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350話 運命の時間

 夜の帳が降りて、街が暗闇に包まれた。


 あちらこちらで明かりが灯る。

 その光は瞬く間に街中に広がり……

 星が地上に降りたかのように、フィリア全体が輝くように。


「綺麗な夜景だけど……」


 今はそれを楽しんでいるヒマはない。

 時計を確認すると、作戦開始まであと3分だった。


 3分後にアリーゼたちが突入を開始して……

 同時に、人質の安全を確保するために俺たちが動く。


 成功する確率は……計算したくない。

 失敗する可能性も考えたくない。


「大丈夫ですか?」


 こちらを気遣うように、イヴさんが声をかけてきた。

 笑みを返してみせる。


「はい、大丈夫です。緊張はしますが……でも、やるべきことをやるだけなので」

「大変なことに挑もうとしているのに、簡単に言うんですね」

「簡単に言っているつもりはないですけど……まあ、マイナス思考になっても仕方ないので」


 「それに」と間を挟み、絶対的な決意と共に言う。


「絶対に助けないといけない子がいるので」


 グランとジニー。

 アレクシアとテオドール。

 ノルンにククル。

 クラスメイトや、同じ学生のみんな。


 そして……ユスティーナ。


 なにがなんでも助けてみせる。

 傷一つ負わせてなるものか。


「少し気負いすぎているように見えますが、でも、その方がいいのかもしれませんね」

「たしなめられるかと思っていました」

「目的がハッキリとしている方が、人はよりがんばることができますからね。ただ、一人で無茶はしないでください。微力ながら、私もサポートしますので」

「ありがとうございます」


 イヴさんは、直接的な戦闘力は低いらしい。


 ただ、魔法の腕は優れている。

 テロリストをやり過ごす時に見せた認識阻害の魔法で、その腕は十分に証明されている。

 そんな彼女がサポートしてくれるのなら、とても頼もしい。


 ……とはいえ。

 ちょっとした懸念もあるんだけどな。


 まあ、その懸念が的中する可能性は低いと思うし……

 気に留めておく程度にしよう。


「1分前です」


 イヴさんの合図でさらに気が引き締まる。


 バクバクと心臓が高鳴る。

 緊張する。


 でも、それ以上に、なんとかしてみせるという気合の方が強い。


「30秒前」


 俺はモップの柄を手にした。

 槍を調達することができなかったため、代わりに用意したものだ。


 攻撃力はまったく期待できない。

 とはいえ、なにもないよりかはマシだ。


「10秒前です」


 イヴさんの声にも緊張が含まれているような気がした。

 なんでもできる人に見えていたのだけど、そんなことはないらしい。


「……」


 俺は目を閉じた。

 そして、呼吸を最低限に。


 そうして、心を研ぎ澄ませる。

 感覚を最大限に。

 深く静かに意識を広げる。


 そして……


「いこう!」


 心の中でカウンロゼロを刻み、俺は駆け出した。


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別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
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