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323話 展望台へ

 聖堂には展望台も設置されているらしい。


 より神に近いところで祈ることができる。

 自分たちが暮らす場所を確認しつつ、祈ることができる。

 そんな目的で作られたらしい。


 フィリアの人々は祈りを捧げる場として活用して……

 外からやってきた人々は、街の全景を見ることができる観光スポットとして、足を運んでいるという。


 祈りの場が観光スポットになっていいのだろうか?

 そんな疑問はあったのだけど、ククル曰く、特に問題はないらしい。


 フィリアのことをよく知ってもらう良い機会でもある。

 それに、人々が笑顔になるのならば、本来と違う使われ方をしてもなんら問題ない。

 それがフィリア上層部の見解らしい。


 こう言ってはなんだけど、意外と懐が深い。


 そんなわけで、俺たちは今、展望台からフィリアの全景を目に収めて楽しんでいた。


「「「おおおぉーーー!」」」


 俺もユスティーナもノルンも。

 ジニーもグランも。

 アレクシアもテオドールも、みんな絶景に心奪われていた。


 聖堂は街の中心に建っている。

 そして、展望台は360度、全域の視界が確保されていた。

 街も城も、その奥の雄大な山も全てを見ることができる。


「これは……すごいな」

「うん、絶景だね!」


 ユスティーナの笑顔は普段の二割増しだ。

 彼女もこの光景を気に入ったらしい。


 というか……

 この光景を気に入らない人なんて、ほぼいないだろう。

 誰もが心を奪われて、誰もが言葉を失うほどに感動する。


 そう言い切ってしまうほどの力があった。


「階段を登るのは大変だったが、そうするだけの価値はあるな」

「あれはホント大変だったな……」


 ここに来るまでのことを思い出して、グランがげんなりとした表情に。


 これだけ高いところにある展望台だ。

 その階段の数も相当なもので……

 日頃から鍛えていなければ、途中でバテていたかもしれない。


「まったく、兄さんはだらしないわね」

「体力バカのジニーに言われたくねえよ」

「なんですって!?」

「まあまあ、落ち着きたまえ。せっかくの旅行なのだよ? 楽しくいこうじゃないか」

「帰りは昇降機を使えるので、多少は楽になるのであります」


 こころなしか、みんなテンションが高い。

 展望台からの景色に触発されて、自然と元気になっているのかもしれない。


「あうあう」

「うん?」


 ノルンに服の端を引っ張られた。

 彼女は展望台に設置されている売店を指差している。


 売店には色々なお菓子やドリンクが並べられていて……

 それを見たノルンは、たらりとよだれを垂らしている。


 とてもわかりやすい子だ。

 それ故に、かわいくもある。


「まったく、仕方ないな」

「あうー!」

「って……」


 ポケットを探ると、そこにあるはずの財布の感触がない。


「どうしたの、アルト?」

「まずい……財布を落としたかもしれない」

「えっ、大丈夫……?」

「小銭入れだから、そこまで痛くはないが……」


 まいったな。

 額は大したことはないのだけど、財布の方はそれなりにお気に入りなのだ。


「もしかしたら、階段を登っている途中で落としたのかもしれないな。けっこう急なところもあったし……」

「ボク、探してこようか?」

「ユスティーナが行くことじゃないだろう、俺が行くさ。すまないが、ノルンと一緒に待っていてほしい」

「うん、いってらっしゃい」


 ユスティーナとノルンのためにも、なるべく早く取り戻そう。

 そう思い、俺は小走りで階段へ引き返した。

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【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
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