364話 神竜VS古代竜
「オマエモ、ジャマヲスルカ……!」
ユスティーナの赤い瞳が、同じ竜形態になったノルンを睨みつけた。
眼圧そのものに力があるかのように、周囲で様子を見守っていた生徒たちが小さな悲鳴をあげる。
いくらかの生徒は失神してしまっていた。
それほどまでに神竜の放つオーラはすさまじい。
一般人なら即座に失神。
それなりの訓練を積んだ者でも、金縛りに遭ったかのように動けなくなってしまうだろう。
「……」
ただ、ユスティーナの圧はノルンに通じない。
多少、格が落ちるとはいえ……
ノルンは最強に近いと言われている、古代竜エンシェントドラゴンなのだ。
相手が神竜バハムートだとしても、その圧に飲み込まれることはない。
「ドケッ!」
「……」
ユスティーナが吠えるが、ノルンはなにも答えない。
ただ、無言で行く手を塞いでいた。
「ドケェッ!!!」
痺れを切らした様子で、ユスティーナが動いた。
頭を低くして、全身を槍のようにして突撃する。
ノルンはふんばり、ユスティーナの突撃を真正面から受け止めた。
「グァ!」
思わず悲鳴がこぼれてしまう。
それでも、ユスティーナの暴走を食い止めようと、必死になって彼女にしがみつく。
両手でユスティーナの巨体を掴み……
さらに、尻尾を鞭のようにしならせて絡みつける。
おまけに、巨大な翼で覆い、即席の檻を作り上げた。
「クウ!?」
ユスティーナは暴れるが、ノルンはぴったりとくっついて離れない。
これは予想外の展開だったらしく、彼女の口から焦りに似た声がこぼれる。
「コノッ……ウットウシイ!」
ユスティーナはデタラメに暴れ回り、ノルンを振り払おうとした。
その度に爆音が響いて、床が大きく揺れて……
まるで、何度も大きな爆弾が爆発しているかのようだ。
それでも展望台が無事なのは、聖堂を起点とした結界が展開されている影響だろう。
「ウー……!!!」
ユスティーナが暴れる度に、ノルンの体が傷ついていく。
当たり前だ。
ノルンは、一度も攻撃を行っていない。
そして、防御も行っていない。
体を無防備に晒しつつ……
強引にユスティーナを抑え込もうとしている。
そんなことをすれば傷つく以外の選択肢がない。
それでも、ノルンはユスティーナを止めようとした。
こんなことはしてほしくない。
元の優しくて元気なユスティーナに戻ってほしい。
そう願いつつ、必死になってしがみつく。
「白銀の聖域っ!!!」
「ガッ!?」
ノルンを援護すべく、ククルも行動を起こした。
聖騎士のみが使える拘束魔法を使用して、ユスティーナを止めようとする。
「「黄の三連っ!!」」
ジニーとアレクシアも、ささやかながらも魔法で援護をして……
「おいっ、誰か拘束用の縄を持ってこい!」
「竜を封印する魔道具を持っている者はいないかい!?」
グランとテオドールも行動を起こして、それぞれの方法でユスティーナを拘束しようとした。
誰もユスティーナを排除しようとは考えない。
傷つけることなく、穏やかに止めることを第一に考えている。
そんな友達の想いを見せられて……
「ジャマヲ……スルナアアアアアッ!!!」
しかし、ユスティーナは止まらない。
諸事情により、次回の更新はお休みさせていただきます。
詳細は活動報告にて。




