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297話 空の旅

 フィリアへの移動は竜の力を借りるのだけど、彼らの背に乗るわけじゃない。

 学生の人数に対して、竜の数は少ない。


 前もって頼んでおけば、たくさんの竜が力を貸してくれるだろうが……

 ただの旅行で竜の力を借りるというのもアレだ。


 それに、全ての学生が竜に乗って飛来したら、かなりの威圧感がある。

 その気はなくても、アルモートが攻め込んできた、と勘違いするかもしれない。


 なので、背に乗るという方法は却下。

 代わりに、カゴを使うことに。


 馬車の荷台を空の旅に改良したカゴ。

 それに乗り、竜に足で掴んで運んでもらう……という代物だ。

 いわゆる、竜車というヤツだ。


「うわぁ!」


 カゴが空へ舞い上がり、ジニーをはじめ、みんなが目を輝かせた。


 窓の外を見ると、地面がぐんぐん遠ざかる。

 空と雲が近くなり、地平線が見えるように。


 綺麗な景色だ。

 竜に乗り、空を駆ける時も素晴らしいと思うのだけど……

 カゴに乗るとのんびりすることができて、これはこれでアリだ。


「あうっ、あうあう!」

「ノルンも気に入ったか?」

「うー!」


 ノルンは満面の笑みで、キラキラと顔を輝かせつつ、窓の外をじっと覗き込んでいた。


 ノルンは竜だから、空からの景色は慣れたものと思っていたのだけど……

 記憶を失っているせいか、うまく元の竜に戻ることができない。

 そのせいで、ぜんぜん竜に戻っておらず、空も飛ぶことができていない。


 久しぶりに味わう光景に、竜の心が刺激されているのだろう。


「うー、みんな楽しそうだなあ」


 ちょっと拗ねるような感じで、ユスティーナの声が上から降ってきた。


 このカゴを運んでいるのはユスティーナだ。

 最初は、ユスティーナも一緒にカゴに乗ると言ったのだけど……

 竜の数は限りがあるため、無駄はできない。


 色々とごねたのだけど……

 結局、ユスティーナも竜形態になり、カゴを運ぶことになったのだ。


「すまない、ユスティーナだけに苦労をかけて」

「うーん、これくらい、苦労でもなんでもないんだけどね。ただ、アルトの隣にいたかったなー、なんて」


 ノルンだけずるいなー、なんていうユスティーナの心の声が聞こえてきそうだ。


 最近は、ノルンに対して嫉妬することは少なくなったのだけど……

 それでもたまに、チラッと嫉妬の炎が燃えてしまう。


 まあ、それだけ好意を持たれているということなので、そこはうれしく思う。

 あとは、ユスティーナを必要以上に不安にさせないように、アフターフォローをしっかりとやっておこう。


「今回はありがとうね、エルトセルクさん」

「他の竜に頼むという手もあったのですが……やはり、エルトセルクさんが一番信頼できるので」

「もー、ジニーもアレクシアも、竜殺しの台詞を言ってくれるなあ。そんなこと言われたら、がんばらないわけにはいかないじゃない」

「ふふ、期待しています」


 なんだろう?

 心なしか、女性陣の距離が以前と比べると近いような……?


 気のせいか?

 いや、しかし、朴念仁である俺も違和感を覚えるくらいだ。

 勘違いとかそういうことではなくて、確かに距離が近くなっているのだろう。


 なにかあったのだろうか?


「うーん、そこまで期待されたら、がんばらないと。飛ばすよー!」

「「「え」」」


 ユスティーナがはりきり……

 そして、カゴの中にいる俺達は、揃って顔をひきつらせた。


 こういう時のユスティーナは、大抵、やらかしてしまう。

 長い付き合いのため、俺達全員は、そのことをしっかりと知っていた。

 身を持って知っていた。


「ユスティーナ、まっ……」

「いくよー! フィリアに一番に到着するのは、ボクたちだよ!」

「てぇ……!?」


 止めるのが間に合わず、急加速。

 重力が横に変化したかのように、体が流されてしまう。

 ジニーとぶつかり、アレクシアとぶつかり、ついでにグランやテオドールともぶつかり……


「止めてくれえええええっ!!!」


 グランのそんな悲鳴が、空に響き渡ったとかなんとか。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] 目的地に到着したら、ある意味地獄絵図ですね。www
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