302話 夜の定番イベントは?
修学旅行、一日目の夜。
大きな宿にチェックインして、おいしい料理を食べて。
露天風呂で疲れを癒やして、ゆったりとした浴衣に身を包む。
これぞ旅行! という感じで、贅沢なもてなしを堪能する。
ただ、遊んでいるばかりではない。
市内観光を終えた後は、座学に実技を行い……
さらに、フィリアの神についての講義も受けた。
修学、という名前がついているだけあって、遊んでいるばかりではなくて、きっちりと学ぶことも忘れない。
なかなかにハードな一日だった。
ただ、夜は自由だ。
就寝時間までは好きにしていいらしく、ハメを外し過ぎなければ、なにをしてもいい。
「と、いうわけで……第一回、枕投げ大会を行うわ!」
「わーぱちぱちぱち」
ジニーとアレクシアがノリノリだった。
アレクシアなんて、軽く性格が変わっていないだろうか?
「あう?」
枕投げと聞いて、ノルンが小首を傾げた。
まあ、当然の反応だ。
むしろ、枕投げについて詳しいエンシェントドラゴンがいたら怖い。
「枕投げっていうのは、こう、シュバ! って、枕を投げて相手を倒す、夜の遊びなんだよ?」
ユスティーナがノルンにそう教えていたのだけど……
彼女は、どこでその知識を手に入れた?
「でも、なんで枕投げなんだ? カードゲームとかでもいいんじゃないか?」
「まあ、そう言うな、グランよ。たまには、庶民の遊戯も悪くないさ」
みんな、男子陣の部屋に集まっていた。
就寝時間までは移動も自由なので、違反ではない。
ただ、ククルの姿はない。
最近は忙しいらしい。
少し彼女の様子が気になるし、できることならゆっくりと話をしたかったのだけど……
残念だ。
「まあ、枕投げでもいいんじゃないか? このメンツで遊べるのなら、枕投げでもカードゲームでも、俺はなんでも構わない」
「うんうん、さすがアルト! そう言ってくれると思っていたよ」
「どこぞのノリの悪い兄さんと違って、アルトくんはわかっているわねー」
「あのな……よし、そこまで言うのなら、やってやろうじゃねえか! 枕投げの神童と言われた、この俺の力を見せてやるぜ!」
その称号、恥ずかしくないのだろうか?
「うらぁ!」
先手必勝とばかりに、開始の合図を待たず、グランが枕を投げた。
ターゲットはジニーだ。
しかし……
「甘いよ!」
ユスティーナがガードに回り、枕を受け止めた。
一方で、アレクシアが「えいっ」というかわいらしいかけ声と共に枕を投げてきた。
どうやら、男性陣VS女性陣という構図らしい。
アレクシアの投げる枕を避けて、こちらも投げ返す。
すると、向こうも応戦して……段々と白熱してきた。
ただの枕投げなのだけど、このメンバーだと、とても楽しい。
ククルがいれば、もっと楽しくなっただろう。
「あうー……あう!」
「ちょっ、ぐえ!?」
ノルンが枕を投げた。
……全力で。
とんでもない一撃が炸裂して、グランが床に沈む。
ただの枕とはいえ、ドラゴンが投げた一撃だ。
相当な威力が秘められていた様子で、完全に気絶していた。
「「「……」」」
沈黙。
そして……
「あまり騒いでもなんだし、この辺りでお開きにしましょうか」
「就寝時間まで、みんなでお話しよう」
穏やかに談笑をすることに。
グラン……すまん。
『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、
ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。
よろしくお願いします!