293話 想うだけではなくて、努力も
「話っていうのは?」
人気のない高台へ移動したところで、ユスティーナが口を開いた。
二人の様子を察して、真面目な表情を作っている。
「アルトくんに関することなんだけど……」
「エルトセルクさんにとっては、あまり……いえ。かなり面白くない話になります」
「そっか……うん、ちゃんと聞くよ」
二人の態度から、ユスティーナは、話の内容をある程度察した。
おそらくは、恋愛関係の話。
アルトに対する想いをどのような方向へ持っていくのか?
そういう話だろう。
ユスティーナはそんな予想をして……そして、それは的中する。
「大会の時の話になるんだけど……」
「私達も、アルトさまに告白をいたしました」
「……むぅ」
ついつい、反射的にユスティーナは眉をしかめてしまう。
人を好きになることは自由で、想いを告げることも自由。
しかし、恋人が告白されたとなると、心中、穏やかではいられない。
ただ、この泥棒猫! というような感情はない。
ゼロだ。
ユスティーナが抱える思いは、焦り。
もしかしたら、ジニーかアレクシアのどちらかにアルトがとられてしまうのでは?
二人共、素敵な女の子だから、アルトが好きになってもおかしくないのでは?
……というようなもので、嫉妬や独占欲は皆無だったりする。
そんな純粋なユスティーナにアルトは惹かれたわけではあるが……
そのことをまったく自覚していないユスティーナは、やばい、と焦る。
「でもさ、あたし達は負けちゃったんだよね」
「え?」
「アルトくんと付き合うことになったんだよね?」
「……うん」
この二人の前で惚気けるなんて、ケンカを売るようなものだ。
それでも、うれしくなり、照れることは避けられず、ユスティーナは頬を染めてしまう。
そんな彼女を見て、ジニーとアレクシアはやれやれとため息をこぼす。
彼女達もまた、心がしっかりと形成されていて、浅ましい嫉妬とは無縁だった。
「おめでとう」
「え? あ、うん……あ、ありがとう?」
「どうしたのですか、そんなに驚いて」
「だって、祝福されるとは思っていなかったから……」
「ふふっ。確かに、悔しいという気持ちはありますが……」
「でも、それ以前に、エルトセルクさんは友達だもの。友達の恋が成就したのなら、ちゃんとお祝いしないと」
「ジニー……アレクシア……うぅ、ありがとぅ……」
二人の優しさに感激したユスティーナは、ついつい涙をこぼしてしまう。
ジニーとアレクシアは、仕方ないなあ、というような顔をして……
再び、真面目な表情へ戻る。
「大会の時は、今まで通りに見えたから……たぶん、旅行の時に付き合うことになったのよね?」
「う、うん。そうだよ」
「もしよろしければ、その時の話を聞かせていただけませんか?」
「もちろん! えっとね……」
ユスティーナは、とてもうれしそうに旅行の話をした。
ちょっとしたハプニングはあったものの、とても楽しかったこと。
一生の思い出になったこと。
そして、アルトに告白されて、両思いになったこと。
「……と、いうわけなんだ!」
「そっか」
「素敵ですね」
恋のライバルの話なのだけど……
それでも、ジニーとアレクシアは微笑ましい気持ちで話を聞くことができた。
アルトのことは好きではあるが……
しかし、ユスティーナのことも好きなのだ。
だからこそ、こうして穏やかな気持ちでいられるのだろう。
「よし!」
「えっ、なになに? 突然、大きな声を出してどうしたの?」
「気合みたいなもの? まあ、とにかく……これで、アルトくんのことを諦めることができる」
「……えっ」
「そうですね。本当は、側室などに……なんてことを宣言していたのですが」
「でも、やっぱりエルトセルクさんに悪いからね。やめておきましょう」
「はい」
ジニーとアレクシアは心の整理がついているらしく、スッキリとした顔だ。
「え、えっと……」
逆に、ユスティーナは慌てていた。
慌てていたから、ついつい、こんなことを口にしてしまう。
「そ、それでいいのかな!?」
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