317話 スニーキングミッション?
当然のことながら、部屋は男女別だ。
男子は宿の一階。
二階は教師陣で、三階が女子。
就寝時間を過ぎての部屋の移動は禁止。
もしも発覚したら、反省部屋に連行されてしまう。
生徒は、竜騎士になるための訓練を受けているので、そうそうバカなことをやらかす者はいない。
ただ、旅行ということでテンションが上がり、ついつい魔がさしてしまう者もいる。
そして、魔がさした者が、ここにも一人。
「……なあ、ユスティーナ」
「うん、なに?」
「もう就寝時間を過ぎているんだが……」
「そうだね、困ったね。えへへー」
困ったね、なんて言いつつも、ユスティーナは笑顔だ。
確信犯だな。
ちなみに、グランとテオドールはすでに寝てしまった。
ユスティーナがいることに気がついているはずなのに、俺達は知らないという感じで、横になってしまった。
もしもバレた時は、俺一人の責任にするつもりなのだろう。
いや、まあ。
強く言うことができず、結局、ユスティーナの滞在を許してしまったわけで……
それは、ある意味で俺の責任かもしれないが。
「夜もアルトと一緒でうれしいな♪」
「寮では、いつも一緒だろう?」
「もう、わかってないなー。旅行でも一緒なのがいいの。それと、ボクはどこでもいつでもアルトと一緒にいたいの」
「むう……」
うれしい。
うれしいのだけど、今は非常に困る。
どうにかして、ユスティーナを部屋に戻さないといけないのだけど……
「寝ているか?」
「「っ!?」」
見回りの教師だろう。
扉が軽く開かれて……
「急げっ」
「う、うん」
俺とユスティーナは、慌ててベッドに飛び込んだ。
ユスティーナと抱き合うようにして、布団をかぶり、寝たフリをする。
その直後、部屋の扉が開いて教師が姿を見せた。
「……寝ているようだな」
軽く確認した後、教師は部屋を出ていった。
就寝の邪魔をしてしまうし、あからさまにおかしいものでもない限り、詳しく検査することはないのだろう。
ふう、助かった……
「ユスティーナ、今のうちに部屋へ」
「……」
「ユスティーナ?」
「もうちょっと、一緒にいたいな」
ユスティーナは離れるどころか、さらに密着してきた。
俺の背中に手を回して、ぎゅうっと。
自分の体を押し付けるように、猫が甘えるように。
「いや、その……」
「ダメ?」
「それは、もちろん……」
ダメに決まっている。
バレたら反省部屋に送られてしまうし……
バレなかったとしても、この状況は非常にまずい。
ユスティーナは、俺が紳士だと思っているのだろうか?
そうであるように努めているが、限界がある。
好きな女の子と一緒にベッドに寝て、密着される。
こんな状況では、なんていうか、その……色々と限界だ。
そんな俺の気持ちを察したのかどうか、ユスティーナは潤んだ瞳を向ける。
どことなく甘い匂いを漂わせながら、そっと、濡れた桜色の唇を開く。
「……いいよ?」
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