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319話 修学旅行三日目

「なあなあ、今日の予定はなんだっけ?」


 宿での食事中。

 パンを頬張りながら、グランがそんなことを尋ねてきた。


 そんな兄を見て、ジニーが呆れたようにため息をこぼす。


「あのね……予定ならパンフレットに書いてあるでしょう?」

「いやー、それがな。一日目まではあったんだが、昨日から見当たらなくて」

「つまり、なくしたのね……はぁ、兄さんらしいというか」

「おいおい、褒めるなよ」

「褒めてないわよ!」


 朝から兄妹でお笑いをする辺り、二人は元気だなあ、と思う。


 一方の俺とユスティーナは……


「……」

「……」


 席は隣同士なのだけど、極端に会話が少ない。

 そこの塩取って。どうぞ。

 今朝、交わした会話はこれだけだ。


 昨夜のことを共に意識してしまっているのは間違いない。

 こんな態度を取り続けていたら、せっかくの旅行がつまらなくなってしまうし……

 なによりも周囲に感づかれてしまうかもしれない。


 それはイヤだ。

 乙女か! とツッコミを入れられるかもしれないが、単純に恥ずかしいのだ。


 ふう。

 竜騎士になることを夢見ているのに、こんなことで悩み、つまづいてしまうなんて。

 俺は、やっぱりまだまだ未熟なのだろうな。


「三日目は、まず、午前中にフィリアで一番の聖堂を見て回ります。午後からは、フィリアにある聖騎士育成学院を見学して、交流を図ることになっていますよ」


 さすがアレクシア。

 パンフレットの中身は全て記憶しているらしく、スラスラと答えてみせた。


「交流は楽しそうだが、聖堂の見学は退屈そうだなあ……」

「そうかい? 僕は楽しみだけどね。フィリアが山岳地帯にあるせいか、独自の建築技術を持っているからね。その全てを結集して作られた聖堂は、とても良い刺激を受けるだろう」

「そう言ってもらえると、うれしいのであります」


 今日は、朝からククルも一緒だ。

 任務はないらしい。


 いや……昨日の不穏な話を考えると、もしかしたら、俺たちの身辺警護のために朝から同行してくれているのかもしれない。

 答え合わせをしたわけではないのだけど、たぶん、それで間違いないだろう。

 ありがたい話ではあるが、彼女一人に負担を押し付けないように気をつけよう。


「あうー」

「うん? どうしたんだ、ノルン?」


 ユスティーナとは反対側に座るノルンが、なにかを訴えるように服をくいくいと引っ張る。


「あう、あうあうっ」

「えっと……」


 いつもなら、言葉はわからなくても、ノルンの言いたいこと考えていることはなんとなくわかるのだけど……

 今回に限り、それが適用されない。


 彼女がなにを言いたいのか?

 なにを訴えているのか?

 霧の中に迷い込んだような感じで、出口という名の答えを見つけることができない。


「えっと……もしかして、朝食が足りないのか? 俺のパンを食べるか?」

「あう!」


 ノルンは頬を膨らませて、ぽかりと俺の頭を叩いてきた。

 痛い。


 でも、さすがに今のは失礼か。

 ノルンも女の子だ。

 食い意地が張っていると思われたら、怒るだろう。


「ユスティーナ、ノルンがなにを言っているかわからないか?」

「えっと、ちょっとまってね?」


 彼女も不思議に思っていたらしく、耳を貸す。


「あうあう」

「ふんふん」

「あうー……」

「なるほど……うん、そういうことなんだ」


 傍から見ている分にはさっぱりわからないが、ユスティーナはノルンの訴えていることを大体理解したらしい。


「ボクとアルトには、今日は宿から出ないでほしいみたい」

「え? それはまた、どうして?」

「嫌な予感がするみたい」

「嫌な予感……か」


 普通の女の子の話なら、気にしすぎとか悪い夢を見たんだろうとか、そういう風に片付けることができたかもしれない。

 しかし、ノルンはこう見えて、古代竜エンシェントドラゴンなのだ。

 一説によると、古代竜は予知能力に目覚めることもあると聞くし……それが今、ノルンに?


 昨日のククルの話。

 ノルンの訴え。


 俺とユスティーナに、なにかしらの危険が迫っているのだろうか?

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【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
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