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355話 アシュレイの狙い

「……動いたか」


 聖騎士の強行突入。

 それとほぼ同時に、人質の学生たちが暴れ始めた。


 そんな報告をしてきた部下はとても慌てていたが……

 しかし、アシュレイは落ち着いていた。


 部下に話はしていないが、これは、ほぼほぼ想定通りの展開。

 多少の誤差はあるものの、本当の計画通りに事が進んでいた。


「た、隊長、どうしましょう!?」

「……慌てるな。聖騎士の強行突入は、想定できたことだ。バリケードの前で迎撃。時間を稼げ」

「しかし、それでは爆弾を守ることが……」

「あれはそう簡単には解除できない。問題はない」

「わ、わかりました」


 部下は一礼して、仲間の応援に駆けつけるために部屋を出た。


 聖堂の最深部……

 大司教の部屋に残ったアシュレイは一人になる。


「……」


 特になにもない壁をじっと見つめて、


「……滑稽だな」


 ため息を一つこぼした。


 部下たちは、歪んでいるものの己の信念に従って動いている。

 仲間のため、フィリアの未来のため。

 信じるものを勝ち取るための戦いをしている。


 しかし、アシュレイは違う。


「俺は……ただの復讐だ」


 今はテロリストに身を堕としているが、アシュレイもかつては善良な市民だった。

 妻は事故で他界してしまったものの、大事な一人娘がいた。


 母はおらず、父親のみ。

 間違った方向に育たないように、時に厳しくしないといけない。


 でも、ついつい甘やかしてしまう。

 お菓子が食べたいと言えば、それを叶えてしまうくらい、かわいがっていた。


 ……ある日、娘が病にかかった。

 感染力が強く、そして、致死率も高い厄介な病だ。


 他の人にうつさないようにと、娘は隔離された。

 ろくな治療を受けられず……

 そして死んだ。


 そうした国の非情とも言える対策により、凶悪な病は大きく広がることなく収束した。

 犠牲者も最小限で済んだ。


 しかし、それを喜べというのか?

 娘が犠牲になったことを納得しろというのか?


 否。


 そのようなこと、できるわけがない。

 大義は国にあるかもしれない。

 しかし、その大義に踏み潰された者がいる。

 それを良しとしていいわけがない。


「こんな国……滅ぼしてやる」


 許せない。

 許せない。

 許せない。


 最愛の娘を奪った国なんて必要ない。

 存在していいわけがない。


 全て……消してやる。


 その魂は憎悪に染まりきり……

 アシュレイは、黒い黒い感情に突き動かされていた。


「絶対に復讐してやるぞ」


 聖堂を爆破して、結界を消滅させる。

 それが失敗したとしても、アルモートからやってきた竜の王女を暴走させる。


 そして……


「あの女にも話していないが、さらにもう一つ、作戦がある……」


 三段構えの作戦だ。

 いや。

 復讐劇だ。


 大義を振りかざす傲慢な国に、必ず復讐の刃を突きつけてみせる。

 アシュレイは暗い笑みを浮かべた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[良い点] 憎しみは理解しても抑えきれないものなの・・?
[一言] アシュレイさん、気持ちはわかるけどよくあるお国のせいだ!さんじゃないか… 情熱が別の方向に向かえば歴史にいいほうで名を残せただろうに
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