357話 最悪の……
「はぁっ!」
テロリストの攻撃を避けて、逆にカウンターを叩き込む。
踵落としをするような感覚で、相手の膝を撃ち抜いた。
膝の骨を砕く確かな手応え。
テロリストは悲鳴を上げて転がり……
その顎を蹴り上げて、意識を刈り取る。
「ふう……だいぶ数は減らしてきたが」
「このガキが!」
「ふっ!」
どこからともなく現れたテロリストをカウンターで撃退した。
「まだまだ残りは多そうだな」
いったい、どこに隠れていたのか?
ほとんどの人に嫌われている、あの虫みたいだ。
「でも、戦況はこちらが有利だ」
押し切ることはできないものの、押し切られることもない。
非戦闘員の安全はしっかりと確保できていて……
こちらの被害も少ない。
みんな、とてもがんばってくれていた。
その中で大活躍を見せているのは、とある三人だ。
「あなたたちの悪は、自分が裁くのであります!」
ククルは、巨大な剣を己の手足の一部のように軽々と振り回していた。
一応、手加減はしているらしく、剣の腹を叩きつけている。
でも、巨大な鉄塊を叩きつけられるのと同じ。
一撃を食らったテロリストは大きく吹き飛び、そのまま昏倒した。
「あうーっ!」
ノルンはぐるぐると腕を回して、力を溜めて……
そしてパンチ。
テロリストは紙のように吹き飛んだ。
あれ、生きているだろうか……?
「ふふふ、好き勝手やってくれた仕返しをするよー!」
ユスティーナは、実に生き生きとした顔で、テロリストを一人ずつ殴り飛ばしていた。
色々とされていたみたいだから、相当に鬱憤が溜まっていたのだろう。
殴って、殴って、殴り飛ばして……
昏倒したテロリストの山を積み上げていく。
「のんびりしていたら仕事がなくなるな」
ふと見ると、ユスティーナがこちらに手を振っていた。
がんばっているところ、見てる?
すごいでしょ?
というような感じで、褒められることを待っている犬みたいだ。
竜だけど、そういう犬っぽいところがあるんだよな。
苦笑しつつ、俺も他のテロリストの掃討に……
「アルトさん」
イヴさんに声をかけられた。
彼女は魔法は使えるものの、戦闘は得意じゃない。
非戦闘員を安全な場所に誘導することを頼んでいたのだけど……
「イヴさん? ここはまだ危ないので……」
「すみません。どうしても、お話したいことがあって」
「なんですか?」
イヴさんはとても真剣な顔をしていた。
よほどのことなのだろう。
不思議に思いつつ、彼女に近づいていく。
そして……
「ごめんなさい」
突然、彼女が体を寄せてきた。
「……え?」
ほぼ同時に、腹部が焼けるような感覚。
視線を落とすと……血に濡れた短剣が見えた。
『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、
ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。
よろしくお願いします!