341話 地下を目指して
まずは情報交換を行う。
俺は、テロリスト達の情報を提供して……
イヴさんからは、聖堂の構造について教えてもらった。
長くフィリアに滞在していることもあり、そこそこ詳しいらしい。
「……なるほど、ここは地下もあるんですね」
「はい。いざという時の避難所にもなっているため、かなり深いところまで」
知らなかったことを知ることができた。
それはいいのだけど……
あいにく、俺もイヴさんも大きな情報は持っていない。
互いの情報をすり合わせても、犯人の本当の目的はわからず……
また、事件解決の糸口も見えてこない。
「イヴさんは、犯人の目的についてなにか知りませんか?」
「すみません、それはわかりません。ただ、この大量の爆薬を見る限り、ろくでもないことを企んでいるのは間違いなさそうですが」
「……そうですね」
俺とイヴさんの視線が爆薬に向けられる。
「こんなものが爆発したら、どうなるか……急いでなんとかしないと」
「エステニアくんは、爆弾の解体技術は?」
「ありません。イヴさんは?」
「少しはあるのですが……」
「あるんですか!?」
驚きだった。
一般人にしか見えないのだけど……
実は、特殊な訓練を積んだ過去があるのだろうか?
「正確に言うと爆弾の技術や知識ではなくて、魔法による小さな結界の展開ですが」
「それは、確かけっこう貴重な力だったはずですが……」
「これでも五大貴族ですから。色々と苦労して、習得したんです」
どのような経緯なのか、そこが気になるのだけど……
今はそこを掘り下げる時じゃないと、話を流す。
「結界を展開して、その中で爆弾を起爆させる。そうやって、処理をする方法があるのですが……」
「その顔だと、なかなか難しい?」
「ですね。これだけの量の爆弾を包み込む結界を展開することはできず……また、仮にできたとしても、おそらくは耐えきれずに結界が崩壊してしまうかと」
「そうですか……」
もしかしたら、と思ったのだけど……
そうそう、うまい展開はないか。
残念だ。
「そうなると、やっぱり、外と連絡を取ることが必須ですね」
「はい。外にいる聖騎士の方なら、なんとかできるのではないかと」
「問題は、どうやって連絡をとるか」
テロリストから奪った魔道具は、連中も聞いているため使用できない。
外へ通じる道も断たれている。
バリケードを破壊して、無理矢理通ることもできなくはないだろうが……
それをしたら、戻ってくることは叶わないだろう。
それはダメだ。
ユスティーナやみんなが人質にされている以上、俺だけ安全地帯に逃げるなんてことはできない。
「……一つ、案があります」
ふと、思い出した様子でイヴさんが言う。
「隠れている時、偶然、テロリスト達の会話を聞いたのですが……どうも、地下に通信用の設備があるみたいです」
「それは本当ですか?」
「自分の目で確かめたわけではないので、断言はできませんが……そういう話を聞いたのは、事実です」
「なるほど」
通信用の設備か。
聖堂は結界の役割を果たしていて、いざという時は避難所にもなる。
そんな場所なら、通信設備があってもおかしくはない。
テロリスト達が持ち込んだものではなくて、元々備わっていたのだろう。
それなら、テロリスト達に会話を聞かれることなく、外に連絡することができるか?
「……イヴさんは、通信設備の扱い方は?」
「多少は」
一般的なものなら、俺も扱うことはできる。
問題は、ここはフィリアなので、アルモートと違う仕様になっているかどうか、というところなのだけど……
「……行きましょう」
今は、他にできることがない。
なら、小さな可能性だとしても、それに賭けてみたい。
「わかりました。途中までは、私が案内しますね」
「詳しい場所を?」
「地下5階らしいです」
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