365話 絶対に
「くっ、どうすれば……!」
ユスティーナを押し止めるべく、ククルは必死になって魔法を制御する。
しかし、早くも限界が近づいていた。
聖騎士専用の魔法でも、ユスティーナの巨大な力を完全に抑えることはできない。
せいぜい、多少の時間を稼ぐだけ。
それもすぐに無理が来て……
魔法が破綻、崩壊しようとしていた。
「こうなれば、もう……」
暴走するユスティーナは、完全に正気を失っている。
仲間たちの声を受けても元に戻らない。
こうなってしまった以上、テロリストたちを皆殺しにするまで止まらないだろう。
いや。
もしかしたら、そこで終わらずに、憎しみが人間そのものに拡大して……
フィリアを滅ぼすまで暴れまわるかもしれない。
神竜が人類の敵となる。
その予言が的中しようとしていた。
今ならまだ間に合う。
ここで仕留めてしまえば、国に被害が及ぶことはない。
それこそがククルに与えられた役目だ。
「自分は……」
聖騎士の務めを果たすのか?
そのために友達を手に掛けるのか?
ここで……諦めてしまうのか?
「自分は……!!!」
ついにククルの魔法が破られた。
さらに、ジニー達の魔法も立て続けに突破されてしまう。
怒り狂うユスティーナを止める者はいない。
彼女は自由だ。
自由に怒りをぶつけ、破壊を広げていくだろう。
「エルトセルク殿!!!」
ククルは、改めて大剣を構えた。
その切っ先をユスティーナに向けて……
「絶対に、自分が止めてみせるのであります!」
ククルは、聖騎士の任務よりも友達を選んだ。
下手をしたら大きな被害が出てしまう。
聖騎士失格だ。
それでも……
ここで友達を手にかけるなんてことは、絶対にできない。
彼女の信念がそれを拒否する。
友達を殺して……
それで得られる平和なんて意味がない。
ユスティーナも一緒でなければ、そこに価値はない。
なにもないのだ。
「いくであります!」
「アウー!」
ノルンは、応援する、というような感じで吠えて、ククルと一緒に突撃した。
心強い味方だ。
ククルは小さな笑みを浮かべて、ユスティーナに向けて大剣を振る。
ユスティーナは完全に理性をなくしてしまっている。
こうなると、もう言葉は届かない。
多少強引ではあるものの、一定のダメージを与えて動けなくなるようにするしかない。
「はぁあああああ!!!」
ククルは全力を出して、極大の斬撃を叩き込む。
手加減は一切していない。
そんなことをしたら、こちらが逆にやられてしまう。
全力を出すものの……
しかし、命を取らないように、さじ加減を間違えないようにする。
かなりの無茶無理が要求されるが、やるしかないのだ。
ククルは覚悟を決めて、圧倒的不利な戦いに身を投じて……
「グギャアッ!?」
突如、ククルのものではない斬撃が走り、ユスティーナの体を傷つけた。
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