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324話 潜む者、狂う者

 聖堂は上だけではなくて下にも伸びている。


 地下5階に及ぶ巨大な空間。

 主な内訳は倉庫や仮眠室など、聖堂に務める者たちが利用するものが多い。


 ただ、それは地下2階まで。

 地下3階から5階までは、いざという時の避難所となっていた。


 フィリアの国民の3割を収容できるだけの広さ。

 竜の攻撃が直撃しても耐えられる耐久力。

 一年は生活することができる食料と水。


 避難所というよりは、要塞という言葉がふさわしい場所だ。


 そんな場所に複数の人影があった。


 動きやすさを優先しているらしく、身につけている防具は軽鎧。

 メイン武装は、針のように鋭い短剣。

 それと、サブ武装に投擲用の短剣に閃光弾。

 竜を封印するための魔道具に、小規模範囲に毒を撒き散らす炸裂弾……などなど。


 これから戦争に向かうのだろうか?

 そう思うほどの凶悪な武装だ。


 そんな装備をした者が十人以上。

 薄暗い避難所の影に隠れて、待機していた。


「隊長」

「どうした?」


 二人の男が小さな声を交わす。


「全員、所定の配置につきました」

「……問題は?」

「ありません。いつでも決行可能です」

「そうか」


 隊長と呼ばれた男は小さな吐息をこぼした。


 ようやくだ。

 ようやく正義を実行する機会がやってきた。


 この日。

 世界は知るだろう。

 真に正しい存在は誰なのか?

 真に邪悪な存在は誰なのか?


 全てが明らかになる。

 絶対的な正義が示される。


「この日のために、俺は……」


 男……アシュレイは万感を込めた様子で呟いた。

 その手はわずかに震えている。


 アシュレイはどんな風に生きてきたのか?

 そして、どんなものを背負ってきたのか?


 それは彼にしかわからない。

 部下たちにも詳しく話したことはない。


 アシュレイの怒り、悲しみ、憎しみ、嘆き……それらは全て彼だけのもの。

 誰にも渡さない。

 同情もさせない。


 その代わり……


「今日こそ、俺は願いを叶えてみせる」


 暗い顔。

 暗い声で、アシュレイはそう呟いた。


 そんな彼の願いは、ただ一つ。

 竜の排除だ。


 アシュレイは部下に問いかける。


「そういえば、イヴという女はどうした?」

「我々とは別の場所で待機をして、サポートに徹する……と」

「ふむ」

「隊長、あの女は……」

「言うな、わかっている」


 協力をさせてほしいと、どこからともなく現れて、接触を図ってきた女。

 その正体は不明で、怪しいこと極まりない。


「だが、あの女の竜に対する怒り、憎しみは本物だ」

「どうして、そう言い切れるのですか?」

「同族のことはわかる」

「……」

「なにかしらの思惑はあるだろうが……ただ、協力したいという言葉はウソではないだろう。ならば、せいぜいこちらもヤツを利用してやるさ。その上で、我らの悲願を叶えてみせる」

「わかりました」

「では……そろそろ始めるぞ」


 アシュレイの言葉で、一斉に男たちが動いた。

 その目的地は……展望台だ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
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