298話 聖国フィリア
フィリアは標高の高い山岳地帯にあるため、空気が薄い。
それに気温も低く、一気に真冬になったかのようだった。
白い吐息をこぼしつつ、周囲を見る。
アルモートの家屋は木材建築が基本だ。
しかしフィリアは、石材建築が基本となっているようだ。
やや無骨な感じのする建物がずらりと並んでいる。
ただ、きちんと区画整理がされているため、見栄えはいい。
ピシリと整理されている印象で、凛とした雰囲気を感じる街並みだ。
「へー、ここがフィリアなんだ」
無事……とは言い難いものの、なんとかフィリアに到着。
俺達は、フィリアの街並みを前にして、ちょっとした感動を覚えていた。
なにしろ、他国に来るなんて初めてのことだ。
田舎者のような反応をとってしまうのだけど、それは仕方ないと許してほしい。
ユスティーナとノルンは、物珍しそうに、ひたすらにキョロキョロしていた。
どことなく姉妹に見えて、微笑ましい。
「けっこう教会が多いのね。ぱっと見ただけでも、数軒見えるし」
「フィリアは、アルモートよりも神さまを強く信仰していますからね。教会の数も、自然と増えていったのではないかと」
「教会って言われてもなー、なんか必要か? 俺は祈りとか、そういうの気にしないからな」
「やれやれ……グラン、キミのまっすぐなところは好ましく思うが、その大雑把すぎるところは、少しは直した方がいいと思うよ」
「「「ほんとそれ」」」
「全員で言うなよ!?」
あははは、と笑い声が響く。
初めての修学旅行ということで、すでにみんなのテンションは高い。
この調子なら、勉強だとしても、すごく身が入りそうだ。
「みなさん、そろそろホテルへ移動しますよ」
本格的な見学は後日。
まずはホテルに移動することに。
「おぉ……すごいな」
やってきたのは、崖の手前に建っているホテルだった。
裏手が崖になっているらしく、やや不安を覚える。
ただ、しっかりと設計されていて、安全性は十分に確保されているとのこと。
慣れれば、崖の上の絶景を思う存分に堪能できるとか。
そんな説明を受けた後、荷物を置くため、それぞれの部屋に。
四人部屋で、メンバーは隣のクラスと一緒。
なので、俺とグランとテオドールが同じ部屋になった。
人数の関係上、俺達だけ三人になったらしい。
この後、街の観光が計画されているが、その前に一時間の休憩。
少しでも旅の疲れを癒やしてくれ、とのことだ。
「二人共、お茶、飲むだろう?」
「悪いな、頼むよ」
「ああ、いただこう」
備え付けられているお茶を淹れる。
味はアルモートのものよりも濃く、妙な苦味も感じられた。
「神の加護があるとはいえ、フィリアが過酷な環境というのは変わらないからね。油断していたら、怪我や病気になってしまう。だから、抵抗力を高めるために、こういう特別なお茶を飲んでいるらしい」
テオドールが、そんな豆知識を披露してくれた。
たぶん、旅行の前に調べてきた知識なのだろう。
そういうところを見ると、彼も旅行を楽しみにしていたのだろう。
「なあなあ、今日の予定はなんだっけ?」
「えっと……まずは街の観光。アルモートとフィリアの違いを感じ取ることが目的。その後は、街中の飲食店で昼食。午後は、聖騎士育成学院の生徒との交流……っていうところだな」
「フィリアの飯か……どんなものなのか、楽しみだぜ」
「僕は、聖騎士学院が気になるかな。どのようなレディがいるのか」
「二人共、欲望に素直すぎやしないか……?」
「「それが男というものだ」」
この二人のせいで、男が誤解されてしまいそうな気がした。
「さて……少し早いが、もうすぐ時間だ。部屋を出よう」
「あれ、もうそんな時間か?」
「楽しい時間はあっという間にすぎるものだね」
準備をした後、俺たちは部屋を出た。
ロビーに降りて、他の生徒たちが揃うのを待つ。
ほどなくして全員が集合して、教師陣も姿を見せる。
フレイシアさんの姿もあった。
ユスティーナちゃんと、旅行にかこつけてにゃんにゃんさせないわよ? というような感じで、こちらを睨みつけている。
「はい、それじゃあ、これから街の観光に出かけるわ」
フレイシアさんは一瞬で気持ちを切り替えて、教師らしい態度を見せる。
「観光をするにあたり、現地に詳しい人に案内を頼むことになりました。その人というのは……」
「みなさん、ククル・ミストレッジであります! よろしくお願いするのであります!」
音信不通だったククルが、突然、目の前に現れるのだった。
『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、
ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




