292話 秘密の女子会
「アルト、アルト。ボク、アレクシア達とちょっと出かけてくるね」
買い物を終えたところで、ユスティーナがそんなことを言い出した。
「どこへ行くんだ?」
「内緒の買い物♪」
「買い物なら、荷物持ちとして付き合うが……」
「下着だよ?」
「……先に帰る」
「アルトになら、いつか、全部見せてもいいんだけどね」
そんなことを言うユスティーナ。
彼女は、竜ではなくて、実は小悪魔ではないのか?
――――――――――
ユスティーナ、ジニー、アレクシアの三人は、アルト達と別れた後、女性に人気のランジェリーショップを訪れていた。
右を見ても下着。
左を見ても下着。
同じデザインのものは置かれておらず、全てが違う。
「うわー……すごいね。ボク、こんなにたくさんの下着、初めて見たかも」
「ここは、王都でも一番だから。品揃えが豊富なだけじゃなくて、ちょっと変わったパンツとか、ちょっとエッチなものまであるわ」
「エッチ……ちょっとドキドキするかも。でも、そんなものボクに似合うかな……?」
少し沈んだ声をこぼしつつ、ユスティーナは己の体を見た。
スラリと手足は伸びているものの、しかし、肝心なところの起伏は乏しい。
「ふふっ、そんなことを心配する必要はありません。エルトセルクさんは、とても素敵な体をしていると思います」
「そうそう、変な心配はしないの。エルトセルクさんがちょっとエッチな下着をつけてアルト君に迫ったら、大変なことになるわ」
「た、大変なこと……?」
「大変なことね。具体的に言うと……」
ジニーは、ユスティーナの耳元に口を寄せて、ゴニョゴニョとつぶやいた。
「……ひぇ!?」
ややあって、ボンッ、とユスティーナの顔が耳まで赤くなる。
まるで、瞬間湯沸かし器だ。
「そ、そそそっ、そんなことボクは!?」
「でも、まったく興味がないっていうわけじゃないでしょ?」
「うっ……」
「女性にだって、性欲はありますからね。好きな殿方がいて、相思相愛となれば、そういうことを考えるのは普通だと思いますよ」
「そ、そうなのかなぁ……?」
ユスティーナは、竜故に、その手の知識に疎い。
初心な子供のような反応を示してしまう。
そんな彼女を見るのが楽しいとばかりに、ジニーとアレクシアはあれこれと際どい話題を振る。
「って、こんなことをしてる場合じゃなかった」
ふと、途中でジニーが我に返る。
ユスティーナをいじるのは楽しいが、まずは本来の目的を果たさないと。
「それじゃあ、かわいい下着を探しましょう」
「はい、そうですね」
「お、おーっ!」
そういう機会でもない限り、乙女は下着を異性に見せることなんてない。
見せるとしたら、せいぜいが同性くらいだ。
風呂の前とか、そういう時のみ。
だからといって、適当な下着を身につけるわけにはいかない。
見えないところだからこそ、誰よりもこだわりを持たなければいけない。
そうすることで、乙女力を高めるのだ。
……とまあ、そのような感じで、三人は新しい下着を買うためにランジェリーショップへやってきたのだった。
年頃の女の子が三人。
しかも、全員が恋をしている。
賑やかにならないはずがなく、三人はあれこれと話をしつつ、笑顔になったり赤くなったりしつつ、それぞれの勝負下着を選んだ。
「いやー、良い買い物をしたわね」
二時間後。
買い物を終えた三人は、にこにこ笑顔で店を後にした。
それぞれ満足のいく下着を購入することができて、とてもご機嫌だ。
特にユスティーナ。
この下着でアルトを魅了してみせる! と、意気込んでいた。
「ねえ、エルトセルクさん」
そんな彼女に、ジニーとアレクシアが真面目な顔をして言う。
「ちょっと、お話したいことがあるのですが、いいでしょうか?」
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