特別話 その2
「祝!」
「落ちこぼれ竜騎士、神竜少女に一目惚れされる」
「3巻、発売!」
「あうー!」
ユスティーナ、アレクシア、ククル、ノルンの四人が声を揃えて言う。
みんな笑顔で、とても楽しそうだ。
それはいいのだけど……
「なあ、ユスティーナ」
「なに、アルト?」
「これはどういう話なんだ? なんで、俺たちはこうして集まっているんだ?」
「前と同じで、ボクたちの活躍が収められた本が発売されることになったんだよ。しかも、三冊目!」
「これはもう、お祝いをするしかありませんわ」
「それならばと、自分も参加させてもらったのであります!」
「あうあう」
なるほど。
よくわからない。
「アルト、よくわからないって顔をしているね」
「よくわかったな?」
「アルトのことだもん、なんでもわかるよ。えへへー」
こういう時も、グイグイとアピールすることを忘れていない。
女性はたくましいな、と妙な感心をしてしまう。
「まあ、この前と同じ宣伝っていうのは、なんとなくわかった」
どうしてみんなが集合しているのか、そこはよくわからないが。
まあ、深くは聞かない方がいいのだろう。
「なら、今回も3巻の内容に軽く触れて……」
「甘いです、アルトさま」
「今回は特別なのであります!」
いつも通りに宣伝をしようとしたら、いきなりダメ出しをされてしまう。
「な、なにがダメなんだ?」
「アルトさま、今回はなんと……」
「水着回なのであります!」
「水着……?」
「うん。3巻は海の街を舞台にしているから、もちろんというべきか、ボクたちの水着が披露されるんだよ」
「なるほど」
「少し恥ずかしいのですが……アルトさまに喜んでいただけるように、大胆な水着を選んでみました」
うん、まって?
それだと、俺が大胆な水着が好き、という印象が受け付けられるじゃないか。
「ボクも、けっこうチャレンジしたよ!」
「あうあう!」
ユスティーナに続いて、ノルンも元気よく頷いてみせた。
そんな中、ククルは悔しそうな顔に。
「くっ……自分はそこまで攻めておらず。悔しいのであります」
「悔しがるようなことなのか、それ?」
「それは、まあ……自分も女の子なので。アルト殿に振り向いてもらえるのならば、それに越したことはないというか、なんというか」
「むっ、新しいライバルが」
「油断できませんね」
宣伝の最中に争わないでほしい。
「ほら、話を戻すぞ」
「はーい」
「と、いうわけで……」
「3巻は水着回となっているのであります!」
「もちろん、それだけじゃないよ? WEB版をベースにしつつ改稿しているから、たくさんの人が楽しめる内容になっているんだ」
「改稿の量は今までで一番らしいです。その分、新鮮な気持ちで読むことができるとか」
三人は並んで笑顔を振りまく。
こういう時は息ぴったりだ。
「絶対、手に取ってくださいね」
「お願いするのであります!」
「ボクとの約束だよ?」
「あうー!」
「それじゃあ……」
「ちょっと待ったぁあああああ!!!」
最後に俺がまとめようとしたところで、第三者の声が乱入してきた。
振り返ると、とても焦った顔をしたジニーの姿が。
「ジニー? どうしたんだ?」
「どうしたんだ、じゃないわよ! なんであたしがハブられているの!? せっかくの宣伝なんだから、あたしもいないとダメでしょ! 兄さんとかテオドールはどうでもいいけど!」
さりげなくひどいことを言っているな。
「ジニーさんは、家のお手伝いで忙しいと聞いたので……」
「そうそう。これ以上、ライバルが増えると大変だから黙っていた、なんてことはないよ?」
「あんたら……」
ジニーのジト目を受けて、ユスティーナとアレクシアは目を逸らした。
「まあいいわ。こうして間に合ったし。じゃあ、これからあたしがみっちり一時間、3巻についての解説と宣伝をして……」
「あ、悪い。もう時間がないんだ」
「え!? なにそれ!?」
「じゃあ、まとめるな」
「ちょ、まっ……!!!」
ジニーがなにか言おうとするが、ユスティーナとアレクシアに左右を固められて、そのままどこかへ連れて行かれてしまう。
二人共、容赦ないな……
若干、汗をかきつつも話を締める。
「『落ちこぼれ竜騎士、神竜少女に一目惚れされる』3巻、もうすぐ発売だ。よろしくお願いします」
「あうー!」