはにこにこ笑顔でこちらを見つめてきた。

 俺が勲章をもらうことがうれしいのだろう。


 その気持ちはわかるつもりだ。

 俺も、ユスティーナが勲章をもらうことになれば、自分のことのように喜ぶだろう。


 とはいえ……


「まさか、こんなことになるとは」


 いざ自分の身に降りかかるとなると、なかなか実感が湧いてこない。

 分不相応なのではないか?

 そんなことばかり考えてしまう。


「うれしくないの?」

「いや、まあ……うれしいといえば、素直にうれしい」


 ここはアルモートじゃなくて、フィリアだ。

 他国で勲章をもらうなんて、そうそうあることじゃない。

 快挙と言っても問題ないだろう。


 幼い頃に夢見た英雄に一歩、近づくことができたみたいで、それはうれしい。


 ただ……


「俺なんかが、って思うんだよな」


 元いじめられっ子のせいか、なかなか自己肯定ができない。

 無闇に自分を卑下することはなくなったものの、誇らしくできるかというと、それは別の話だ。


「アルト」


 そっと、ユスティーナが俺を抱きしめた。


 柔らかい感触と、甘い匂い。

 その二つに包まれて、ドキドキしたり慌てたりすることはなくて、不思議と心が落ち着いた。


「ボクは、ずっとずーっとアルトのことを見ていたよ? すごくがんばってきたことを知っているよ?」

「……」

「だから、こういう時は素直に喜んでいいの。それで、ボクも一緒に喜ばせてくれるとうれしいな」

「ありがとう」


 ユスティーナの言葉で、いくらか気持ちが楽になった。


 いつもそうだ。

 彼女は俺のことを助けてくれる。

 ユスティーナがいなければ、俺は、とっくにダメになっていただろう。


「いつもありがとう」

「うん、どういたしまして」


 ユスティーナはとてもうれしそうに言いつつ、さらに、ぎゅうっと俺を抱きしめるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ