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373話 激突する信念

「竜を排除したいのは、竜のため。愚かな人間から引き離したいからですよ」


 予想外の答えだった。

 リベリオンのメンバーは、竜に対してなにかしらの恨み、怒りを抱いているものだと思っていたけど……


 そんなことはなくて、イヴは竜のことを第一に考えていた。

 竜を大事に思うからこそ、人間と関わり、つまらないことに巻き込みたくない。


「どう思いますか?」

「……正直なところ、わからないでもない」


 セドリックを始め、色々な人の顔が思い浮かんだ。

 どうしようもない者はたくさんいる。

 彼が竜に危害を加える可能性はないとは言い切れない。

 むしろ、いずれ凶行に及ぶだろうと、想像できた。


 それだけ欲望というものは厄介なのだから。


「なら、私と一緒に歩みませんか?」

「断る」


 即答した。

 俺の答えは想像できていたのか、イヴは表情を変えない。


「確かに、どうしようもない人はいる。あんたの気持ちもわからないでもない」

「なら……」

「でも俺は、自分にそこまで絶望していない」


 セドリックのようなどうしようもない人もいれば、グランやジニーのような優しく強い人もいる。

 そういうものだ。


 勝手に一方向だけを見て、人間全てをわかったつもりになるというのは、驕りでしかないと思う。


 そもそも……

 人間が竜に害を加えるかもしれないから、切り離す。

 極端すぎやしないだろうか?


 そういう可能性があることは否定しないが、なら、まずはそうならないように努力するべきだろう。

 その努力をしようとせず、即座に最終手段にたどり着いてしまう。


 それは思考を放棄しているのと同じだ。

 より良い未来を掴み取るため、普通は、あれこれと考えるものだ。

 でも、それをしないで……

 こうするべきだと即断してしまう。


 そんな短絡的な思考で、掴み取ることができる未来に大した価値はない。

 それが俺の考えだ。


 まあ、あくまでも俺の考えなので、これが正しいと彼女に押し付けるつもりはない。

 彼女は彼女で、あれこれと考えた末に出した結論なのだろう。


 否定はする。

 受け入れるつもりもない。

 でも、好きにさせるつもりは……欠片もない!


「俺は、人間と竜は友達でいられると思っている」

「私は、そうは思いません。人間などとはすぐに離れるべきです」

「色々と議論したいところだけど……時間がないし、あと、どれだけ討論を重ねても平行線にしかならなそうだな」

「そうですね。その点は同意します」


 なら、


「力づくでいかせてもらう」


 拳を構えた。


 体はボロボロ、足取りも危うい。

 普通に考えて、まともに戦えるわけがないのだけど……

 でも、不思議と力がみなぎっきた。


 イヴの話を聞いたからだろうか?

 彼女の信念を否定しなければいけない。

 そんな使命感のようなものが湧き上がり、力も満ちてきた。


 自分で自分を否定するような信念、認めてたまるものか。

 絶対に阻止する。


「やれやれ……報告を聞いていた限りでは、あなたはもう少し落ち着いていると思っていたのですが」

「想像を裏切り、悪かったな」

「いいえ、気にせず。作戦の成否を抜きにしても、これはこれで楽しいので。拳をぶつけることになろうと、まともな人間と競うことは有意義とも言える時間ですからね」


 イヴは不敵な笑みを浮かべると、どこからともなく短剣を取り出した。

 それを両手に構え、油断のない表情でこちらを睨む。


「煽られているように聞こえるが」

「それは失礼」

「……今までにないタイプで、やりづらいな」

「なら、そこで待機してても構いませんが?」

「そうはいかない」


 みんなを……

 そして、ユスティーナを守る。取り戻してみせる。

 この手に!

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
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