311話 どこかで?
ほどなくして騎士団が駆けつけてきた。
ククルがいたこともあり、俺は軽い事情聴取で済んだ。
事後処理を彼らに任せて、自由行動を再開する。
「それにしても、ククルってば、物語に出てくるヒーローみたいだったわね」
「はい、私もそう思いました」
「うんうん! 主人公のピンチに駆けつけて、事件を解決する……すごくヒーローっぽいね!」
「い、いえ、自分なんてそんな、ヒーローだなんて……」
みんなに称賛されて、ククルが照れていた。
ものすごく照れていた。
そんなククルを見て、クーフェリアがにこりと笑う。
「いやいや、謙遜は必要ないぞ。あなたは、とても素晴らしい仕事をした。みんなが言うように、ヒーローのごとき活躍だ。謙遜せず、誇るべきだと思うぞ!」
「あ、ありがとうであります……」
二人は顔を見合わせて、
「「うん?」」
不思議そうに、同時に小首を傾げた。
「アルト殿。ところで、こちらの方は……」
「誰なのかな?」
「……あぁ」
そういえば、ククルは国に戻っていたから、クーフェリアと顔を合わせていなかったか。
「えっと……彼女は、ククル・ミストレッジ。フィリアからの留学生で、クラスメイトだ。ちなみに、聖騎士でもある」
「なんだって? ずいぶんと若いように……というか、私達と同じに見えるのだけど、聖騎士なのかい?」
「ああ、そうだ。確かに若いけど、でも、実力は今見た通り」
「なるほど……」
クーフェリアは、やけに感心しているみたいだった。
「で……彼女は、クーフェリア・レイネル。アルモートの五大貴族の一つ、レイネル家の令嬢だ。今は縁あって、一緒に自由行動を楽しんでいる」
「クーフェリア・レイネルだ。よろしく頼む」
「ククル・ミストレッジであります!」
二人は簡単な自己紹介をして、笑顔で握手を交わした。
「……」
ふと、ククルはわずかに難しい顔に。
クーフェリアと握手をしたまま、じっと彼女の顔を見る。
「うん? どうかしたのか? 私の顔になにか?」
「あ、いえ……すみません。なんていうか、その……どこかで会ったような気がしまして」
「む? それは、私をナンパしているのか?」
「な、ななな、ナンパ!? い、いえっ、自分は決してそのような! というか、自分は女の子であります! それなのに、女の子に声をかけるなんて、あわわわっ」
そういうことに耐性のないククルは、ものすごく慌てていた。
ク―フェリアは冗談を言っているわけではなくて、本気でそう思ったのだろう。
この子はこの子で、ちょっとズレたところがあるからな。
「そもそも自分は、心に決めた方が……!」
「「「ほう」」」
つい、という感じで口を滑らせてしまうククル。
そんな彼女の失言をしっかりと捉えて、女性陣達が目をキラリと光らせた。
「ねえ、ククル? 心に決めた人っていうのは、誰なのかなー? ボク、とっても気になるよ」
「これだけの女子が集まれば、恋バナの一つや二つ、出てきて当然よね。あとで、きっちり聞かせてもらうわよ?」
「ふふ、楽しみですわ」
「あうあうあう……なんだか自分は、とんでもない失言をしてしまったみたいなのです……」
楽しそうでなにより……と言っていいのだろうか?
ククルにとっては災難のようだけど、まあ、これはこれでアリなのかもしれないな。
なんだかんだで、みんな、楽しそうにしている。
笑顔があるのなら、それで十分だ。
「ところで、この後、ククルは一緒できるのか?」
「あ、はい。大丈夫なのであります!」
「そっか、よかった。ただ……」
「ただ?」
「……その格好で行くのか?」
「あっ」
ククルは完全武装状態で……
学生服の俺達と並ぶと、とても浮いていた。
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