299話 街の観光と影
「こちらが、フィリアで一番の大聖堂なのであります! その歴史は古く、おおよそ千年前に建てられたと言われています。ただ、千年前に今のような建築技術はないため、どのようにして建てられたのか、今も謎なのです」
ククルの案内で、街の色々なところを見て回る。
綺麗な公園や、特殊な建築技術が使われた橋やダム。
そして、今見ている大聖堂など。
フィリアでしか見られないようなものばかりで、とても興味深い。
ククルの説明も上手で、ついつい聞き入ってしまう。
歴史や風土などに、そこまで強い興味は持っていないのだけど……
そんな俺でも、フィリアのことをもっと知りたいと思うくらい、ククルの話は興味深く、知識欲を誘われた。
国が変われば文化も違う。
人々の思考も変わる。
街を見学しただけなのだけど、そのことを強く実感することができた。
「ではでは、ここで一時間ほど、自由時間なのであります。みなさん、好きに大聖堂やその周りを見学してください。あ、でも、あまり遠くには行かないでほしいのです。迷子になった人がいたら、置いていかないといけないのです」
ククルの冗談に笑いつつ、生徒たちは、それぞれ自由に見学を始めた。
俺は、ユスティーナやみんなと合流して……
それからククルに声をかける。
「ククル」
「あ……アルト殿」
一瞬、ククルが暗い顔になるのだけど、
「こんにちはであります!」
すぐに明るい顔になった。
見間違い……だったのだろうか?
「久しぶりだな。突然、フィリアに戻ったから気になっていたが、元気そうでなによりだ」
「心配をかけてしまい、申しわけないのであります。でも、自分はこの通り、元気でありますよ」
「ねえねえ、ククルはなにをしにフィリアに戻っていたの?」
「それは……まあ、大したことはないのでありますよ。自分、これでも聖騎士なので、定時報告という感じでしょうか」
「……そうか」
その言葉には、なにかしらの違和感を覚えたのだけど……
しかし、どこが気になる、と具体的な指摘をすることはできない。
ひとまずは、そのまま流すことにした。
「報告とやらは終わったのか?」
「はい、そうであります」
ちらりと、ククルがユスティーナを見る。
いつもの明るく純粋な目ではなくて、なにかしら思うところがある、ちょっと揺れている視線だ。
その様子を不思議に思ったらしく、ユスティーナは小首を傾げる。
「どうしたの? ボクの顔、なにかついている?」
「な、なんでもないでありますっ」
ククルは、慌てた様子で手をパタパタと横に振る。
なんだろう?
ユスティーナに対して、どこかぎこちない気がするのだけど……
こちらは気のせいとか考えすぎとか、そんなことはないと思う。
確かに違和感がある。
ただ、それを今、指摘していいものかどうか。
迷っている間に、話は先へ進んでしまう。
「ねえねえ、この聖堂は、なにかおもしろい逸話とかはないのかしら?」
「あ、そういう話は、私も気になりますわ」
「そうですね……」
ジニーとアレクシアの要望により、ククルの聖堂の歴史講義が始まる。
「逸話というのならば、色々とあるのですが……一番有名な話は、この聖堂に神さまが舞い降りたことでしょうか」
「へぇ、神さまが?」
「それは……実際にあったことなのでしょうか?」
「神さまが舞い降りたのは、聖堂が建てられたばかりの頃……千年前と言われていますが、これに関しては、ほぼほぼ間違いのない事実なのであります」
きっぱりと言い切るからには、それなりの痕跡が残っているのだろう。
歴史的な資料も、たくさん見つかっているに違いない。
ただ……
俺たち、アルモートの人間からすると、神さまっていうのは、どうにもこうにも身近に感じることができないんだよな。
正直なところ、本当にいるのだろうか? と懐疑的な一面がある。
無論、そんなことは、フィリアの人間であるククルの前で言えることではないが……
せっかくの機会だから、神さまについて知りたいと思った。
「なあ、ククル。今更のことかもしれないが、神さまについて教えてくれないか?」
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