表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/459

316話 状況は変わらず

 宿に戻り、まずは一日の疲れを風呂に入ることで癒やした。

 それから食事の時間。


 フィリアでしか取れない素材が使われた、郷土料理がメインだ。

 素材の味が良く、さらに調理方法も上手なため、ついついおかわりをしてしまうほどにおいしい。


 その後は、自由時間だ。

 就寝時間までの二時間、自由にしていいのだけど……


「……」


 俺はなにをするわけでもなく、部屋に設置されているバルコニーに出て、夜空を見上げていた。


 修学旅行、二日目が終わろうとしていた。

 馬車の暴走事件が起きて……

 そして、ククルの話。


 俺が狙われているといっても、ピンと来ない。

 正直なところ、なにかの間違いでは? と思う。


 ただ……


 なにか嫌な感じがした。

 どこがどうと、具体的な言葉にすることはできない。


 ただ、見えないところでうごめいている悪意を感じ取っているような……

 そんな嫌な感覚。


「誰なのか知らないが……まったく、旅行中に事件を起こさなくてもいいだろうに」


 せっかくの修学旅行だ。

 みんなと……そして、ユスティーナとたくさんの思い出を作りたいと思っていたのだけど、それが邪魔されてしまうかもしれない。


「アルト」


 振り返ると、ユスティーナがいた。

 夜空に負けないくらい鮮やかな髪が風に揺れている。

 それを手でそっと押さえつつ、俺の隣に並んだ。


「もう、気がついたらどこかに行っているんだもん。探したよ?」

「すまない。少し、夜風を浴びたくて」

「その気持ちはわかるかも。フィリアの夜風って、ちょっと冷たいけど、でも気持ちいいよね」


 山岳部にある国だからか、フィリアの風は冷たい。

 ただ、その分自然の香りがいっぱい詰め込まれていて、こうして浴びているとリフレッシュできるような気がした。


「えへへー」


 ふと、ユスティーナが寄りかかってきた。

 俺の肩に頭を乗せるようにして、ぴたりとくっついてくる。


 彼女は竜なのだけど、でも、どことなく猫を連想した。


「どうしたんだ?」

「んー、こうしたい気分なの。ダメ?」

「ダメじゃないさ。俺も、こうしたい」

「ひゃっ」


 ユスティーナの肩に手を回した。


 途端にユスティーナの顔が赤くなる。

 それと、動きもぎこちなくなる。


「あわわわ……」

「どうして、ユスティーナの方が照れているんだ? 仕掛けてきたのは、そっちだろう?」

「そ、そうだけどぉ……でもでも、あのアルトがこんなにも積極的になるなんて、思ってもいなかったから」

「それは……まあ、そうかもしれないな」


 俺も、自分で驚きだ。

 好きな女性に触れたいなんて、以前はまるで思わなかったのだけど……

 ユスティーナに対する想いを自覚して以来、どんどんあふれてきている。


 恋は人を変えるというが、まさに、その通りなのだろう。


「どうしたの、アルト?」

「いや、なんでも」


 ふと、思う。

 恋が人を変えるのなら、竜も変えるのだろうか?


 ユスティーナは、出会った時から、ほぼほぼこのような状態だったが……

 彼女の中で、なにか変化はあったのだろうか?

 あるいは、変化があるとしたら、これからなのだろうか?


 想いを寄せるだけの状態から、相思相愛へ。

 恋人に進展した。


 色々な想いの変化があるだろう。

 色々な関係の変化があるだろう。

 その果てに、大きく変わるものがあるだろう。


 それはなんなのか?

 今はまだ、なにもわからない。


「星、綺麗だな」

「うん」


 この平穏をじっくりと味わいつつ、ユスティーナと一緒に星空を眺めた。

『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ