表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
336/459

334話 テロリストの要求

「はじめまして、リック。それと、聖騎士団長アリーゼ・クロノベルトよ」


 魔道具から聞こえてくる声は鋭く、そして、とても冷たい。

 人の温もりを感じることができず、心が凍てついているように感じた。


 コイツが、テロリストのリーダー……

 こんなふざけたことを計画した犯人、か。


「俺の名前は、アシュレイだ。短い付き合いになるかもしれないが、よろしく頼む」

「……わざわざ名前を明かすとは、ずいぶんと余裕ですね。テロを成功させる自信があるのですか?」


 テロリストのリーダー……アシュレイの言葉に、アリーゼが応えた。

 犯人を刺激しないためなのか、その声のトーンは平常だ。


「それもあるが、自己紹介をした方が話が早いと思ってな」

「……なるほど」


 少しの間の後、アリーゼが納得するような声をこぼす。


「どこかで聞いた覚えのある名前と思っていましたが、あなたは、あのアシュレイですか? フィリアだけではなくて、複数の国で指名手配されているテロリストグループをまとめるリーダー……間違いありませんか?」

「間違いない」

「本当に?」

「証明する術はないから、それについてはなんとも言えないな。ただ、アシュレイを名乗る者なんて、そうそういないと思うが」

「……それもそうですね。あなたを、最悪のテロリストと認めましょう」


 どんな情報が転がり落ちてくるかわからない。

 俺は二人の会話をじっと聞いて、頭の中で情報に組み替えていく。


「俺のことを認めてくれてなによりだ。では、こちらが本気だということ。やると言えばやるということは、理解していただけると思う」

「そうですね」


 若干、アリーゼの声に苦いものが混じる。

 それだけアシュレイは厄介な相手ということだろう。


 あえて自分の名前を告げることで、アリーゼを牽制する。

 そして、無駄な問答を省く。

 それなりに頭の回転は早いみたいだ。


「さて……俺は回りくどいことは嫌いだ。さっそくだけど、こちらの要求を伝えよう」

「なんでしょうか?」

「まずは、金だ。フィリアの聖金貨で構わない。1万枚、用意してもらおうか」


 こいつ、本気か?

 聖金貨1万枚といえば、小さな国の国家予算に匹敵するぞ。


「それと、不当に収容されている同志たちの釈放だ。今から名前を言うぞ?」


 アシュレイは五人の名前を挙げた。

 いずれも聞いたことがないのだけど……

 ただ、アリーゼが黙り込んだところを見ると、それなりの大物なのだろう。

 いずれもアシュレイに匹敵する悪人に違いない。


「……期限は?」

「ほう、素晴らしいな。大抵の無能なら、そんなことは不可能だ、とか断ればどうするとか、そんなことを口にするが」

「それこそ時間の無駄でしょう? あなたを相手に、それは悪手になります」

「俺のことを理解してくれているようで、なによりだ。期限についてだが、俺は無茶は言わない方でな……三日だ。今の要求を全て、三日で叶えろ」

「わかりました。ただ……」

「わかっている。詳細は後で決めることになるが、同志を一人釈放すれば、人質の一部を解放するなど、こちらも譲歩しよう」

「本当に話が早いですね。助かります」

「では、また3時間後に連絡をして、進捗状況を確認する。すぐに準備を進めることだ」

「ええ、了解です」


 ひとまず、交渉はまとまったようだ。


 テロリストというと、自分の要求だけを突きつけて、一切譲歩しないというイメージがあったのだけど……

 アシュレイに関しては、そうでもなさそうだ。


 約束を守るかどうか。

 そこの真偽はわからないものの、それなりに誠実なところを見せている。


 ……テロリストを相手に誠実というのもおかしな話ではあるが。


「さて、聖騎士との交渉は終わったが……続けて、交渉したい相手がいる」


 アシュレイの声のトーンが変わる。

 今まで以上に鋭く。

 今まで以上に冷たく。


 その矛先が俺に向く。


「警備員のリックと言ったな? キミと話がしたい」

「……なんだ?」

「応えてくれてなによりだ。無言の魔道具に話しかけ続けることは、滑稽だからな」

「……」

「さて、俺と聖騎士団長との話は聞いていたと思う。ひとまず、交渉はまとまりつつある。キミが余計なことをしなければ、このまま無事に人質は解放されるだろう。言いたいことはわかるな?」

「ああ」


 仲間を襲い、魔道具を奪ったことは見逃す。

 だから、これ以上余計なことはするな。

 そう言いたいのだろう。


「もしも余計なことをするようなら、人質の安全は保証しない。以上だ」


 そう言って、魔道具の通信は切れた。

『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ